16日放送、NHKプロフェッショナル 仕事の流儀」では、「イチロー4000本への道」と題し、イチローの独占インタビューを放送した。8月には日米通算4000本安打を達成、試合後の会見では「4000本のヒットを打つには、僕の数字で言うと8000回以上は悔しい思いをしている。それと常に自分なりに向き合ってきたこと。誇れるとすればそこ」と語っているイチロー。インタビュー前半で、イチローは“悔しさ”について語っている。その言葉は下記の通りだ(以下、要約)。

「ああいう出来事(4000本安打達成)。区切りのいい数字を残した時は瞬間的には快感っていうんですか。快楽に近い瞬間ですけど、本当に瞬間的なものだっていうのも何度も味わってきているんで。でも、残るものは結局失敗して“なんで出来ないんだ、俺は”って言ってる自分なんですね。

1年目、ドラフトにかかって初めて受けたテレビのインタビューをハッキリと覚えてて、“鈴木選手にとってバッティングとは?”って聞かれた時にハッキリ答えたんですけど、“メチャクチャ楽しい”って答えた。それは子どもと一緒。“草野球が楽しい”っていうのとなんら変わりない。ドラフトにかかった直後の僕が答えた。今それがなんにも楽しくない。4000本トータルで打った自分は全く楽しいとは感じない。でも、1本も打ってない18歳の僕はバッティングは楽しいって言っているんですね。これがまた面白い。

(記録達成では)瞬間的にありますよ、あれだけ人が喜んでくれて、チームメイトがあんなことしてくれて、満足感もあるし、達成感もそれなりにある。でも、その10日後には9対1で勝っている場面で代打にいってるんですよ。悪い言い方すると屈辱。先発のメンバーは下がってる。10日前に4000本を打った僕が代打で出てる。試合決まってますから。僕の前に代打で出た選手はメジャーで1本もヒットを打ったことがないルーキー。このことっていうのは、僕の中で一生忘れない。忘れてはいけないこと。悔しかったんですよね。ライトフライで終わったんですけど。違う意味で今までで一番結果を出したかった打席だったんですよね。

このことっていうのは、この先未来の僕を支えていくだろうなと思う。代打に出されたというのも、実は聞かれているんです。(代打で出るか)選択権を与えられている。ノーということもできたし、恐らくノーと言うだろうと思って(監督が)聞いているのも分かった。でも、打ちたいって言って行ったんですけど、その自分は嫌いじゃない。そこで逃げることはできたんですよね。僕は迷うことなく打ちたいと言って代打に行ったんですけど、その瞬間はとても辛い。聞かれたことが辛いということなんですけど、今まで自分を支えてきたものというのはいい結果、いいことで支えられているわけではない。

それなりの屈辱によって自分を支えている。現在もそう。痛みはないですけど、心は瞬間的に痛みを覚える。そういうことによって自分を支えてきたし、これからもそうである。あの経験は今現在の僕は素晴らしい瞬間だったというふうに思っている。失敗を自分の中に刻み込んでいく行為。その中で出していく結果。それを重ねてきた自分を振り返ると、あの18歳のよどみなく楽しいと言った自分が“ああ、プロになったんだな”っていう実感を持てる瞬間なので嫌いではない」

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