すべてを失ってしまった3月11日から4カ月。「こうしてベガルタさんと対戦できるだけでも幸せですよ」と檜垣監督は笑みを見せた。しかし、現状で満足している雰囲気もない。檜垣監督は「完敗でしたね」と語りながらも「やれないことはないという手ごたえを感じました。今回は準備不足でしたし、はじめて決勝リーグで戦ってギャップを感じたところもありましたね。でも、今回の経験を生かしてこれからトレーニングを積んで行けば、届かない相手ではないと思いました。次のJユースカップの準備だと考えれば、いい経験になったと思います。もっと質を高めていきたいと思います」とリベンジに燃えていた。試合をするだけで満足するのではなく、常に上を目指そうという意気込みにチームは満ち溢れていたのだ。

■少しずつ、立ち上がっていくために

それはまるで復興に進む女川の町の今を表しているようである。震災後、町を覆っていた瓦礫の山もだいぶ撤去され、ビルの上に乗っかっていた車や町の中に倒れていた大きな漁船や鉄道車両も姿を消している。そして、町のあちらこちらに駐留していた自衛隊の数も少なくなり、今まで自衛隊のキャンプに使われていた運動公園もその役割を取り戻しつつある。町中にはプレハブのお店も建つようになるなど、町全体が震災の苦しみから立ち直り、前に進もうとしているのだ。「今まではみんな自分のことでいっぱいいっぱいだったけど、今は少しずつだけど、立ち上がろうとしているんです」と檜垣監督は力を込める。

もう下を向く時期は終わった。町もクラブも、立ち止まることなく、前へ進む。コバルトーレ女川U-18の奮闘から、女川町の強い決意が感じられた。

■著者プロフィール
佐藤拓也
1977年生まれ。北海道生まれ、横浜育ち。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、フリーランスのライターとして活動を開始。その後、「EL GOLAZO」や「J’sGOAL」、「週刊サッカーダイジェスト」「週刊サッカーマガジン」「スポーツナビ」などサッカー専門媒体に執筆。現在はJ2を中心に様々なカテゴリーを取材して回っている。


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