解禁当日、フランスのワイン屋の店頭にはボジョレー・ヌーボーの試飲スタンドが設けられる

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今年もボジョレー・ヌーボーが解禁した。日本では国民的イベントといえるほど過熱するボジョレー・ヌーボーだが、本場フランスでは日本ほど騒がれない。もちろん酒屋やスーパーマーケットへ行けばボジョレー・ヌーボーは陳列されているものの、日本のように至る所で宣伝されているわけでない。なぜボジョレー・ヌーボーは日本でこれほど人気になったのか。

日本はボジョレー・ヌーボーと相性が合う国
パリのミシュラン2つ星レストラン「ルレ・ルイ・トレーズ」でシェフソムリエを務める建部洋平さんによれば、企業のプロモーションに加えて、野菜や魚介、日本酒における「初物」好きな日本人の性格とボジョレー・ヌーボーの味の特徴が、日本でより好まれる状況を作ったのではないかという。

ボジョレー・ヌーボーとは、その年の夏に収穫したガメイというブドウ品種から造る新酒のこと。フレッシュで軽やか、イチゴの香りに形容される果実味豊かなワインだ。よく吟味して飲むというよりも晩酌のビールのように、普段使いですっきりと喉で飲むタイプのお酒だ。そのためワインを普段飲まない人でも取り付きやすい味の特徴を備えている。これが欧州ほどワインが日常的ではない日本で、ボジョレーが広く受け入れられるようになった理由ではないかという。

加えてボジョレー地区はワインの生産量も多い。需要があっても量がなければ広まらないが、大量の注文に応えられるだけの生産能力も備えていたことが、日本でボジョレーが広まる後押しになった。

日本がボジョレー地区を発展させている
ボジョレー地区の北、マコン地区で生まれたフランス人醸造家ジョルジョ・デュブッフ氏も忘れてはいけない。なぜなら世界におけるボジョレー・ヌーボーの知名度は、実際彼の売り込みと努力に寄るところが大きいからだ。ボジョレー・ワイン生産者組合によれば、日本のボジョレー・ヌーボー輸入量は2012年で6.6万ヘクトリットル、ボトル換算で880万本と、2位米国の1.6万ヘクトリットル、220万本を引き離し世界トップだそうだ。フランス国内販売量の12.3万ヘクトリットルには及ばないが、それでもフランスの半分に当たる量を輸入している。

日本のボジョレー・ヌーボー人気は、仏ボジョレー地区の各ワイナリーの発展も助けている。良いワインは手間をかけなければ造れないが、それにはお金も必要だ。ボジョレーは普段使いのワインということもあり、他の有名地区のものに比べると稼げるワインではなかった。しかしヌーボー(新酒)が日本などで売れた結果、ヌーボーの利益をワイン造りに回せるようになった。そのため同地区のワインの品質は年々高まっているそうだ。もちろん新酒であるヌーボーが利益の多くを占めるワイナリーもあるが、ヌーボー以外のボジョレー・ワインで評価を上げているところもあり、二極化も進んでいるという。

ボジョレー・ヌーボーにおすすめの料理
ボジョレー・ヌーボーはどのような料理に合わせれば良いのか。建部さんによれば、ヌーボーのフレッシュな味わいは、例えば豚などの白肉を使った料理やメンチカツ、フライドチキンなど油が多い料理と相性が良いそうだ。また魚介類では、はんぺんやちくわなどのすり身、ボジョレー・ヌーボーをよく冷やしてカキと合わせるのもありだという。

ワインは寝かすと熟成され深みが増すといわれる。ただしボジョレー・ヌーボーの場合は新鮮さが売りのワインのため、他のワインのように寝かせるとその新鮮さは失われメリットはない。もし選んだヌーボーの味が自分好みでなかったら、氷を入れて飲むのもコツだそうだ。皆でわいわい言いながら気楽に飲めることこそボジョレーの良さ。難しいことは考えず、今年もボジョレー解禁を楽しもう! 
(加藤亨延)