全国のお菓子を独自の視点で紹介した本『地元菓子』が面白い！
本書は、著者の若菜晃子さんが日本全国を旅する途中で出会った、その土地ならではのお菓子＝“地元菓子”を紹介したもの。さっそく若菜さんに、この本を作ろうと思ったきっかけを聞いてみた。
まさに、その熱い思いがあってこそ、これまでにない本『地元菓子』ができたのだ、と納得。本書はただ単純に、写真と簡単な解説でお菓子を紹介した、カタログのようなものとはまったく別物なのだ。
たとえば、「酒まん」や「えびせん」など、歴史と風土を反映して同じお菓子ばかりを売る街を“ばっかりのまち”として取り上げたり、見た目のインパクトで選んだお菓子や、自身が好きな「カタパン（堅パン）」（＝乾パン）について掘り下げて紹介したり、桜餅は道明寺派か長明寺派かを考察し、全国の地図を使って表現したり。「おいり」と呼ばれる四国のお嫁入り菓子の製造工程に密着したレポートなども。これらはほんの一部で、まだまだたくさんあるのだが、どれもオリジナルの切り口が楽しく、何より若菜さんならではの視点、思い入れを交えて書かれているのが大きな魅力。小説を読んでいるような感覚、というのだろうか。もちろん、地元で実際にお菓子を作っている人たちの声など、それぞれのお菓子にまつわる背景も綴られていて、わかりやすく、資料としても優れている。
ちなみに私は東京出身だが、両親が新潟県と福島県出身のため、昔から親しんでいた新潟の『笹だんご』や福島の『ままどおる』が本書で紹介されているのを見て、懐かしくなった。全国津々浦々、きっと本書を見て、故郷のお菓子に懐かしい思いを抱く人、初めて知ったお菓子に興味を持つ人、驚く人、いろいろいることだろう。
「既に読んで下さった方から、『私はこうだった、ああだった』という感想をいただいていて、みなさんそれぞれに、お菓子に対していろいろな体験や思い出をもって生きているんだな〜と改めて思います」と若菜さん。
ところで、実際に本書で紹介されている数倍のお菓子を食べ、その中から選んだおすすめだけを紹介していると話す若菜さん。どれもおすすめのはずだが、無理をいって、特にお気に入りのお菓子を聞いてみると「表紙にも使った福井県小浜の『くずまんじゅう』はまた食べに行きたいです。あとは、ふるさと神戸の『フロインドリーブ』のドイツ菓子はいついかなるときでも食べたいですね」とのこと。
また、間違いなく、おすすめできるお菓子は？「生クリーム好きの方には『ふくや』のロールケーキは自信をもっておすすめします。四国の『おいり』もおいしいですし、お餅のページで紹介した各地のお餅はどれもおいしく、富山の『ぎんなん餅』や、中津川の『かやあられ』も絶品です。また和菓子店のページでご紹介したお店はどこも本当に真摯で、丁寧で心のこもったおいしさです」
それぞれの“地元菓子”のストーリーは、ぜひ本書で。とにかく読み応えたっぷりの一冊です。そして、読んだらきっと、地元菓子を食べに各土地を訪れたくなってしまうはず！
（田辺 香）
