台風25号で被災の千葉県、盛り土が崩落し被害拡大…無許可造成や行政代執行検討中など4か所
台風25号で被災した千葉県では、建設残土などの盛り土が崩落して住宅や川に流れ込み、被害を拡大させている。
29日現在、崩落は4か所で発生したことが県への取材で判明し、盛土規制法に基づく許可を得ずに造成された盛り土や、行政代執行による撤去を検討中の盛り土もあった。住民らは「もっと早く対処してくれたら、被害は出なかったかもしれない」と訴える。(千葉支局 石本大河、戸田光法)
代執行 間に合わず
「水が引いてくれないと何も始まらない」。入り口の道路が約120メートルにわたって冠水し、孤立状態が続く同県酒々井(しすい)町馬橋の「開運団地」の自宅を離れ、避難所の町公民館で生活する鈴木秀俊さん(63)は困り果てている。
冠水は、団地の横を流れる馬橋川付近の盛り土が崩れて流路を塞ぎ、あふれた水が流れ込んでいるために起きた。町によると、同様の被害は2016年9月以降、複数回発生している。馬橋川には盛土規制法施行前から複数の盛り土があり、町は土を搬入した複数の業者に撤去を求めてきたが、資金難を理由に応じてもらえていないという。
そのため今年2月、町は一部の盛り土を撤去する行政代執行に着手。今回崩落した盛り土も行政代執行を検討していた。町公民館に避難中の70歳代女性は「被害が起こる前に何とかしてほしかった」とこぼす。
低地にある団地には今もあふれた水が流れ込み、水深1メートル以上の場所もある。町はポンプ車計7台で排水作業を進めているが、冠水が解消しなければ盛り土の崩落地点に重機を入れられず、土砂の撤去が遅れる悪循環が生じている。
撤去指導 従わず
千葉県内は盛土規制法に基づき25年から全域が規制区域となっている。造成には行政の許可が必要だが、袖ケ浦市大竹では規制開始以降に無許可で盛り土が造成され、崩落した土砂は市道や水田に流れ込んだ。
県や袖ケ浦市は昨年7月以降、盛り土の撤去を求める指導を業者に複数回行ってきたが、業者は対応しなかった。市廃棄物対策課の担当者は「相手が従わなければどうすることもできない」と語る。
一方、規制開始前に造成された袖ケ浦市川原井の盛り土は、21年の熱海土石流災害を受けて全国で実施された「盛り土総点検」で「災害防止措置が未実施」と指摘された。しかし、土砂の撤去は行われず、今回は崩落した土砂が近くの民家1階部分に流入。住人が2階に逃れる事態となった。
業者任せ 手遅れに
総点検を巡っては総務省が今年、災害防止措置が不十分とされた全国513か所のうち、半数で対策が未実施だと指摘するなど、危険な盛り土が全国で多数残されている。土砂災害に詳しい群馬大の若井明彦教授(地盤工学)は「土地所有者や造成した業者に任せていては手遅れになる。危険な場所は行政代執行で撤去するべきだ。すぐにできない場所でも土のうを積むなど被害を緩和する対処もできる」と指摘している。
◇
総務省は29日、今月発生した台風25号で被害を受けた千葉県内の42市町村に対して、11月分の普通交付税の一部にあたる142億5500万円を繰り上げて交付すると発表した。交付日は30日。
◆盛土規制法=正式名称は「宅地造成及び特定盛土等規制法」。2021年7月に起きた静岡県熱海市の土石流災害を受け、旧宅地造成等規制法を改正して23年5月に施行された。宅地のほか、農地や森林なども規制区域の指定対象に加え、区域内で一定規模以上の盛り土を造成する際は自治体の許可が必要となった。違反業者への罰金は最大3億円。
