不便さも慣れてくると気にならなくなるから不思議

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パリの面積は山手線の内側と同じくらい。そこに14本の地下鉄とバス、トラム、市内と郊外を結ぶRER(高速郊外鉄道)が走る。パリの公共交通機関の日常を紹介します。

■切符が買えない
改札口に券売機がない入口がある。もしくはICカード式定期券のチャージ機しか置いていない場所がある。そのため入口を見つけても切符を買えず、自動改札を抜けられない。一部のやんちゃなパリジャンは、入口の自動改札を前の人にくっついて抜けたり、飛び越えたり、人が出てきた出口から中へ入ったりする(地下鉄は均一料金でホームに入る時のみ改札があり、出口には一方向に開く扉が設けられている)。しかし、そういう日に限って検札に会い罰金を科せられる。

■おつりは硬貨オンリー
券売機のおつりはすべて硬貨で返される。例えば切符1枚(1.7ユーロ)を20ユーロ札で払うと、少なくともおつりで11枚の硬貨が戻る(2ユーロ硬貨9枚と20サンチーム硬貨1枚、10サンチーム硬貨1枚)。もちろん財布は一気に膨れ上がる……。現金払いは不便なものの、どの券売機やチャージ機もクレジットカードに対応している点は便利だ。

■目的地まで行かない
特にバスで多いのが、目的地まで行かず途中で運行停止になること。急にアナウンスが入り乗っていた車両が回送に変わる。文句を言ってもどうにもならないので、乗客も嫌な顔はしつつも、しぶしぶ次に来るバスへ乗り換える。よくあるこの手の運行停止や遅延を逆手にとって、何も遅れていなくても遅刻のいい訳にできるという点では、利点になる。

■エスカレーターが動かない
地下鉄の駅構内のエスカレーターは、大抵どこか1基は壊れている。パリの地下鉄は構造上バリアフリーに対応できない駅も多く、エレベーターは少ない。よって移動手段は階段かエスカレーターになるが、そのエスカレーターが高頻度で止まっている。大きな荷物を抱えた移動は大変である一方、見知らぬ人が階段の荷物運びをすっと手伝ってくれることもしばしばあるので、人と人との距離は近い。

■自販機から商品が出ない
パリの駅にはよく「Selecta」というスナックや飲料を売る自販機が置いてある。商品価格は市内の店で買うより少し高め。この自販機が、お金を入れたのに商品を出さないことがある(大抵は機械の中で商品がつかえている)。お金を払ったのに出ないのは納得いかないと再度お金を入れると、先ほどの商品は出るが今回の商品は出ず……。その場で自販機に書いてあるカスタマーサービスに連絡すれば後日、切手で商品代を返してもらえるが、手間になるので最初から対面販売で買った方が早くて確実。

■来るはずの終電が無くなる
ホームに設置された電車の到着時刻を表す電光掲示が信用できない。街中で飲んで帰宅する時、電光掲示を見つつ終電はあるなと油断をしていると、ついさきほどまで「あと何分」と表示されていたのが急に消え「本日は終わりました」のアナウンスが構内に響き渡る。来ないものは来ないので、あきらめて地下鉄駅から外へ出て、今週も週末を終える。
(加藤亨延)