「新居で焼肉はイヤ」断ったのに…職場の先輩がまさかのプレート持参、勤務時間外でも「パワハラ」になる?
「家で焼肉はしたくない」と断ったのに、会社の先輩が焼肉プレートを持って新居にやってきた──。
そんな投稿がSNSで話題になっています。
投稿者によると、新居に会社の先輩を招いたところ、「焼肉をしよう」と提案されたそうです。新しい壁紙を貼ったばかりで、においや煙などが気になったため、いったん断ったといいます。代わりに、寿司をとることや、焼肉店に食べに行くことを提案しました。
ところが、先輩は焼肉プレートを持参。結局、投稿者の自宅で焼肉をすることになってしまいました。
これに対し、SNSでは投稿者に同情する声が上がる一方、「先輩だから断りづらかったのでは」など、職場の上下関係に注目する声もみられました。
勤務時間外の出来事とはいえ、「会社の先輩」という立場を背景に、後輩が断ったことを押し通した場合、パワーハラスメントにあたる可能性はあるのでしょうか。今井俊裕弁護士に聞きました。
●「家で焼肉」はパワハラになる?
──勤務時間外の私的な場であっても、「会社の先輩」という関係性を背景に、後輩が嫌がっていることを押し通した場合、パワハラにあたる可能性はあるのでしょうか。
パワハラは労働者の働く意欲を失わせ、本人だけでなく、雇用主である会社にも悪影響を及ぼします。そのため、法律はパワハラを定義し、事業主に防止措置を講じる義務を課しています。
法律上のパワハラとは、次の3つの要素をすべて満たすものをいいます。
(1)職場における優越的な関係を背景とした言動
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
(3)労働者の就業環境を害する言動
今回のケースですが、直ちに法律上のパワハラにあたると考えることは難しいでしょう。
たしかに、職場の先輩という優越的な関係を背景にした言動であれば、(1)に該当する可能性はあります。
しかし、出来事があったのは後輩の自宅という極めて私的な場所です。社員の懇親を目的として会社が予約した飲食店など、「職場の延長」と捉えられる場所とは異なります。
また、後輩宅で焼肉をすることを押し通した行為は、会社の業務や業務上の指示とは関連性がありません。そのため、今回の行為を「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」として、職場におけるパワハラの枠組みで評価できるかには疑問が残ります。
さらに、この出来事によって後輩の就業環境が害されたといえるかどうかも、今回明らかになっている事情だけでは判断できません。
●「先輩だから断れない」なら話は変わる?
──どのような事情があれば、パワハラと認められる可能性があるのでしょうか。
表面的にはパワハラにあたらないように見えても、事実関係を丁寧にみていくと、判断が変わる可能性があります。
たとえば、先輩一人ではなく、同じチームや普段机を並べている同僚全員が、先輩の号令や指示によって後輩宅へ押しかけた場合です。
また、後輩が週に何度か自宅で勤務していたり、社員が仕事を自宅へ持ち帰ることを会社が容認していたりするなど、自宅が事実上の職場として使われていた事情も考慮されるでしょう。
さらに、その先輩に後輩の人事評価や会社への報告に関する一定の権限があり、後輩が私的な要求であっても断りにくい状況だった場合も、判断に影響します。
これまでも先輩が後輩のプライバシーや個人的な関係に繰り返し踏み込み、その積み重ねによって、後輩が職場で先輩のもとで働くことに精神的苦痛を感じるまでになっていた場合には、一連の行為が法律上のパワハラにあたる可能性があります。
【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html

