ビフィズス菌BB536

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森永乳業、理化学研究所特別招聘研究員の辨野義己氏、広島大学教授の田辺創一氏の共同研究で、ビフィズス菌BB536を含有するヨーグルトの摂取が、大腸がんのリスク要因と考えられている「ETBF菌」を除菌する作用があると示唆された。

日本で1000万人以上、「ETBF菌」保有の可能性

食の欧米化、飲酒といった環境要因の影響が大きいとされてきた大腸がんだが、米ジョンズホプキンス大の研究(2009年発表)で、腸内に存在する悪玉菌の「毒素産生型フラジリス菌(ETBF菌)」が、大腸のがん化を促進する可能性があることが分かっている。

ETBF菌について東京医科大教授の大原正志氏は、「健常者の腸内に常在する悪玉菌のなかでも毒性がきわめて強く、これまで慢性的な炎症をもたらすことが知られていました」と説明。その慢性炎症に付加的因子が加わることでがん化が促進されると考えられる中、「胃疾患におけるピロリ菌と同等クラスの原因因子である可能性を考えています」と警笛を鳴らす。

森永乳業らの研究では、関東在住の20〜65歳の健常者420人を対象に、糞便サンプルの分析を行ったところ、全体の9%である38人からETBF菌が検出された。日本の人口に換算すれば1000万人以上の日本人がETBF菌を保有していることとなる。

保有者の特徴を調べると、ヨーグルトを3回以上摂取する人のETBF菌保有率は4.5%なのに対し、週2回以下摂取する人の保有率は10.3%と高かった。

大腸がん予防への期待

研究では次に、ETBF菌保有者のうち、ヨーグルトを習慣的に摂取しない32人を対象に8週間、1日あたりビフィズス菌BB536含有ヨーグルト80g×2、もしくは牛乳200mlの摂取を続けてもらった。すると、牛乳摂取群では大きな変化が見られなかった、ヨーグルト摂取群では、糞便1gあたり平均1000万程度あった菌数が100万程度まで減少し、ビフィズス菌BB536の除菌効果が示唆された。

辨野氏は「大腸がんは近年、早期の発見や治療で『治る病気』となりつつありますが、患者数は増え続けることが予想されています」としたうえで、今回の研究成果について、「大腸がん予防に新たな可能性を提示できたと考えています」と語る。今後は、ビフィズス菌BB536がETBF菌の働きをどうコントロールするか解明を進め、「大腸がんに対するプロバイオティクス研究に、新たな扉が開かれることを期待しています」という。

ビフィズス菌BB536は悪玉菌の働きを抑えて腸内環境を良好にする「短鎖脂肪酸」を増やすそうで、前述の大原氏は、「結果として大腸がんの予防が期待できます」と語り、便通・便性の改善効果も確認されていると明かした。

森永乳業では1969年、独自研究から発見したビフィズス菌BB536の分離に成功し、77年、日本で初めて乳製品に応用。同社の「ビヒダスヨーグルトBB536」などで、通常の乳酸菌に加えて使用されている。