日本人男子は未踏の世界、世界ランキング20位も見えてきた錦織圭。ジョコビッチに勝ちフェデラーに屈した11月、彼がこの大会で得たものとは?

写真拡大

 2011年11月、世界のテニス界を驚かせる出来事が起きた。世界ランキング32位(当時)、テニス界ではまだ発展途上にある日本の若者が、スイス・バーゼルで開催された室内大会の準決勝で世界ランキング1位、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に勝利するという大金星を挙げたのだ。

 若者の名前は錦織圭(21歳)。日本男子史上最年少、18歳で世界ツアーで優勝し、“テニスの王子さま”と騒がれてから3年。今、世界の頂点を目指して戦っているそんな彼が、今シーズンを振り返るとともに、12年最初の四大大会となる全豪オープンと目標である世界トップ10入りについて語ってくれた。


■歴史的勝利の瞬間、何を考えていたか?

――まずは11月の歴史的勝利から伺います。圧倒的な強さを誇るジョコビッチ相手の勝利は世界中のテニスファンを驚かせました。

【錦織】ありがとうございます。相手が世界ランク1位の選手だからといって気負うことなく、積み重ねてきた努力に自信を持てて挑めたことがよかったのだと思います。とにかく落ち着いてプレーすること。それと、自分からミスをして自滅することだけはしないように意識していました。

――第1セットを失い、第2セットもセットカウント4−5、第10ゲーム0−30。あと2ポイントでジョコビッチの勝利。そこから第2セットをタイブレークの末、奪取。そして第3ゲームは6−0。気持ちの勝利ですね。

【錦織】あの場面をしのげたことで、自分の調子も上がり始めてリズムもつかめました。その後は、とにかく落ち着いて1ゲーム1ゲームを大切に戦っていこうと思いながらコートに立っていました。

――世界ランキング1位のジョコビッチに勝利して、ご自身の世界ランキングも最高24位まで上げるなど、今シーズンは飛躍の一年でした。飛躍できた理由は?

【錦織】技術面に関しては特に大きくは変えていません。ただ、ベスト4入りした上海マスターズ(10月)の1回戦で0−6、1−4から逆転で勝ったとき、自分自身でも進化を実感したというか、自分の戦い方というか、何かをつかんだ気がしました。我慢ができるようになったというか、ストロークの打ち合いでも自らリスクを負わなくても勝てるという自信をつかんだ。それが一番大きいと思います。

――今シーズン、錦織さんはサポートするコーチ陣を一新しました。ツアーに帯同するダンテ・ボッティーニコーチ以外に、かつてアンドレ・アガシを世界1位に押し上げたことで知られる名将ブラッド・ギルバートがヘッドコーチに就任。さらに一シーズンを通して活躍できる肉体をつくり上げ、維持するために今弘人(こん・ひろと)トレーナーが加わるなど、チーム錦織は史上最も充実した布陣になりました。

【錦織】コーチは3人ともすごくマッチしています。特に世界1位の選手を何人も育てているギルバートからアドバイスをもらえるようになったのは大きいです。今シーズンの最初の頃、ギルバートから「攻撃力だけではこれ以上は上がれない。もっとディフェンス力をつけるように。そうすれば必ず、世界20位、15位を狙える」とアドバイスされました。その言葉は大きな励みになりました。フィジカルトレーニングも、終始サポートしていただけるのは大きいです。

――技術的に伸びた部分は?

【錦織】サーブですね。フォームも変えて、よりパワーが出るようになりました。スピードも増したし、プレイスメント(狙った場所に打つこと)も良くなって、サーブでポイントも取れるようになってきています。アドバイスを受けて少し変えてみたら、すごくシンプルに打てるようになりました。


■より上を目指すため、足りないものは?