磐田のスタメンは、川口、山本康裕、古賀、イガンジン、山本脩斗、那須、上田、西、船谷、ジウシーニョ、前田。磐田は先入観を抱けないくらいに、最近の情報がない。前に見たときは、岡田がミドルを決めた試合だった記憶がある。月並みなことを言えば、世代交代に失敗したのかなという勝手な憶測くらいである。成岡、犬塚は元気だろうか。ジウシーニョ、カレン、前田のトリオ時代が懐かしい。

 広島のスタメンは、西川、森脇、中島、槙野、和幸、浩司、山岸、ミキッチ、高萩、高柳、李。広島の情報はたくさんある。ストヤノフと寿人、青山がベンチにいる次点でかなりきつい状況。でも、李が調子を上げてきていて、今になってニューヒーロを受賞した高萩も気合が入っているだろうし、槙野は言うまでもなく。ちなみに、久々のスタジアム観戦でした。

 ■決勝戦らしい30分

 柳下監督曰く、はじめの30分は申し訳ないゲーム。なので、まずは磐田が先制する最初の30分までの印象を。広島はいつもの3-4-2-1を4-1-4-1気味に変更して、ボールを大切にするサッカーを実行する。決勝戦でも俺達はスタイルを変えないよ、という予想通りの広島の試合への入り方であった。選手がポジションを変更するのは、相手の守備の役割を混乱させて、ビルドアップを有効に進めるための方法である。

 磐田のシステムは4-4-2。高い位置から積極的な守備を見せていた。前田とジウシーニョの絶え間ないプレスには頭が下がる思いだった。もちろん、どこまでも相手を深追いすることはなく、自分たちのプレスを始めるラインが明確に定められていて、チーム全体で共通の理解のもとに守備が行われていた。また、広島のシステムが流動的であることを織り込んで、守備の役割分担を行ったことから、広島はなかなかボールが運べない状態となった。

 なので、広島は磐田のプレスがかからない位置にボールを動かしながら、前線にボールを入れる機会を慎重に伺う。磐田は深追いしすぎないように、それでも、隙あらばどこまでも深追いする準備をしながら、がっつりと守備を固めていた。広島は和幸がDFラインに入るので、アンカー気味に浩司が孤独だった。磐田はFWが浩司のパスコースを切り、中盤の選手もマークを外さなかったので、なかなか浩司経由でボールを運ぶことが出来なかった。

 ただし、ボールが入れば、ダイレクトプレー&ロングパスで状況を変えられそうな雰囲気がなかったわけでもない。ただし、浩司にボールが入る機会を最小まで削っていた磐田の守備を褒めるべきなんだろうと。なので、シャドウがボール運びに加われれば、状況は変化したかもしれないが、そんな動きは見られなかった。ワントップとツーシャドウで相手のDFラインを中央に絞らせる&空いたサイドのスペースにWBを上がらせて相手を押しこむので、気軽にボールを受けに中盤に下がってくるべきではないかもしれない。でも、セレッソの3シャドウがやっているように、たまにはやるべきなのではないかと。

 なので、試合は完全に膠着状態となる。広島は安全な位置からなかなかボールを運べないし、磐田はちっとも攻撃的な守備を発動しない我慢の時間が続く。どっちかといえば、磐田の方がFWと相手のCBが勝負をする場面が多かったので、何かを起こせるとしたら磐田だろうけど、なかなかそれも起きないだろうなという最初の30分となった。広島はゴールキックからボールを繋ごうとしたが、磐田はそれをさせずに空中戦を選択。しかし、空中戦はどっちつかずだったので、試合が動かない要因ともなった。

 ■意地みたいなもの

 試合が動いたのは広島のミスからであった。見る人によってはボールを大切にするどころか、危険な印象を受ける広島のボール運び。ロングキックは上手いが、流れの中では意外に安全なプレーだったり、驚くようなミスをする西川くんが痛恨のキックミス。これを拾った船谷→前田のクロス→船谷がヘディングで決めて、磐田が先制点を得る。我慢を続ける磐田からすれば、願ってもない展開である。