純アルコール量で「ストロング系チューハイ」が最多…アルコール使用障害の患者354人、1日平均「110g」の飲酒実態を医師が解説

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「飲みすぎていると分かっていても、なかなかお酒を減らせない」と感じたことはありませんか? 神奈川・久里浜医療センターの研究員らは、全国15の依存症専門医療機関で治療を受けたアルコール使用障害(AUD/飲酒を自分でコントロールすることが難しくなり、生活に支障が出る状態)の患者さん354人を調査しました。その結果、約8割が重度のAUDに該当し、約45%に抑うつ症状、約74%に睡眠の質の悪さが見られました。また、飲酒問題が始まってから治療を受けるまでには約5年の隔たりがあると報告されています。この内容について稲川先生に伺いました。

監修医師:
稲川 優多(医師)

自治医科大学勤務。医学博士、公認心理師。日本精神神経学会精神科専門医・指導医・認知症診療医、日本老年精神医学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、精神保健指定医。

研究グループが発表した内容とは?

編集部

久里浜医療センターの研究員らが発表した内容を教えてください。

稲川先生

久里浜医療センターの研究員らは、日本でアルコール使用障害の治療を受ける人を対象に、臨床的な特徴や飲酒パターンを調べました。全国15の依存症専門医療機関で治療を受けた354人について治療開始時点のデータを分析したところ、約8割が重度のAUDに該当し、飲酒問題が始まってから治療を受けるまでには約5年の隔たりがあると報告されています。また、質問票で評価できた人のうち、約45%に抑うつ症状(気分の落ち込みなど)が見られ、約74%は睡眠の質が悪いと回答しました。治療開始前90日間の飲酒状況を尋ねた調査では、1日に摂取する純アルコール量は平均110.4gでした。酒類別に比較すると、平均純アルコール摂取量が最も多かったのはアルコール度数9%の「ストロング系チューハイ」でした。AUDの治療では、飲酒量だけでなく、心身の状態も含めて早い段階から総合的に支援することが重要と考えられます。

AUDとアルコール依存症の違いとは?

編集部

今回のテーマに関連するAUDとアルコール依存症の違いについて教えてください。

稲川先生

AUDは、DSM-5(米国精神医学会が定めた精神疾患の診断基準)において、従来の「アルコール乱用」と「アルコール依存」を統合した診断名です。該当する症状の数によって、軽度・中等度・重度に分類されます。つまりAUDは、アルコール依存症だけでなく、飲酒によるさまざまな問題を含めた幅広い概念です。具体的には、お酒を飲みすぎることで自身の飲酒をコントロールすることが難しくなり、心身や日常生活にさまざまな問題が生じる状態です。強い飲酒欲求(渇望)や、以前と同じ量では酔いにくくなる「耐性」、お酒を飲まないと手の震えや不眠などが起こる「離脱症状」などが見られることがあります。飲酒を自分で減らせない、生活に影響が出ていると感じたら、早めに専門機関へ相談しましょう。

内容への受け止めは?

編集部

久里浜医療センターの研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

稲川先生

AUDは、本人の意志の強さだけで解決する問題ではなく、治療や支援が大切な精神疾患です。本人の健康問題のみならず、社会生活においても悪影響を及ぼすことが多く、その影響から孤立が深まり、結果的に飲酒量が増大するという悪循環も起こります。
本研究では、酒類別の平均純アルコール摂取量が最も多かったのは、度数9%・500mL缶のチューハイでした。こうした高アルコール飲料の飲みすぎは、臨床でも問題になります。治療では断酒を目指すことに加え、患者さんの状態や希望に応じて、医師と相談しながら減酒から始める場合もあります。私たちはAUDに陥ったことを責めるようなことはしません。まずは早期に専門家と相談の上、治療を開始してほしいと願っています。

編集部まとめ

AUDは、単にお酒をたくさん飲むことではなく、飲酒を自分でコントロールできなくなり、健康や仕事、家庭生活などに影響が生じる状態です。飲酒量を減らせない、飲酒による問題が続いていると感じたら、一人で抱え込まず、早めに専門機関へ相談しましょう。