‘11年12月24日の午後9時過ぎ、神戸市兵庫区福原町にあるファッションヘルス店「S」の前に、男が立っていた。男の名前は山村幸大こと洪幸大(42)。後述するが、現在は「洪被告」と呼ばれる身の上だ。数分後、「S」から防寒着姿の男が出てきて、いきなり洪被告を強く抱きしめた。この男こそ、兵庫県警組織犯罪対策課などに勤務し、現在、県警内で刑事上、人事上の処分が検討されている常深洋蔵警部補である。

この日、洪被告は常深警部補と彼の部下、そして「警察に顔がきく」というGなる人物を接待していた。1軒めは神戸市中心部の三宮の焼き鳥屋へ。2軒めは「熟女好み」の常深警部補を人妻ヘルス店「S」に案内し、3軒めはコンパニオンがサンタクロースに扮する三宮の高級ラウンジへ。4件目が常深警部補の自宅の近所であり、当時、彼が勤務していた社署の近所でもある加東市のスナックだった。

じつは同年9月8日にも、洪被告は同様のコースで常深警部補と彼の部下、Gを接待している。筆者の取材に、洪被告は「一夜の接待で、9月は約25万円、12月は約20万円を使いました」と話した。洪被告が常深警部補と初めて会ったのは’11年6月16日。仕事で付き合いがあったGから「警察があなたを狙っている」と言われたのがキッカケだった。その日、洪被告は三宮の喫茶店でGから常深警部補を紹介された。

洪被告によると、常深警部補は警察手帳を示し、当時、彼が勤務していた組織犯罪対策課の名刺を渡して、「あなたを逮捕するところだった」と言ったという。「あらかじめGと打ち合わせしていたとおり、私は常深警部補の目の前でGに現金50万円を渡しました。知人が喫茶店の近くの席にいて、現金の授受を見ています。何かあったとき、証言してもらうためです」(洪被告)

常深警部補とG、洪被告の癒着はまだある。’11年8月、Gと洪被告は神戸市兵庫区に「闇スロ店」を開いた。当然、取り締まりの対象だが、「Gは『警察官がついているから大丈夫』と出資者に説明していました。実際、常深警部補も闇スロ店に来ていたんです」(洪被告)

洪被告は5時間を超える音声ファイルを筆者に提供している。’11年12月19日、つまり冒頭のクリスマスイブの接待が行われる5日前、洪被告とGが車で社署へ出向いたときの一部始終が録音されている。常深警部補が「忘年会、いつがええの?」と持ちかけると、洪被告が「オヤジさん、好みがうるさいからなあ。ボクらは(女性が)ピチピチのとこしか行きませんから」と応じている。「熟女接待」が常深警部補の要求で行われたことがよくわかる。
この日の本題は、「山口組系暴力団幹部のKが拳銃と覚醒剤を所持しているのを見た」というGの調書を作成すること。それを疎明資料として添付し、常深警部補が裁判所に家宅捜査令状を請求するためである。

ところが、GはKと付き合いがなく、目撃談も作り話。Kと付き合いがある洪被告の助言で調書が作成されていく。なにしろGはKの自宅すら知らないので、社署に行く途中で洪被告が案内しているくらいなのだ。その場所で、Gが「いつごろ見たことにしようか」と尋ね、洪被告が「春ごろ」と答えているのも録音されている。

社署での調書作成を終え、神戸市へ向かう途中で、Gは洪被告にこう話しかける。「『ウソでもええから調書まけ(作成しろ)』やって。日本の警察も、もうだいぶ落ちぶれてますね。でも、反対にキンタマを握りおうたもんやもんね、警察と。おまえ、『ウソでもええから調書まけ』って言うたやんかって」

‘12月10月31日、捜査第2課は、洪被告が知人女性と共謀し、生活保護費約100万円を不正受給していたとして彼を詐欺容疑で逮捕したが、「口封じ」のための別件逮捕という見方が強い。そもそも洪被告と知人女性に不正受給を持ちかけたのはGだと判明しているのに、彼が何のおとがめもないのは解せない。1月10日、常深警部補の行動について、筆者は兵庫県警に見解を求めたが、「お答えすることはない」とのことだった。
(週刊FLASH 1月29日号)