楽天モバイルが対面で「災害用伝言板」を伝える理由、「つながるための選択肢」を災害時に
●災害時の通信復旧を全社横断で調整
--BCP管理本部では、どのような業務を担当しているのでしょうか。
柳澤グループ長(以下、敬称略) 災害や通信障害が発生したとき、通信の復旧や災害支援に関する対応を社内横断で取りまとめています。例えば、災害で通話やデータ通信が利用できなくなった場合には、基地局の復旧を担当するチームやネットワーク部門、店舗スタッフなど、社内のさまざまな部門と連携して対応します。災害関連の問い合わせなどの窓口として、全体を調整する役割も担っています。
--災害時には、現地に入って対応するケースもあるのでしょうか。
柳澤 はい。避難所では無料Wi-Fiの開設や、スマートフォンなどの充電サービスといった支援を行っています。また、停電時の給電支援や可搬型基地局の搬入によって通信エリアを確保するなど、通信インフラを復旧させるための活動もあります。
●年間100回以上の防災イベントに参加
--LINEをはじめとするSNSなど、現在はさまざまな連絡手段があります。災害用伝言板を知っておく意味はありますか。
柳澤 SNSやメッセージアプリなど、普段使っている連絡手段を否定するものではありません。置かれている状況に応じて使い分けることが重要です。災害用伝言板は、通信事業者が仕様を統一して連携しているので、他社の災害用伝言板も含めて安否情報を検索できる仕組みになっています。通信が混雑しているときなどに安否を伝えるための「選択肢の一つ」として覚えておいていただきたいと考えています。
--その災害用伝言板を広げるために、力を入れていることはありますか。
柳澤 対面で直接お伝えする活動を重視しています。全国各地で自治体が実施する防災訓練や防災イベントなどに年間100回以上は参加しています。情報があふれている中、情報を発信するだけではなかなか記憶に残りません。そこで、社員や各地域のリエゾンが実際に住民の皆さんと向き合い、災害用伝言板の使い方や災害時の通信について直接説明しています。
--イベントでは、どのようなことを伝えているのでしょうか。
柳澤 長時間にわたってたくさんの情報をお伝えするのではなく、「これだけは覚えてほしい」とポイントに絞るようにしています。例えば、通信が混雑したときにも安否を伝える手段があること。また、自分が登録方法を知っているだけではなく、その安否情報を検索するご家族にも災害用伝言板を知っていただく必要があることなどです。
--実際に説明を聞いた人の反応はいかがですか。
柳澤 真剣に耳を傾けてくださる方が多いです。全国で住民の皆さんと接する中で得られた反応やフィードバックは社内などで共有し、より伝わりやすい説明ができるよう改善を重ねています。
●自治体や自衛隊との橋渡し役として災害現場を支える「リエゾン」
--リエゾンはどのような役割を担っているのでしょうか。
柳澤 リエゾンは情報連絡員として、平時から自治体や行政、自衛隊などとの関係づくりを行っています。災害が発生した際には各都道府県庁の災害対策本部に参集し、自治体や自衛隊、総務省、ほかの通信事業者などとの連絡調整を行います。また、支援機関にスマートフォンやタブレット端末などを貸し出す業務も担っています。
--平時から自治体などと関係をつくっておくことが重要なのですね。
柳澤 そうですね。災害時だけではなく、平時から自治体などとの「顔の見える関係」をつくっています。地域での防災訓練やイベントへの参加も、そうした活動の一つです。
●最優先は「通信そのものを確保すること」
--今後、災害用伝言板そのものを大きく進化させていくのでしょうか。
柳澤 災害用伝言板は通信事業者各社が連携しているサービスですので、基本仕様やUIを1社だけで大きく変えてしまえば、災害が起きたときに利用者が使いづらくなる可能性があります。そのため、足並みをそろえて登録や検索といった共通性を維持しながら、必要な調整や見直しを行っていくことが重要だと考えています。
--では、災害対策として何を強化していくのでしょうか。
柳澤 災害用伝言板に機能を追加していくこと以前に、まず目指すべきなのは災害時でも通常通り電話やデータ通信がつながる環境をつくることです。「JAPANローミング」や「00000JAPAN」、現地での給電支援、可搬型基地局など、複数の方法で通信環境を維持、復旧させていきます。まずは電話やデータ通信そのものを使えるようにする。それでも通信が一時的に混雑したり、制限されたりする状況では、災害用伝言板という別の選択肢がある。そうした複数の手段を用意しておくことが、災害時の安心につながります。

