東京都新宿に拠点を置く「日本学生支援機構」は日本最大規模の奨学金事業団体だ。奨学金の貸与だけでなく、外国人留学生の就職支援なども行なっている

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大学や大学院時代に利用した奨学金の返済に苦しむ若者が増えている。就職難や非正規雇用の増加により収入が安定せず、返済を滞納してしまう例が後を絶たないのだ。日本学生支援機構によると、滞納者は昨年3月の時点で約33万1000人にも上るという。

こうした状況のなか、「貸し手」である日本学生支援機構の対応に厳しい意見もある。奨学金問題に詳しい弁護士の岩重佳治(いわしげ・よしはる)氏はこう語る。

「2004年、前身の日本育英会の奨学金事業が現在の独立行政法人日本学生支援機構に引き継がれましたが、現在では、同奨学金事業は、民間の金融機関と同じような存在になってしまいました。『有利子枠の拡大』がそのひとつの例です。育英会時代にもあった有利子の奨学金は、1999年以後急速に拡大し、その結果、学生が非常に負担の大きい“借金”を背負うことになったのです」

現在、支援機構の奨学金には、無利子の「第一種奨学金」と、有利子の「第二種奨学金」の2種類が用意されている。

岩重弁護士によると、そもそも有利子タイプは、あくまでも補完的に導入されたものだったという。ところが、その後も有利子枠は拡大し、今や無利子と有利子の格差は事業予算で1対3にまで広がっている。

どうしてこのようなことになってしまったのか。日本学生支援機構の広報課長・前畑良幸氏はこう語る。

「まず、われわれとしては多くの学生に教育の機会を持ってもらうため、奨学金をご希望される方には、基準をクリアすればすべて貸与したいと考えています。もちろん、国の予算という縛りがあるので希望者すべてとはいきません。特に無利子の第一種に関しては、政府からの貸付金と利用者からの返還金で成り立っているため、どうしても“限り”がある。一方、第二種は返還金と国から学生の利子軽減のための補填を受けつつ、民間金融機関などから借り入れた資金により実施しているため、関係機関と相談しながら、利用者拡大に対応することができました」

無利子の第一種の受給希望者は年々増加しているが、財源の関係で条件を満たしてもあぶれてしまう者がいる。利子付きの第二種は、その「受け皿」になっているのだ。

支援機構は年収300万円未満の利用者に対して、返済猶予期間を与えている。だが、前出の岩重弁護士はこう訴える。

「確かに支援機構の奨学金には、返済期限の猶予や毎回の返済額の減額など“救済制度”もなくはありませんが、極めて不十分と言うほかありません。私が現場でいろいろ見てきた限り、ほとんどの場合、それらの救済策は現実的な解決方法にはなっていないんです」

このままでは、前途ある学生を支援するための奨学金制度が、逆に若者の未来を奪うことにもなりかねない。

(取材・文/木場隆仁)