小林香織(撮影:野原誠治)
 アーティストのイメージに沿って創りあげたオリジナル・マスターテープの音(原音)を可能な限り忠実に、リスナーに届けたいという“原音探究”への願いから生まれた、ビクター「ウッドコーンスピーカー」。前回のスタジオエンジニア・山内“Dr.”隆義氏に続き、今回はアーティストの立場から、デビュー4年目を迎え3月4日にベストアルバム「GOLDEN BEST」を発売したサックス・プレイヤー、小林香織にウッドコーンについて話を聞いた。

――この「ウッドコーンスピーカー」は、青山のビクタースタジオに置かれているとのことですが、小林さんは実際に使われたことはありますか?

小林香織(以降、小林):はい、今回もベスト盤「GOLDEN BEST」のレコーディングを青山でさせて頂いたんですけど、マスタリングの時にあって、すごくいいスピーカーですよね。プロデューサーで私のバンドのベーシストと二人で「これ欲しいね、おいくらですか?」とか言ってたんですよ(笑)。多分、7万円ぐらいと伺ったんですが。

――オープン価格なので、店舗によって異なるとは思いますが、おそらくEX-AR3ですね。

小林:「そのお値段で、こんなにいい音?」って、すごくビックリしたんですね。プロ仕様のスタジオにあるような、すごくいい音がするものって、とてもじゃないけど普通の人には手が届かなかったりするじゃないですか。あまりにも非現実的というか、「それだけ高ければ、いい音が出て当たり前じゃないか?」って思っちゃうんですけど。

――オーディオシステムで音楽を聴く際に、いい音かそうでないかが気になるのは、どんな時ですか?

小林:きっとミュージシャンの方って皆さん、ミックスダウンとかマスタリングとか、音のバランスをしっかりされているじゃないですか。それがちゃんと出てないように感じられる時ですね。「多分、こうではないんじゃないかな?」と思うような、何かが極端に聴こえないとか抜けてない時に、ミュージシャンがちょっと気の毒に思えてしまうというか。わざとやってる場合は分かるじゃないですか。きっとこれはわざとじゃなくて、スピーカーの特性で聴こえてないなっていう。その逆で、全部がいいバランスで聴こえている時は、すごくいいスピーカーだなと。聴く音楽にもよると思うんですけど、特に私がやってる音楽は、サックスというとてもアコースティックな楽器なので。そういう生モノというか、生の感じが出ているかどうか、どういう風に再生されているかが、サックス・プレイヤーとしてすごく気になる所です。

――ビクターは、アーティストの創るオリジナル・マスターテープの音を忠実にリスナーに届けるという“原音探究”を理念に掲げてますが、ウッドコーン以外のスピーカーで“原音”とのギャップを感じる機会があったんですね。

小林:そうですね。色んなスピーカーで聴くのがいいと言われて、車の中に持っていったり、誰かのお家にお邪魔した時に自分のCDを掛けてみたり。そうすると、当たり前ですけど全部違うんですよね。

――実際のレコーディング過程でも、トラックダウンやマスタリングの際に一般家庭用のラジカセでも確認しますが、レコーディングスタジオの音響設備と一般の人が耳にする環境とは違いますからね。

小林:スタジオで聴かれる方なんて、ほんの一部じゃないですか。ミュージシャンが、ミックスダウンとかマスタリングとかで、ものすごくいいスピーカーで聴けるという。それ以外は、皆さんご家庭のリビングでとか車に乗ってというのが多いと思うので。お尻まで響いて鳴ってくるようなスピーカーから、小さいスピーカー、ラジカセに切り替えて聴いた時って、一気にガッカリしてしまうことの方が多いんですけど、ウッドコーンはガッカリしなかったんですよね。そのまま小規模になっただけで、クオリティが全然変わらないことにもビックリしました。「大丈夫だ、自分の音はすごくいい音で再生されている」という、不思議な安心感があったんです。本当にいい音を、いいバランスで、いい音質でお届けできるスピーカーがあると、すごく嬉しいですね。

――小林さんは普段、ご家庭ではどんなオーディオシステムで音楽を聴いているんですか?

小林:私は、高校2年でサックスを始めたんですけど、その時に父が少しでも良いスピーカーで聴いた方がいいんじゃないか?ということで、ちょっとお高いものなんですが買ってくれたんです。それはかなり低音が出るので、そういうのもあって私は個人的に低音がすごく好きで。自分が音楽をやっていても、ついついベース・ドラムを聴いてしまうんです。

――EX-AR3は9cm、EX-AK1は8.5cmですけど、コンパクトなボディに似合わず、かなり低音が出るんですよね。

小林:しっかり出てましたね。