左から2番目が、いわゆる「うすだいだい」ですね。

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久しぶりに色鉛筆を使ったら、12色の中に、「うすだいだいいろ」があることに驚いた。
「うすだいだいいろ」は、かつては「はだいろ」とされていた色。
昔は人物を描くとき、オレンジに白を重ねたり、ピンクや黄色と白を混ぜたりしていたのに、いつから「うすだいだいいろ」が12色セットに入るようになったのか。
また、「うすだいだいいろ」がラインナップに入ったことで、かわりに何色がリストラされたのだろうか。
経緯や理由などについて、三菱鉛筆に聞いてみた。

「当社商品では、昭和26年発売『学習用色鉛筆No.850』、昭和40年発売『No.880』において、1994年から『はだいろ(現うすだいだいいろ)』を12色の中に含めています」
「うすだいだいいろ」のかわりになくなったの、「白」だそう。
「限られた12色の中では、白を使う頻度が少なく、児童用のお絵かきで人物を描くことが多いため、変更されました」
確かに、「白」は、もともと紙が白いことから、人物の肌の色を塗る際、他の色と重ねるとき以外、あまり使わなかった気はする。

そう思うと、「うすだいだいいろ」が入ることで、白が御役御免となったのは納得ではある。
では、「うすだいだい」という呼び方になった時期や理由は?
「肌の色の概念が固定されてしまうことに対する問題意識により、 業界全体で2001年から『はだいろ』という呼称を変更しています」

ちなみに、「黒」も、普通の鉛筆で事足りそうな気がしなくもないが、色鉛筆の黒と鉛筆の黒の違いは何なのだろうか。
「鉛筆の芯は黒鉛と粘土を混ぜて焼いたもので、色鉛筆の芯は顔料とタルク・ロウを混ぜ合わせ、糊で固め、乾燥させたものです。 色鉛筆は粘土を使わず、焼かないので、鉛筆の芯よりもやわらかな書き味です。また、一般的な色鉛筆は紙の上に描くとロウが溶けて紙に貼りついた状態になるため、鉛筆と異なり、消すことができません」
絵を描くときには、「やわらかく描けて」「消えない」ことが重要なため、「色鉛筆の黒」である必要があるってことのよう。

では、12色の中で使用頻度の高い色は何だろうか。
「単品の購入では赤、次いで青が多いです。赤青以外はあまり差がありません。赤は丸付けなど、絵を描く用途以外で使われていると考えられます。青は空や海など絵を描く際に広い面で使うためとも考えられますが、赤と同様、絵を描く以外の書き込み用途でも多く使われているのではないかと考えられます」
余談だが、ボールペンでもカラーインクでは赤と青が人気色だと言う。

ところで、色鉛筆は従来、紙にしか描けないものだが、現在三菱鉛筆では「ポンキーペンシル」といって、ペットボトルや牛乳パックなど、紙以外にも描け、工作用途にも使える色鉛筆を発売している。
定番の「12色色鉛筆」も、時代とともに、ちょっとずつ変化しているようでした。
(田幸和歌子)