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国税庁は9月15日、「消費税率引き下げ特設サイト」を開設した。2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品にかかる消費税率を現在の8%から1%へ引き下げる案について、リーフレットやパンフレット、Q&A、説明動画などを公開している。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

国税庁が「消費税率引き下げ特設サイト」を開設

食料品消費税の引き下げをめぐっては、すでに8月5日の臨時閣議で「2027年4月から2年間、食料品の税率を8%から1%に引き下げる」という基本方針が決定されており、今回の特設サイト開設は、その内容を具体化した「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」の9月15日閣議決定を受けたものだ。

国税庁は、制度の詳細をできる限り早急に公表して広報活動を開始するとの方針を受け、飲食料品の消費税率を2年間引き下げる改正案について、リーフレット、パンフレット、Q&A、説明動画などを掲載している。

さらに、レジやシステムを開発する事業者向けの情報も用意されている。今回の税率変更が消費者だけでなく、商品を販売する側のシステムや事務処理にも大きな影響を与えるためである。

もっとも、国税庁は特設サイト上で、掲載内容について「今後、法案が国会に提出され、審議を経た上で可決・成立した場合のもの」と明記している。したがって、現段階では「決定済みの税率変更」ではなく、成立を前提とした制度案として見る必要がある。

2027年4月から「8%→1%」に

現在、消費税率は原則10%であるが、酒類と外食を除く飲食料品などには軽減税率が適用され、8%となっている。

今回の案では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品について、この税率を1%に引き下げる。

1%の内訳は、国の消費税が0.78%、地方消費税が0.22%となる。

したがって、すべての商品やサービスが1%になるわけではない。飲食料品以外の商品やサービスについては原則として10%が維持され、定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞については8%が維持される。また、酒類も今回の1%への引き下げの対象外であり、10%のままとなる。

消費者にとっては、「食品は1%、それ以外は原則10%」という新たな税率区分を意識することになる。

テイクアウトは1%、店内飲食は10%

今回の制度で、消費者が特に注意したいのが「外食」の扱いである。

たとえば、飲食店で商品をテイクアウトする場合は飲食料品の販売となるため、1%の対象となる。一方、同じ店で購入した商品を店内のテーブルや椅子などを利用して飲食する場合は「外食」に該当し、10%となる。

コンビニエンスストアの弁当なども同様で、持ち帰って食べる場合は1%、店内のイートインスペースを利用して食べる場合は10%となる。

出前や宅配についても、単に飲食料品を届けるだけであれば1%の対象となる。

つまり、同じ商品であっても、「どこで、どのように提供されるのか」によって税率が変わることになる。事業者側では、商品そのものだけでなく、提供時点における顧客の意思などを踏まえて税率を判定する必要がある。

酒類や「一体資産」はどうなる?

酒類は飲食料品であっても今回の1%への引き下げの対象外であり、10%となる。

また、食品と食品以外の商品を組み合わせた「一体資産」についても、取り扱いに注意が必要である。

たとえば、お菓子と玩具をセットにした商品や、紅茶とティーカップをセットにした商品などがこれに該当する。

一体資産については、税抜価格が1万円以下で、食品の価額が全体の3分の2以上を占める場合には、全体を飲食料品として扱うことができる。これに該当すれば1%の対象となるが、条件を満たさなければ標準税率10%となる。

単純に「食品が入っているセットだから1%」というわけではないので、こうした商品を扱う事業者は判定方法を確認しておく必要がある。

「4月1日から全部1%」ではない…経過措置にも注意

税率が変更されるのは2027年4月1日からだが、すべての取引がこの日を境に機械的に1%へ切り替わるわけではない。

一定の取引については、取引の内容や契約、商品の販売時期などに応じて経過措置が設けられる。通信販売などについても、一定の条件を満たす場合には従来の税率が適用されるケースがある。

そのため、定期購入や通信販売などを利用している消費者は、2027年春以降、販売事業者から届く案内を確認することが重要になる。

事業者側にとっても、単純に「4月1日からレジの税率を1%にする」だけでは済まない。契約時期や取引時期を確認し、どの税率を適用するのかを判断する必要がある。

事業者は「レジ」「インボイス」「経理」の対応が必要

今回の税率変更で、特に影響が大きいのが飲食料品を扱う事業者である。

現在も10%と8%の複数税率が存在しているが、飲食料品について1%という新しい税率が加わることになる。事業者は、レジや販売管理システム、会計ソフトなどについて、1%に対応できるよう準備しなければならない。

インボイス制度についても、税率ごとに取引を区分して処理する必要がある。請求書や帳簿、消費税の申告についても、1%の取引を正しく区分して計算することが求められる。

国税庁が今回、レジ・システム開発事業者向けの情報を特設サイトに掲載したのも、こうした実務上の対応が必要になるためである。

食品を扱う事業者では「還付」が生じるケースも

消費税は、基本的に売上にかかる消費税額から、仕入れにかかった消費税額を差し引いて納付税額を計算する。

飲食料品を販売する事業者の場合、売上側の税率が1%まで下がる一方、仕入れのなかには10%の税率が適用されるものもある。そのため、取引の内容によっては、仕入れにかかった消費税額が売上にかかる消費税額を上回り、還付が生じるケースも考えられる。

もっとも、飲食料品を扱っていれば必ず還付を受けられるというわけではなく、課税売上や仕入れの内容、仕入税額控除の計算などによって結果は異なる。

今回の税率引き下げでは、このような事業者の消費税計算にも配慮し、飲食料品の譲渡を行う事業者を対象として、簡易課税制度の計算方法について特例が設けられる予定である。簡易課税事業者が飲食料品を販売する場合、その部分に係る仕入控除税額を「売上税額と同額」とする特例で、実質的に納付税額が発生しない扱いとなる。

