《ゾンビたばこ売人裁判詳報》「羽月さんと行っていた東京のバーで…」「広島カープ寮に『野球カード』品名で送った」滝口涼介被告が法廷で明かした「1本2万円のエトミデート」やり取りの経緯
プロ野球・広島カープをめぐる"ゾンビたばこ"騒動。昨年11月、当時広島カープの選手だった羽月隆太郎氏(26)が指定薬物エトミデートを使用・所持したとして起訴されて以降、その火種は燻り続けている。今年7月には広島県警がカープの矢野雅哉内野手(27)と前川誠太内野手(23)の居宅などに家宅捜索に入ったことを発表したことなどもあり、球団の対応は予断を許さない状況だ。
【写真を見る】カープのチームマークを塗りつぶした写真をアップした羽月被告のものと見られる現在のXアカウント。高校卒業後、入団したばかりの羽月被告
そんななか、羽月氏に"ゾンビたばこ"と呼ばれる指定薬物エトミデートを譲り渡すなどしたとして医薬品医療機器法違反の罪に問われた"売人"、滝口涼介被告(38)の裁判が9月16日、広島地裁で行われた。佐藤智彦裁判官は拘禁刑2年・執行猶予4年の判決を言い渡している。
週刊誌でカープの現役選手との交流写真が報じられるなど、騒動の中心にいた滝口被告。法廷では、選手との関係の詳細が明らかにされた──ライターの片岡健氏がレポートする。【前後編の前編】
青の"おしゃれスーツ"で入廷
傍聴席が満席となった広島地裁の第304号法廷。滝口被告は午前10時30分の開廷時刻直前、関係人入口から法廷に現れると、傍聴席に向かって、かるく頭を下げた。
ゆうに180センチ以上ありそうに見えるほど長身で、サイドベンツが入った青色のスリーピースのスーツに身を包み、長く伸ばした黒い髪を後ろで結んでいる。大きな白いマスクをつけていたが、ファッションに気を遣うタイプのように思えた。
検察官が読み上げた起訴状によると、滝口被告の公訴事実は以下の通りだ。
2025年11月19日、東京都新宿区歌舞伎町の路上で医療などの用途以外に使用するためにエトミデートを所持し、さらに同年11月15日、東京都中央区から医療などの用途以外に供するため、エトミデート在中のレターパックを広島県廿日市市の広島カープ大野寮の羽月氏宛てに発送し授与していた、というものだ。
滝口被告はこれを「間違いありません」と認めた。公訴事実に関する争いはない中、滝口被告への被告人質問が行われ、事件の経緯が詳らかにされた。
滝口被告によると、被告本人がエトミデートを最初に入手したのは「2025年の3月から4月ぐらい」だったという。SNSでつながった外国人に仕事の相談をするために会った際、譲り受けたそうだ。
「最初は『麻酔に近いもので、違法性はない』と言われ、渡されました。受け取った回数は全部で5回から7回くらいです。受け取った量は、少ない時は1回に2本くらい、多い時は1回に15本から20本くらいでした。
エトミデートは純粋にリラックス効果があると言いますか、寝るのにすごく効果があり、最初のうちは自分のために入手していました。値段は、安い時は1本1万2000~3000円でしたが、最後のほうは1本2万円前後でした」
羽月氏の裁判で検察官が読み上げた自白調書によると、羽月氏は夜眠れずに悩んでおり、「飲むと眠れる」という理由でエトミデートを使っていたという。滝口被告も使用目的は同様だったようだ。
また、羽月氏は自白調書で、滝口被告とのエトミデートの売買について、「1本2万2500円から2万5000円で購入していた。費やした金額は全部で100万円ちょっとだと思う」とも供述していた。両者の供述が事実なら、滝口被告は多少の利益が出るような値段で羽月氏にエトミデートを譲渡していたことになる。
カープの寮に届いた「野球カードボックス」と書かれたゾンビたばこ
滝口被告によると、羽月氏に初めてエトミデートを渡したのは、昨年4月のことという。外国人から入手し、ほどなく譲渡したことになる。
「よく羽月さんと一緒に行っていた東京都のバーで、私がエトミデートを使用していたら、羽月さんが興味を持ったので、最初は渡したというか、やってもらった感じです」
エトミデートが指定薬物となり、医療などの用途以外で使うと違法になるように法改正されたのは同年5月。よって、この時点では滝口被告、羽月氏共にエトミデートを使用したことに何ら問題はない。ただ滝口被告によると、「6月か7月くらい」にエトミデートが指定薬物になったと知ったという。その上でなぜ、使い続けたのか。
「数か月は使っていなかったのですが、その後に(エトミデートが)新しい形状になった。味覚などもすべて違ったので、最初は違うものだと思っていました。結局、その後、違法なものだと認識しました」
羽月氏は自白調書において、昨年6月か、7月頃に滝口被告と東京で会食した際、「違法じゃないけど、薬事法(旧称、現在は薬機法)で引っかかるやつだから」「グレーなやつだから大丈夫」と言われ、エトミデートのリキッドを渡されたと供述していた。滝口被告としては、この時期に羽月氏にエトミデートを渡したのは、羽月氏を騙したわけではなく、本心で違法性がないと認識していたと言いたいのかもしれない。
もっとも、11月にレターパックで大野寮の羽月氏宛てにエトミデートを郵送して譲渡した際には、双方が違法性を認識していたようだ。滝口被告はこの時、レターパックの品名の欄に「野球カードボックス」と記載していた。その事情をこう話した。
「羽月さんと話したうえで……内容のところをこうしようという感じになりましたので、このように書いています」
エトミデートを送ることにやましい思いがあるため、「野球カードボックス」と記載したわけだ。
エトミデートの送り先がカープの2軍選手の多くが過ごす大野寮だったことについては、すでに羽月氏の裁判で明らかになっていた。当時、「寮で暮らす他の選手にも使用者がいたのではないか」と憶測を呼んだが、大野寮を送り先としたエトミデートのやりとりは、滝口被告と羽月氏の2人だけのものだったようだ。
滝口被告が羽月氏以外にもエトミデートを渡していた人間はいるのか、いるならそれはカープの選手なのか。この問題に関して、滝口被告は「ございません」と言い切った。しかし検察官は譲渡の可能性について、スマートフォンのやり取りなどからさらに追及した──後編記事で詳報する。
(後編につづく)
◆取材・文/片岡健(ライター)
