反政府武装組織の拠点で朝までネット三昧のシリア人=2012年6月24日

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フリージャーナリストの安田純平さんがシリア取材や戦地取材にまつわる話を伝える連載です。冒頭写真は安田さんが反政府武装組織の拠点で朝までネット三昧のシリア人を撮ったもの(2012年6月24日)

●ツイッターを更新しないと大変なことになるシリア

 安田純平は死んだのではないか――。

 私がシリアで取材中の7月下旬、ネット上などでこんな噂が流れたという。6月下旬にシリアへ密入国してからほぼ毎日書き込んでいたツイッターが更新されなくなったからだ。

 反政府側の取材でシリアに入国した場合、ツイッター更新は、反政府側が各都市に設けているメディアセンターでインターネットにつなげて行うことになる。反政府側の地域は政府軍による砲撃や空爆を受けているため、インターネットカフェは閉まっている。政府側が支配している地域では営業しているかもしれないが、数百メートルおきにはチェックポイントがあるうえに通報が入る可能性があるのでかなり危険だ。

メディアセンターは衛星回線を使用しており、速度はあまり期待できない。反政府側の活動家や武装組織の戦闘員が自分のパソコンを持ち込んでSkypeなどを始めるのでますます遅くなる。3メガバイトほどのサイズの写真を数枚送信しようとすると、30分から1時間はかかる。電波が不安定なのかたびたび回線が切れるので、その都度やり直しである。

反政府側は砲撃や空爆の被害があると、すぐにビデオカメラを持って現場へ向かう。高台に上がり、着弾の様子を撮影する者、爆煙が漂っている段階から着弾現場で死傷者を撮る者、秘密病院で患者の応急措置や遺体の安置の様子を抑える者とで役割分担をしている都市もある。

彼らはその映像をすぐにメディアセンターに持ち込んでネットに上げ、アル・ジャジーラやアル・アラビアといった中東の衛星テレビ局に送りつける。映像を使うかどうかはテレビ局側の判断で、報酬は支払われておらず、センターの運営費用は、湾岸諸国などで働く在外シリア人やシリア人企業などからの寄付で賄っているという。
細い回線はすぐにいっぱいになるので、ただでさえ遅いアップロードがさらに滞ると、「いま送信してるんだからネットやめろ」と怒られてしまう。ツイッターやメールの送信など大した容量ではないのでそれでも続けるが、回線の状態が悪く一日中ネットができないこともある。

反政府側の解放区に滞在する場合、その都市の反政府側武装組織を構成する部隊が使用している拠点に居候することになる。そこにネットがあればよいが、なければメディアセンターに行くことになる。しかし、空爆や砲撃が激しく、地上戦も発生するような都市の場合、そこまで行くのはかなり面倒なのでネットの利用は諦めるしかない。

都市と都市との間の幹線道はほとんど政府側が支配しているため、かなり大回りに農村地帯を移動する。そうした移動の中継地点になっている農村の拠点には上記のようなネット環境はない。電話回線と思われる有線のネット回線を持っている人もいたが、現在は使用できなくなっているという。

農村部では空爆や砲撃はたまにあるが、地上戦はあまりなく、農作業も通常通り行われているようだった。ただ、政府を支持している村も散在しており、政府側民兵が周辺で活動をしていると反政府側は移動ができなくなりネット環境のない農村で何日も待機することになる。長距離移動する車自体が少ないので、何もなくても待機しなければならない日もある。こうなるとツイッター更新などとても無理である。

携帯電話からネット接続するか、SMSを日本の協力者に送って代わりにツイッターに上げてもらうという方法もある。携帯電話に入れるSIMカードはプリペイドのものを使用するのが便利だが、購入にはビザが必要なので密入国の場合は正式には入手できない。反政府側が政府側民兵から奪った携帯電話から抜き出したSIMカードが出まわることもあるようだが、かなりレアなケースだろう。