また、再導入を求める意見で主流となっている「省エネルギーに貢献する」という主張に対しても近年では疑問が呈されています。アメリカのインディアナ州は2006年にサマータイムを導入しましたが、導入前と比べて冷房に費やす電力消費がかえって増加したという調査結果が2008年3月27日付の『ウォールストリート・ジャーナル』で報じられています。20世紀初頭にアメリカ東部でサマータイムが導入された頃の電力は照明が主な使用目的でしたが、再導入の目的を「省エネ」とする意見は電力の使用目的が照明以外にも拡大した結果、照明の比率が相対的に低下している事実を正しく反映していなかったのです。「明るい時刻に退社して1時間の余暇が増える」と言う主張も「サービス残業が常態化している日本の労働環境が是正されない限り絵空事に過ぎなくなる」との指摘が日本労働弁護団などからなされています。さらに、アナログ時計のつまみを回せば時刻調整が済んだ時代ならいざ知らず、家の中にあるさまざまなデジタル家電の時刻調整をするのは大変ですしプログラムの改修費用もかかります。周知期間を置いたとしても、テレビの地上波デジタル放送移行とは比べ物にならないぐらいの費用と混乱の発生は避けられないでしょう。

このように、民間や官公庁で実施している“サマータイム”と称する制度は実質的には“時差出勤”に他なりません。かつて日本で法制化されていたサマータイムとは全く似て非なるものであり、サマータイムを半世紀ぶりに再導入することによって現在、広く実施されている“サマータイム”と称する時差出勤と同じメリットが得られるかどうかは非常に疑わしいと言えます。実施している企業や官公庁は「格好良さそうだから」と言ったイメージに飛び付いて安易に“サマータイム”という名称を用いることで誤った印象を与えかねない問題を認識し、実態に即した別の呼び方を考えるべきではないでしょうか。

なお、時差出勤を“サマータイム”と称するはしりとなった『北海道サマータイム月間』は2007年から参加企業が減少したことなどを理由に2010年は中止され、2011年より再開したものの規模は2ヶ月間に縮小されているそうです。


画像:1949年4月3日のサマータイム開始を告知する時計店の様子(毎日新聞社『決定版 昭和史(13) 廃墟と欠乏 昭和21-25年』[1983]より)
画像ソース:Wikimedia Commons http://commons.wikimedia.org/wiki/File:DST_on_3_April_1949_in_Japan.JPG

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