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2026年9月15日、政府は「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」を閣議決定しました。政府は2027年4月から2年間、飲食料品にかかる消費税率を1%に引き下げる方向を示しています。さらに、2027年度には所得に連動した給付を組み合わせ、2029年度からは所得に連動したきめ細かな給付を本格導入する方針です。8月5日の基本方針から一歩進み、制度の具体像が示されるなか、実際に食料品の価格や事業者の現場はどう変わるのでしょうか。9月に緊急出版された『食料品消費税1% 減税×給付付き税額控除の真実』の著者、国際課税研究所首席研究員・矢内一好氏に話を聞きました。

「1%」まで具体化したいま、なぜ食料品の消費税が注目されるのか?

--今回、飲食料品の消費税率を1%に引き下げる方針が具体化しました。まず、この政策をどう捉えればよいのでしょうか。

矢内先生(以下、矢内):

物価高が長期化するなか、食料品への負担をどう軽減するのかは、多くの人にとって身近な問題です。

これまで「食料品の消費税をゼロにする」という議論が注目されてきましたが、政府が示したのは、2027年4月から2年間、飲食料品の税率を1%に引き下げるという案です。

9月15日に大綱が閣議決定されたことで、議論は「消費税を下げるかどうか」という段階から、実際にどのような仕組みで実施するのかという段階に移ったといえます。

ただし、「1%になる」という税率だけを見ていると、今回の政策の全体像を見誤る可能性があります。

「8%→1%」でも、価格がそのまま7%下がるわけではない

--消費者にとっては、やはり「食品が安くなる」という点が気になります。

矢内:

税率が8%から1%になれば、消費税負担そのものは軽くなります。ただ、それがそのまま店頭価格の7%の値下げにつながるとは限りません。

食品価格には、原材料費、エネルギー費、物流費、人件費など、さまざまな要素が含まれています。

たとえば、税率が引き下げられる一方で、原材料費や人件費などが上昇すれば、消費者が感じる値下げ幅は小さくなる可能性があります。

したがって、今回の政策を評価する際には、税率が何%下がるかだけではなく、実際の販売価格がどう動くのかを見る必要があります。

事業者にとっては「税率変更」への対応が必要になる

--消費者だけでなく、事業者側にも影響がありますね。

矢内:

税率を下げること自体は数字だけ見れば簡単ですが、実際の現場ではそうではありません。

小売店などでは、商品の税率を管理し、レジやPOSシステム、会計処理、価格表示などを変更する必要があります。商品数が多い事業者ほど、対応には手間がかかります。

特に中小事業者にとっては、税率変更に伴うシステム改修や事務負担は無視できません。

国税庁が9月15日に「消費税率引下げ特設サイト」を開設し、リーフレットやQ&Aだけでなく、レジ・システム開発事業者向けの情報も掲載したことは、こうした実務面を象徴しています。

減税というと、消費者側のメリットだけに目が向きます。しかし、制度を実際に動かすためには、販売する側の準備も必要なのです。

「1%」の先にある「所得に連動した給付」

--今回の「1%」は、最終的な制度なのでしょうか?

矢内:

そこが今回の議論で非常に重要なところです。

大綱では、2027年4月からの飲食料品の消費税率1%への引き下げとともに、2027年度には「就業者負担軽減支援金」を導入し、その後、2029年度から「所得に連動したきめ細かな給付」を本格導入する方向が示されています。

つまり、1%への引き下げだけを見てはいけません。今回の政策は、その先にある所得に応じた給付制度への移行も含めて考える必要があります。

「減税」と「給付」は、同じ負担軽減でも仕組みが違う

--減税と所得に応じた給付では、何が違うのでしょうか。

矢内:

減税と給付には、それぞれ異なる仕組みがあります。

食料品の税率を下げれば、基本的には幅広い消費者がその恩恵を受けます。一方、所得に応じた給付制度では、所得などの条件に応じて支援の大きさを変えることができます。

重要なのは、どちらが優れていると決めつけることではなく、何を目的とした政策なのかを明確にすることです。

物価高への緊急対応なのか、低所得層への所得再分配なのか、それとも働き控えなどの問題への対応なのか。目的が違えば、制度の設計も変わってきます。

「1%」で終わらない…今後の焦点は?

--今回の「1%」をめぐって、今後注目すべき点は?

矢内:

まずは法案の内容と国会での議論です。9月15日に大綱が示されましたが、実際の制度として導入するためには、法案の提出、審議、可決・成立が必要です。

そのうえで、実施される場合には、消費者が実際にどの程度価格低下を実感できるのか、事業者の事務負担がどの程度になるのか、減収となる税財源をどう扱うのかが重要になります。

さらに、その後に予定されている所得に連動した給付制度を、どのような仕組みにするのかも大きな論点です。

食料品消費税を1%にするという話だけを見ると、非常に単純な政策に見えます。しかし実際には、価格、事業者の実務、税収、所得再分配など、複数の問題が関係しています。

今回の政策は、単なる「食料品の減税」にとどまらず、税によって負担を広く軽減するのか、それとも所得に応じて給付するのかという、今後の税制・社会保障のあり方を考えるきっかけにもなります。

「1%」という数字だけでなく、その先にどのような制度をつくろうとしているのか。そこまで見ておくことが重要だと思います。