「3割特例」も…小規模事業者への対応も盛り込まれる

今回の税率変更に関連して、インボイス制度を機に課税事業者となった小規模な個人事業者には、「3割特例」も関係してくる。これは、インボイス発行事業者の登録を受けたことで免税事業者から課税事業者となった個人事業者について、2027年分と2028年分の消費税の確定申告で、納付税額を売上税額の3割とすることができる制度である。

従来の「2割特例」は2026年9月30日までの日の属する課税期間が対象だが、一定の個人事業者については、その後の2027年分・2028年分に「3割特例」が設けられている。

ただし、これは今回の飲食料品1%への引き下げだけを理由として設けられる制度ではなく、令和8年度税制改正で決まったインボイス制度に関連した別の経過措置である。対象となる事業者は要件を確認する必要がある。

課税事業者になる場合の「届出」にも特例

さらに、飲食料品を販売する事業者については、課税事業者選択届出書の提出時期にも特例が設けられる予定である。

免税事業者が課税事業者になることを選択する場合、通常は一定の期限までに届出を行う必要がある。しかし、今回の税率引き下げに伴い、飲食料品の譲渡を行う事業者を対象として、この届出時期について特例が設けられる。

具体的には、2027年4月1日の属する課税期間中に「課税事業者選択届出書」や「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出した場合、その課税期間の初日の前日に提出したものとみなされ、また簡易課税の2年継続要件(いわゆる2年縛り)も免除される。

これは、売上にかかる消費税が1%に下がることで、仕入税額控除との関係から課税事業者になることを検討する事業者が出てくることも想定したものといえる。

ただし、課税事業者を選択すると、その後の納税義務などにも影響するため、「還付を受けられるかもしれないから」といった理由だけで判断するのではなく、自社の取引状況を踏まえて検討する必要がある。

中間申告の計算方法にも特例

消費税には、一定の事業者について年1回の確定申告だけでなく、中間申告を行う仕組みがある。

今回の飲食料品の税率引き下げに伴って、飲食料品の譲渡を行う事業者については、中間申告の計算方法にも特例が設けられる予定だ。

2027年4月以後に開始する中間申告対象期間について、直前課税期間の飲食料品に係る売上げ・仕入れに引下げ後の税率(1%)が適用されたものと仮定して再計算した消費税額に基づく、仮決算による中間申告書を提出できる。

また、2029年4月の税率復帰時にも、同様に直前課税期間の売上げ・仕入れに8%が適用されたものとして中間申告税額を計算できる特例が設けられる。今回の改正は消費者が店頭で支払う税額だけの問題ではない。事業者にとっては、売上時の税率判定から帳簿、インボイス、消費税の申告、中間申告まで、幅広い実務に影響することになる。

値札やレジも変更に…事業者は早めの準備が必要

事業者にとっては、税務処理だけでなく、消費者に示す価格表示への対応も必要となる。

飲食料品の価格が1%の税率を前提としたものになるため、値札やメニュー、ECサイトの商品価格などを変更する必要が生じる。レジや会計システムについても、1%の税率を正しく処理できるよう改修が必要となる。

なお、値札やシステムの一斉切り替えが難しい事業者への配慮として、総額表示義務についても特例が設けられる。税率変更の前後それぞれ最大2カ月間は、旧税率(引下げ時は8%、復帰時は1%)に基づく総額表示を継続してよいとされている。

さらに、2029年3月31日で2年間の措置が終了すれば、飲食料品の税率は再び8%に戻る予定である。事業者からすれば、2027年の税率変更に対応した後、2年後には再び税率を変更する可能性がある。システム改修や価格表示の変更を一度行えば終わりという制度ではない。

2年間の引き下げ…2029年4月には8%に戻る予定

今回の飲食料品に対する1%への引き下げは、恒久的な税率変更ではなく、2年間の臨時措置として示されている。

法案が成立した場合、2027年4月1日から2029年3月31日まで飲食料品の税率は1%となり、2029年4月1日からは現在の8%に戻る予定だ。

消費者にとっては、食品を購入する際の負担が変わるだけでなく、外食や酒類などには1%が適用されないことを理解しておく必要がある。一方、事業者にとっては、レジや会計システム、インボイス、価格表示、消費税の申告など、対応すべき項目が多岐にわたる。

国税庁は今後も特設サイトに最新情報を掲載するとしている。今回の制度はまだ法案成立前であるため、実際に制度がスタートするまでの間に、詳細な取り扱いが追加・変更される可能性もある。

「食料品は1%になる」という消費者側のメリットだけでなく、その裏側でどのような事務負担や税務上の対応が生じるのか。今後、制度の具体化に伴って確認していく必要がある。

今回の消費減税決定を受け、9月に『食料品消費税1% 減税×給付付き税額控除の真実』を緊急出版した矢内一好氏は、取材に対し、次のような見解を示した。

① 令和9年4月から実施されるため、法案成立を待っていては混乱が生じる恐れがある。したがって実務では、前倒しの準備が必要だ。

② 本稿では、外食事業者等を取り上げているが、農漁業従事者も改正の影響を受ける。これらの事業者に対して、政府がどのような援助をするのかが、財源論よりも身近な問題である。

③ 2年間の減税期間終了後、税率が1%から8%に戻る。この2年間に1%対応の取引形態に変えた場合、8%に戻ると、再び8%対応の体制に戻す必要がある。この戻りによって損失が生じた場合、政府から何らかの手当があるかどうかは、現在のところ不明である。いずれにせよ、1%対象となる事業者は、税法改正に翻弄されることになる。

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班