【アジア大会】山下一貴 男子マラソン日本勢2大会ぶり金 18年V先輩・井上から強烈助言「殺しにいけ」
◇愛知・名古屋アジア大会第8日(2026年9月26日)
男子マラソンで競技場に戻ってきた山下は、何度も後ろを確認した。近くにいると思い込んでいた他の選手の姿は見えない。「自分が見落としてるのかと思って。何回も振り返って、ちょっと安心して」。2位に48秒差をつける独走でフィニッシュ。帽子を深くかぶり、周囲から見えづらかった表情にトレードマークのイチタカスマイルが広がった。
狙い通りの展開だった。31キロ過ぎのアップダウンで仕掛け、先頭は三つ巴の争い。一度は3番手に後退したものの、淡々とペースを刻んだ。35キロ過ぎで再びトップに浮上。「自分はラストがないのでいくしかない」と強気に押し切った。
日本勢がマラソンを制すのは18年ジャカルタ大会の井上大仁以来。三菱重工の先輩に続いた。アジアの猛者が集う今回は独特な雰囲気が漂う。大会前、井上には「言葉がアレだけど、殺しにいっているやつと“殺すぞ”と脅しているやつは全然気持ちが違う。殺しにいけ」と強烈すぎる助言を授かった。攻めの走りで期待に応え「心底ホッとした」と感慨を込めた。
23年東京マラソンで日本歴代6位となる2時間5分51秒を記録。その後は左太腿裏に張りが出て不調の時期が続いたが、自国開催で復活を印象づけた。「ここの金メダルを一つのステップとしてロスに向かうと言われていた。本当に良かった」。来年10月の28年ロサンゼルス五輪代表選考会(MGC)の舞台は名古屋。勝負に徹したレースを制し、最高の予行演習となった。
◇山下 一貴(やました・いちたか)1997年(平9)7月29日生まれ、長崎市出身の29歳。長崎・瓊浦高から駒大に進学。箱根駅伝は2年時から3年連続でエース区間の2区を走った。卒業後は三菱重工マラソン部に所属。23年の世界選手権ブダペスト大会は11位。座右の銘は「笑顔」。1メートル72、55キロ。

