『黒子のバスケ』脅迫事件、電撃逮捕された容疑者の静かすぎる日常生活
12月15日、人気マンガ『黒子のバスケ』をめぐる連続脅迫事件で、渡辺博史(ひろふみ)容疑者(36歳)が電撃逮捕された。
2012年10月から脅迫状を送りつけるなど、さまざまな手段で同作に関連する会社やイベントなどに妨害行為を働いた容疑だ。
渡辺容疑者は警察の捜査に対し、「約16年前にアニメの専門学校に通っていたが1年ほどで中退した」と供述している。そうした挫折の経験が、面識がないとはいえ、自身が夢を叶えられなかったマンガ界でスター作家となった藤巻忠俊氏に恨みを募らせたという可能性がある。
逮捕時に「ごめんなさい。負けました」と話し、送検時には笑みを浮かべた渡辺容疑者。彼は、逮捕されるまで、どんな日常を送っていたのか? 大阪市東成区にある自宅周辺を訪ねてみた。
渡辺容疑者の自宅は商店街の一角にある3階建てのワンルームマンション最上階の一室。家賃は4万円だという。
近隣住民に渡辺容疑者の顔写真を見せると、「誰や? 初めて見た」「こんな人、知らんなあ」と口をそろえる。
このマンションの横にある中華料理店の店主もこう首を振る。
「隣のマンションの住人なら、だいたいの顔はわかる。みんな一度は食事に来てくれるから。でも、彼だけは知らん。犯行がばれんよう、あえて近所の店を避けていたのと違うか」
通常、こうした周辺の聞き込み取材を行なうと、目撃証言のひとつやふたつくらいすぐに出てくるものだが、今回はなかなか出てこない。
そんななか、ようやく目撃者を見つけた。まず、渡辺容疑者の自宅の向かいにあるマンションの住人がこう証言する。
「渡辺容疑者がベランダで洗濯物を干している様子を何度か見たことがあります。ただ、最近は留守がちだったようです。それまでは夜に部屋の電気がついていたので『あ、いるんだな』とわかりましたが、ここ2週間ほどはずっと真っ暗でしたから。印象? 普通のおじさんって感じですね」
続いて、渡辺容疑者と話したことがあるという同じマンションの住人の証言。この住人は渡辺容疑者の部屋の階下に住んでいる。
「彼は1年ほど前に引っ越してきました。それからほぼ毎晩、夜中になると、部屋の中で体操でもしているのかと思うほど大きな足音がドンドンと聞こえてきて、とにかくうるさい。それで3回ほど注意しに行きました。その場では『あー、そうでしたか。それは本当にすみません』とクソ丁寧な口調で謝るのですが、翌日もまた騒音は聞こえてくるんです」
ただ、その住人はその後、苦情を言いに行くのをやめたという。
「真夏でも黒のニット帽を目深にかぶり、口には大きなマスク。目つきもいつもうつろ。逆恨みされても困るなと思ったんです。そういえば、私の部屋の水回りから何度か異臭がしたこともありましたが、彼は硫化水素を犯行に使用したんですよね?(*藤巻氏の出身校である上智大学に硫化水素入りの容器が置かれる事件があった)今思えば、そのときに作っていたのではないでしょうか」
送検時に見せた笑みについても、「いつも、ああやって何を考えているかわからない表情でした」と、この住人は証言する。
渡辺容疑者が送った脅迫状は数百通。ごく少数の近隣住人以外からは存在を気づかれないほどの静かな生活のなかで、飛ぶ鳥を落とす勢いでヒットしている『黒子のバスケ』に激しい嫉妬の炎を燃やし続けていたということか。
(取材/ボールルーム)