50周年を記念して開催中(麻布台ヒルズの公式HPより)

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 アニメ「まんが日本昔ばなし」のオープニング映像が、2種類あるのをご存じだろうか? 「坊や~ 良い子だ ねんねしな」というお馴染みの歌詞に合わせ、竜の背に乗った子供がでんでん太鼓片手に黒い空を行くアニメーションである。実は年始になると、絵柄が変わることがあるのだ。その際、竜に乗った子は烏帽子を被り、音の鳴る鈴を片手に、日の出で黄金色に染まった富士山へと雲海を飛翔。竜は前足に青い玉を持っていた(あらゆる願いを叶えるという「龍珠」とみられる)(1979年1月3日、同番組「お正月大会」より)。

 そんなおめでたい話といえば、今年は同番組の本格レギュラー放送開始から、50周年のメモリアル・イヤー。8月には舞台化され(※1)、現在、東京・麻布台では大規模なポップアップストアが開設されている(※2)。

50周年を記念して開催中(麻布台ヒルズの公式HPより)

 幾度もの再放映を含め、未だ復活を熱望される同番組の魅力を、秘話で振り返りたい(前後編の前編。文中敬称略。肩書き、媒体名、地名等は当時)。

【写真を見る】「あちらでお会いしたら、また一緒に昔話をやりましょうね」…「まんが日本昔ばなし」を演じ続けた偉大な俳優

放送開始のきっかけは、あの首相!

「まんが日本昔ばなし」といえば1980年代、TBS系列にて土曜日の午後7時より毎週2話ずつ放映された30分アニメをご記憶の方が多いだろう。だが、実はこれ以前の1975年の1月から3ヵ月間、テレビ朝日で放映されていた。穴が開いた枠に滑り込んだわけだが、驚くのは当初、放送局からほとんど期待されないコンテンツだったこと。

 企画したのは、作詞家の川内康範の娘、川内彩友美。テレビ制作会社に勤めており、日本の昔話を語り継ぎ、残して行く必要性から同番組を企画した。有名な民話である「笠地蔵」でアニメのパイロット版(試作品)も作り、各放送局に売り込んだが、先ず企画書の段階ではねられた。「暗い」「地味」「真面目過ぎる」、中には「こんなもの、売れるわけない!」と全否定するテレビ関係者もいたという。当時は「宇宙戦艦ヤマト」や「グレートマジンガー」「ゲッターロボ」など、SF&ロボットアニメが全盛だったのだ。そんなある日、ある噂が聞こえてきた。

「今度の首相は、昔話とか、好きかも知れない」

 第66代総理大臣の三木武夫だった。先代の田中角栄が金脈問題で失脚したあと、クリーンさを旗幟に首相に選出。「政治家こそ、清貧であれ」がモットーで、自認の長所は「粘り強い」こと。しかも、孫を可愛がっているという。そこで毎日放送の社長のツテで、パイロット版を見てもらう約束を取り付けた。総理の自宅までプロジェクターを持って出向き、本人と孫の前で、映写機にフィルムをかけ、自ら16ミリを回した。つまり、最初に「まんが日本昔ばなし」を観たのは、三木首相とその孫だったのである。

 見終わると、首相はニッコリ。各方面に推薦状を書いてくれた。結果、駆け込みでの放映開始となったものの、規定の3ヵ月で放送が終了したのは先述の通りだ(なお、放送上の第1話も、この「笠地蔵」と「こぶ取りじいさん」)。

 ところが、いざ終わると、視聴者、主に主婦層から、以下の内容の投書が殺到した。

「子供と安心して観られるアニメを探していた。何とか続けて貰えないだろうか?」

 結果、翌1976年1月より、TBS系列にての復活となったのである(※もともと最初から制作に携わっていた毎日放送が、この時期には同系列にネットチェンジしていた)。

10周年記念で映画化された、あの名作!

 以降はレギュラー放送され、1400話以上の日本の昔話をアニメとして紹介して来た。1980年10月4日には、最高視聴率39.8%を達成(関西地区。内容は「縁持ち狸」「あずき峠」)。初回から10周年を記念した1985年には映画も製作。演目は王道の「ごんぎつね」で、劇場にはかけず、地方のホールを借りて巡回する上映方式だったことも、まさに家庭で母と子に愛されたフォーマットであることを物語っていた。1991年には放送800回を記念し、京都の祐月苑から「花咲かじいさん」「鶴の恩返し」をそれぞれイメージした着物が発売されている。

 しかし、1994年に全国ネットかつゴールデンタイムでの放送は終了。そもそも、土曜の夜と言えば視聴率争い的には激戦区。裏では前年から開始の「Jリーグ中継」や「たけし・逸見の平成教育委員会」(フジ)、そして、同じアニメながらヒロイン戦隊ものの「美少女戦士セーラームーン」(テレビ朝日)が放映されており、時代の流れを感じさせた。2003年には全てのローカル局での放映(素材は再放送)が終了した。

 ところが、2年後の2005年になると、内容は再放送ながら、ゴールデンタイムのレギュラー番組として復活(毎週水曜日午後6時55分より30分)。これまた、30年前の初期放送同様、「子供と安心して見られるアニメが欲しい」という声が多く上がったためだった。プラスして、こんなコメントも、多数見られたという。

「昔、母親が見せてくれたように、今度は自分が子供に見せたい」

 ゴールデンでの再放送は半年間の予定が、好評につき1年間に延長。さらに2011年には待望のDVD化となり、2カ月で24万枚を売り上げる超ビッグヒット作となった。現在でも特番やCS放送の類いで、繰り返し放映されている。

 なお、基本は30年以上前のアニメながら、今でも映像が引き立ち奇麗なのは、後のブラッシュアップもあるが、実は最初から画質の良い映画用の35ミリのフィルムで撮っていたからというのが大きい。まさに前出の川内の理念にもあった、「後世に残す意義」を番組にたずさわったスタッフがわかっていたのだ。

 また、長期にわたるコンテンツゆえ、多数の演出家に声をかけており、内容もその裁量に任されていた。よって、時には切り絵だったり、版画を用いたりの作品もあり、大きく言えば、現在のアート・アニメの先駆けともなっている。

※1:8月5日~9日。渋谷「CBGK シブゲキ!!」にて。出演は藤原紀香ほか。
※2:「麻布台ヒルズギャラリースペース」にて、10月25日まで開催。

【後編は「“山んば”は『孤独を知っているから優しいのね』…放送開始50年『まんが日本昔ばなし』秘話 市原悦子が語っていた“めでたしめでたしで終わる話ばかりではない”昔ばなしの魅力」】

瑞 佐富郎
プロレス&格闘技ライター。早稲田大学政治経済学部卒。近著「10・9 プロレスのいちばん熱い日」(スタンダーズ)が重版出来中。雑学にも極めて通じており、「世界の国々 おもしろクイズ1000」(メイツ出版)においては、ほぼ全問を作成及び執筆している。

デイリー新潮編集部