『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)。発売当初は6:4で男性読者の方が多かったという。男性が読んでも十二分に楽しめる一冊だ

写真拡大 (全2枚)

究極の結婚指南書か?はたまた独身街道の黙示録か? 今、一冊の本が未婚女性を中心に話題となっている。

『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社・以下『わたプロ』)。

男性を引かせたりゲンナリさせたりする女性の取りがちな言動を、文字通り101集めた本だ。

「仕事でヘトヘトな彼を、休日のIKEAに連れて行った」
「彼がテレビを観ている間、絶えず話しかけている」
「誕生日やクリスマスに、彼の好みを変えようとするプレゼントを贈ったことがある」
「『アルマゲドン』を観て泣いている彼を、バカにした」

独自の鋭い切り口に、男女問わず笑える大人の恋愛あるある本として注目され、TBS「王様のブランチなど」の情報番組で紹介されたのを機に一気に火がついた。

抱腹絶倒する人がいる他方「ページをめくる度に、ビンタされている気になる」(漫画家・コラムニストのしまおまほさん)と、あまりもの殺傷力に猛烈なダメージを食らうアラサー、アラフォー女性も後を絶たないという。

作者はジェーン・スーさん。作詞家、ラジオパーソナリティー、アイドルのプロデューサー、コラムニストとしてマルチプルに活躍する知る人ぞ知る才媛だ。特にラジオパーソナリティーとして抜擢されるや、破壊力溢れるパンチラインのオンパレードのトークで、あっという間に早耳の好事家の間で、そのユニークな名前とともに話題になった。そして今年2月に自身のブログでのポスト「三十路の心得10箇条」がSNSを通じて一気に拡散され、ネット界隈でも注目を集める存在になる。ちなみにジェーン・スーさんは純国産の日本人だ。

『わたプロ』は現在40歳のスーさんが30代前半の頃、独身の女友だち(a.k.a. "独身のプロ"(c)ジェーン・スー)とファミレスで夜な夜な話した内容がベースになっている。

「当時の私たちは色々悩んだり、辻褄の合わない思いに苦しんだりしてました。今、当時の私たちと同じ年頃の女性から相談を受けるのですが、そういう人たちが状況を笑い飛ばせたり、なるほどな!と膝を打って気持ちが楽になってくれたら嬉しいです」

今や一部の女性から教祖的憧憬の眼差しを向けられているスーさんだが、30歳頃は混沌とした中にいた心持ちで、色々なことが全然見えていなかったという。様々な経験を通じて少しずつさまざまなことに気付くようになる。

「私が経験してきた恋愛すべてに共通する唯一のことは、私が介在するということだけですから、もし同じような問題がいつも生じるなら私に何かしらの原因があると考えるようになりました」

「好きだからとか、愛だからとか、恋愛の言葉を枕詞につけると、大体のワガママとか不遜なことや傲慢なことが、美化されて口から出てくることがわかってきた、というのは大きいですね」

もはや達観の域にまで達したとも言えるスーさんによる自身の相対化が、『わたプロ』をただの笑えるあるある本とは一線を画させている。

とはいえスーさんに、未婚女性に対して何か結論を指し示す気はない。

「私が30くらいの時は、状況がわかっていませんでした。どこまで自分が原因なのかとか。この本を読んで少しでも状況がわかるようになったら、自分で考えてそれぞれの態度を決めてもらえるといいと思います」

未婚のプロを反面教師に結婚に漕ぎつくもよし、実は大して結婚したかったわけではなかったのかもと気づくもよし。そもそも独身のプロたちは、必ずしも結婚がすべてだとは思っていない。『わたプロ』にもスーさんを含めたプロたちが6人同時期に結婚の打診を断ったエピソードが綴られている。

「私の中には結婚することによってスピード感が落ちたり、やりたいことがやれなくなったりするというネガティブなイメージしかないんですよね。嫁とか妻とかに社会が期待している役割にも違和感がありますし」

スーさんがそう言うのも独身ライフが楽しくて仕方がないから(「独身は麻薬」(シングルイズドラッグ(c)ジェーン・スー))。「いずれはしたいけど、今は楽しいから30歳まで結婚はないかな」と余裕をかましている20代の女子はプロ予備軍、必読だ。

またSATC女子は『わたプロ』を肴にガールズトークに花を咲かせるのもよし(反省会になるか、男子への罵倒で終わるかはあなた次第)、そして独身男子は合コンに持っていったら盛り上がることは必至。

そんな『わたプロ』を書いてノリに乗っているジェーン・スーさんの活躍は、オフィシャルBlog「ジェーン・スーは日本人です」、webサイト「AM」の人気連載『はい、こちら ジェーン・スー チャット相談室です。』の他、TBSラジオ火曜日「ザ・トップ5」でフォローできる。また原宿のコミュニティーFMでのレギュラー番組「Ordinary Friday駆ら〜つまりシケた金曜日〜」は観覧自由なので、生スーさんを見てみたい方は行かれたらいかがでしょう?
(鶴賀太郎)