ずさんな現場浮き彫り…東武4人死亡事故「意見を述べると怒られる」「余計なことを言うともめ事になる」

写真拡大

 栃木県鹿沼市の東武日光線新鹿沼駅構内で、除草作業中の作業員4人が特急列車と接触して死亡した事故で、東武鉄道は30日、事故原因などを分析した中間報告書を国土交通省に提出した。

 報告書は、現場責任者の作業指揮者が作業員の退避先や列車の見張り場所を指示していなかったと指摘。事故当日、指揮権限のない上司が現場で指示を出し、指揮系統の混乱を招いていたことを明らかにした。(青木聡志、小池和樹)

「真摯に受け止め」

 「4人が亡くなる痛ましい事故を発生させたことを真摯(しんし)に受け止めている」。30日、国交省に報告書を提出した東武鉄道の亀山昇司運輸部長は報道陣を前に硬い表情を浮かべた。

 事故は8月20日午前10時45分頃に発生。新鹿沼駅の上り線で除草作業をしていた7人のうち、線路上に残っていた4人が進入してきた列車と接触して死亡した。別の3人はホーム上などに退避した。

 報告書によると、7人は東武建設と下請けの建設会社の従業員で、警備会社に所属する3人が列車の見張り役を務めていた。

 このうち東武建設社員の作業指揮者は、東武鉄道の規定に反し、作業員らに見張り場所の指定や避難先を確実に共有することなどを怠った。ホーム上から列車の接近を作業員に知らせる「列車見張り員」は、事故直前までほかの作業員とともに線路内に立ち入っていた。

上司が代わりに

 死亡した作業員4人のうち1人は作業指揮者の上司だった。除草作業全体を統括する「現場代理人」という立場で除草作業の経験も豊富だったが、この日は非番で、現場に来る予定はなかった。ところが、現場代理人は見張り員などへの指示も出し、除草作業の経験がなかった作業指揮者は事故当時、記録用の写真撮影をしていた。作業指揮者は会社の調べに「(現場代理人に)任せれば安心と考えていた」と説明しているという。

 列車見張り員は事故直前、現場代理人に「列車到着3分前」と伝えたが、現場代理人のジェスチャーを作業続行と受け止め、除草作業は中断されなかった。

 列車見張り員は疑問に思ったが、「意見を述べると怒られると思った」と説明している。別の作業員は「余計なことを言うともめ事になるので、遠慮していた」と話しているという。

警察が捜査

 現場から離れた場所で列車の接近を最初に確認する「中継見張り員」にも具体的な見張り場所や任務開始などが指示されず、監視機能が十分に働いていなかった。

 このため、中継見張り員が列車の接近を現場見張り員に速やかに伝えることができず、線路上に残っていた作業員らが列車と接触した。

 報告書では、安全管理のルールが守られなかっただけでなく、現場で安全に関する疑問を感じた作業員が声を上げられる環境が整っていなかったことも事故につながった可能性があるとしている。

 東武鉄道は、鉄道の保守作業は夜間を中心に実施するが、除草など軽微な作業は日中に行うこともあるとしている。

 東武鉄道は組織の内部統制などの問題を検証する第三者委員会を設置する。事故を巡っては、栃木県警が業務上過失致死容疑で捜査を進めているほか、運輸安全委員会も事故原因を調べている。