シラミ用シャンプーを探すなんてことにならないように気をつけたい

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日本ではあまりお目にかからないシラミがフランスでは日常的だ。シラミ(アタマジラミ)とは人の頭部に寄生し血液を吸う昆虫で、直接髪の毛が触れた場合や帽子、スカーフ、クシ、ブラシの貸し借り、プールなどの脱衣所やタオルの共用をきっかけにうつる。

感染者は幼稚園や小学校に通う集団生活をする子供に多い。仏テレビ局フランス5によれば、フランスの3歳から11歳の子供のうち、1割から2割が頭にシラミを持っているそうだ。

フランスは気候が乾燥していることもあり、日本のように洗髪習慣を毎日持つ人は多くない。国立感染症研究所感染情報センターによれば、全体的にアタマジラミの寄生率は調査施設で大きく異なり、子供達の頭を洗う習慣と頻度は、気候的また文化的な背景が強く関係している。そのため一概に経済状態が反映しているとは言い難く、先進国、開発途上国は問わないという。

シラミの産卵数は1日当たり約3〜4個で、1ヶ月に約100個産卵する。卵は約1週間で孵化し、吸血を繰り返して3回の脱皮後、約2週間で成虫になるそうだ。数匹の幼虫または成虫が寄生し始めた段階では、ほとんどかゆみは無い。3〜4週間経過して個体数が増えると激しいかゆみを伴う。

シラミが一般的なフランスでは、薬局などへ行けば多くの駆除薬が並んでいる。日本ではあまり気に留めることも無かったが、フランスへ引っ越してから、子供が学校などでシラミをもらってきたという例も多い。子供向けの見本市やイベントなどでも、シラミ予防を啓蒙するブースがしばしば設けられている。

そのような状況のフランスで近年、問題になっていることがある。シラミ駆除薬に耐性を持つシラミが増えているのだ。仏ル・ポワン誌によれば、パリでは30%以上のシラミが、一般的に使われているシラミ駆除薬に耐性を持つという。

日本にとってもシラミ被害は対岸の火事ではない。第二次大戦後、日本ではGHQが、衣服に付くコロモジラミが媒介する発疹チフス防止のため、駆除薬DDTを大量散布した。このためコロモジラミとアタマジラミの感染者は、日本でほぼいなくなった。

しかし、DDTは1971年より残留毒性が問題で禁止になった。一方でシラミを知らない世代が増え、気付かないうちに感染が拡大するケースや、海外との行き来が活発になり、シラミをもらい帰国する人も多くなった。そして日本でも、フランスのような現在ある駆除薬に耐性を持つシラミが増えてきた結果、シラミは日本でも増加傾向にあるという。
(加藤亨延)