80年代のにおいがプンプンするこの広告は、DSi・3DS用ソフト『プチコンmk2』のもの。DSならではの最新の技術を生かして、昔のBASICをそのままに、使いやすくしたソフト。マイコン族ならニヤリとする仕掛けがいっぱいだ。

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『電子工作マガジン』の11月号を見て仰天したんですよ。
雑誌自体かなりとんがった、趣味の雑誌ではあるんですが、その中に1ページ、やたら古臭いデザインの広告ページが。
えっ。ちょっと待ってなんでこのページだけ80年代なの。おかしくね。
あーでも電子工作マガジンならそういう古いのも扱ってるかもねーなんて思ってみていたら、実はそれ、ニンテンドーDSi・3DS専用ソフトの広告でした。
あんまりにもアナクロなデザインに、これはただならぬものだと感じ早速作っている方に問い合わせ、広告そのものの掲載許可をいただきました。
左上に載せてあります。
これが21世紀の雑誌に載るんだぜ。デザインからして80年代マイコン時代ですよ。どういうことなの。
ベーマガ(マイコンBASICマガジン)から移植してきたみたいじゃないの。
 
これ一体なんなのかというと、『プチコンmk2』というDSi・3DSのダウンロード専用ソフトの広告。
BASICを打ち込んでプログラムを動かすという、「なんで今あえて!?」とツッコミたくなるソフトです。
DSの二画面を使って、上の画面をディスプレイに、下の画面をキーボードに見立ててポチポチとBASICプログラムができます。
早速ぼくも、MSX時代を思い出して打ち込みます。

PRINT "HELLO WORLD"
BEEP

さて実行と。
ピッ。表示されました。うーわー懐かしい。何十年ぶりだこの感覚。
さてセーブしてみようかね。
ビーガガガガ
ちょ、えっ? この音……カセットテープに記録してる音だ!
蘇ってきた、色々蘇ってきたよ!

プチコンシリーズは2011年から配信されている、DSを使ってプログラミングをして、遊ぶことができるソフトです。
つまり、BASICを知らなければこれだけいきなり買っても、その時点ではなんにも遊べません。あくまでも「ツール」です。
しかしBASICを知っている人間にしてみたら、超高性能なハードを使って、お手軽に作る楽しみをまた味わえる、というとんでもない代物。
しかもmk2になって、作ったソフトはQRコード化することが可能。。簡単に共有できるようになりました。

えっ、BASICって何かって? あっ、そうね、そうですよね。もう30年近く前ですもんね。
BASICとは70年代から80年代、パソコン黎明期に使われていたプログラム言語です。
といっても処理が遅いため、ゲーム開発に使われることはほぼありません。
ただ非常に簡単なため、あくまでも初心者向けのシンプルなプログラム言語です。
当時のコンピューター雑誌にはQRコードなんて当然ないので、ベーシックのプログラムがびっちり印刷されていたものです。
ちょうど左上写真の広告の、右側の文字の羅列ですね。これを見ながらポチポチ打ち込んだんです。MSXとかで。
先ほど「カセットテープ」と言いましたが、DVDやCDはおろか、フロッピーディスクすら無かった頃はカセットテープにデータを記録していました。
その記録音がえらいうるさい上に、やたら時間がかかる。ただ当時は時間をかけてつくった、ブロック崩しやテニスゲームなんかを読み込むだけでわくわくしたものです。
したものなんです。

プチコンmk2は、想像の範疇を遥かに超えたような凝ったものを作ることもできます。
ここはマイコン族の腕の見せ所ですね。
オフィシャルでこんなのまで作れちゃうというのを再現しています。
さすがにドット絵を全部作るのは面倒臭い、などの点を考慮しつつスプライト素材も最初から豊富に用意されています。
音楽と効果音、音声合成機能(ようはしゃべるってことです)もついてます。MMLの音階再生も可能なのでチップチューン風音楽も作れます。
このへんが21世紀的。本当のFM音源じゃなくてFM音源「風」です。
しかし『Visual Basic』のような統合開発環境は一切、一切無く、直打ち実行です。
黒画面に文字だけ。シンプル!
現在youtubeなどに作成した動画が沢山上がっています。びっくりするほどよくできたソフトもあるので探してみてください。

プチコンまとめWiki
こんなまとめサイトでは、様々なユーザーがQRコードを使って、プチコンmk2で作ったプログラムを公開しています。
ユーザー達は昔の技術と今のアイデアをフル活用して、それこそグラディウスやゼビウス、ファンタジーゾーン級に遊べるプログラムをガンガンプチコンmk2で作っちゃってます。
中にはグラフィックにこだわりまくって、今風の萌え絵を再現する強者も。す、すごいね……人間の技術は無限大だね。

無論、不便さは山ほどあります。当たり前ですがDSでしか動きませんし。
MSX2に比べたら比較にならんほど、当時の苦労の何百倍も進化させたBASICなんですが、基本はそのまま。できることに限界はあります。
ただ、限界がある中でどう作っていくかを考えるのが、どう短縮してコンパクトにして、その上でアイデアを詰め込んで「ゲームを作るか」が楽しいわけですよ。
昔BASICを使っていた方ならもちろんオススメ。全くBASICを知らない人でも、2・3行打つだけで超カンタンなプログラムが組めるのは、なかなか感動しますよ。
オススメなのは、サンプルソフトや誰かの作ったソフトをQRコードで読み込んで、その一部を改造して遊ぶ、というもの。
あんま難しく「プログラム組まなきゃ!」と構えないで、適当に遊ぶことも十二分にできます。
この創意工夫遊びが、「ゲーム」の根っこなんだよなあ。

では『電子工作マガジン』ではどんなことをこのプチコンmk2を使ってやっているんだろう?
早速気になってページをめくってみました。
「(プチコンmk2を使ったニンテンドー3DSの)画面の点滅を読み取ってデータを受信する光センサ基板の製作」
プチコンmk2で作ったプログラムでニンテンドー3DSの画面の光を点滅させ、それを光センサで読み取ってデータ受信する電気工作をしていました。なんだと……。
ま、まいりました……。その発想は普通ないよ!
最新のゲーム機を使って、昔の「何かを作りたい」という意欲、もう一度奮い立たせて見ませんか。
最初は2・3行でいいんだ。人の作ったゲームをQRコードで読み込むだけでもいいんだ。楽しいよ!
値段は800円(ダウンロード販売)です。BASICいじったことある人なら安すぎるくらいの値段じゃないかと。
(たまごまご)