楽しんで行列できますか?(写真はイメージです)

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飲食店などの行列で、大ゲンカしているカップル・夫婦を見かけることがけっこうある。
そういう場合、きまって怒っているのは男性のほうで、こんな怒り・苛立ちの文句もよく耳にする。
「こんな店、わざわざ並ぶほどのもんか!?」
「以前はこんなに並んでなかったのに、テレビに出ただけで行列になるなんて、ばかばかしい!」
そして、女性のほうが、それをなんとか宥めようとするパターンが、実に多いように思う。

もちろんラーメン屋などに並ぶのが大好きな男性も多数いるが、それでも他人の前で自分の恋人や配偶者に怒鳴り散らすというのは、圧倒的に男性が多いように思う。
これってなぜなのだろうか。

本来、「ヒステリー」などは女性の専売特許のように思われがちだが、実は男性のほうが他人の目を気にしないで、感情的になりやすいのだろうか。それとも、性差ではなく、単なる個人差なのだろうか。
「ゆうメンタルクリニック」総院長の、ゆうきゆう先生に聞いた。

「多少は空腹のイライラ感もあるかもしれませんが、男性にとっては『費やす労力』と『得られるメリット』のバランスがとれていないと感じると、急にばからしく思えたりするのですね。自分にとってそれだけの価値を感じられればいいのですが、そうでなければ『わざわざ並ぶほどじゃない』『ばかばかしい』と感じてしまいやすいのでしょう」

男性にとって女性に「付き合わされている」と感じることは、案外ストレスが大きいもので、待つことが苦ではない男性であっても、自分にとって興味がないものに時間を費やそうとは思わないのだと言う。
「特に男性側に『付き合ってあげている』という意識が生じている場合、女性のちょっとした態度や同じように行列に並んでいる人の言動などでイライラしやすいため、感情的になりやすいでしょう。加えて男性には『人前だから』許せないこともあるのです」
?? 人前で女性を平気で怒鳴りつけるなどするのは、「周りの目」が気にならないからではないのか。

「男性がすでに譲歩しているという意識があり、そのうえで相手から気遣いがなかったり、周囲から馬鹿にされていると感じるような言動をされたりすると、自分の威厳を取り戻すためにわざと怒鳴ったり周囲に威嚇するような態度をとることがあるんですね。お店の人を相手に態度が悪くなる男性も、自分のプライドを傷つけられたとか、なめられたくないとか、奇妙なプライドの持ち方によって威嚇していると言えます」
「女に一緒に並ばされているオレ」が格好悪く思えて、恥ずかしくて腹立たしくて、女性に当たり散らすということか……。

「ただし、男性は案外単純なところもあるため、女性から可愛く『ここのラーメン美味しいって言ってたから、絶対あなたと一緒に食べたいと思ってたの。疲れてると思うけど、お願い。最後まで付き合って♪』などとおねだりされると、それだけで『付き合って並んであげてるオレ、優しい』などと、気分が良くなってしまうこともありますよ」
この場合はお店の味などよりも、「自分が彼女のために何かしてあげることで喜ばれている」という部分にメリットが生じるので、気分良く付き合う人も少なくないそうだ。

結局、男性をいかにコントロールするかは女性の腕次第なのかもしれないが、それにしても迷惑なのは、周りの客やお店の人たち。
「並んでまで来るところか!?」「こんな店っ!」なんて店の前で大騒ぎするくらいなら、並ばなきゃいいのに……と誰もが思っているはずです。
(田幸和歌子)

ゆうきゆう 精神科医 著書多数。
ゆうメンタルクリニック総院長(上野院)。(池袋院)。(新宿院)。(渋谷院)。静かで癒される都会のオアシスとして評判が高い。