ガッツポーズの高市首相とイチゴモードの鈴木農水大臣(いずれも首相官邸のXより)

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 「責任ある積極財政」を掲げる高市政権が、予算制度改革を推し進めている。その目玉となるのが、来年度予算の概算要求に設けられた「強く豊かな日本」投資枠だ。

【写真を見る】ノリノリで”おもしろアイマスク”を装着する鈴木農水大臣、マスコットに褒められてウキウキの高市首相

 概算要求では、本来、予算の際限ない膨張を防ぐため「シーリング」と呼ばれる要求額の上限が設けられる。ところが片山さつき財務相は概算要求基準について「もはやシーリングと呼ぶべきものはない」と説明。特にこの投資枠には上限がなく、"青天井"で予算を要求できる。

 その結果、内閣広報室の予算要求額が"10倍以上"に増大。波紋を広げている。

"青天井"の投資枠が広報予算に

 大手キー局の政治部記者が解説する。

「首相官邸の情報発信を担う内閣広報室の2026年度当初予算は約7億円でした。それが2027年度予算の概算要求では、10倍以上となる"72億2800万円"を求めたんです。しかも、72億円のうち約65億円を『強く豊かな日本』投資枠が占めている。内閣広報室の予算膨張に"青天井"枠が利用された格好です」

 もっとも、その予算が政権の説明どおり「潜在成長率の引き上げにつながる施策」に使われるなら、問題はないのかもしれない。内閣官房の資料によると、72億円のうち約66億円を「国内発信の強化」に充て、国民に届きやすい動画などをつくる体制を整えるという。

 では、「国民に届きやすい広報」とはどんなものなのか。高市政権下で投稿されてきた数々の"名作"広報を振り返ってみよう。

「イチゴモードMAX」の鈴木農水大臣

 まずは9月8日、首相官邸のXアカウントが「成長戦略17分野の現場シリーズ」の第3弾として投稿した動画だ。

「『フードテック』の今がわかる」というテーマのもと、鈴木憲和農林水産大臣が自らイチゴの完全閉鎖型植物工場を紹介する内容だが、批判が集まったのはその中の一幕。「イチゴモードMAX全開」のテロップとともに、イチゴのかぶりものとサングラスを身につけた鈴木大臣が登場する場面だ。背景では、「大臣ノリノリ!」という音声も。

 投稿のリプライには〈こんな動画に血税使うな〉〈くだらないパフォーマンスはやめろ〉などの批判が集まった。意義ある内容の動画に似合わない"おふざけ"が、かえって反発を招いたかたちだ。中には〈クソおもんない〉という声もあり、根本的な"センスのズレ"も露呈してしまった。

 同シリーズの第1弾、サーモンの閉鎖循環陸上養殖システムの回でも、"伝わりやすい広報"を目指した様子が見て取れる。食べ比べで陸上養殖のサーモンを当てるという、『芸能人格付けチェック』のような一場面。鈴木大臣は、パーティーグッズでおなじみの"おもしろアイマスク"を着けて登場した。こちらの投稿のリプライにも〈いつから日本の大臣はコメディアンに堕落したのですか?〉といったコメントが寄せられている。

「国民にわかりやすく広報を行うのは重要です。ですが、国民の税金を使っているワケですから、一見するとくだらないユーモアを披露する動画を作れば、批判の声が寄せられるのも無理はないでしょう」(前出・政治部記者)

◆高市首相が"主人公"に

 前出の政治部記者は、高市政権の広報の特徴として、高市首相の演出のされ方を挙げる。

「まるで首相が"主人公"かのように描かれるんです。

 たとえば、開幕まで半年に迫った横浜の国際園芸博覧会を紹介するため、9月11日に首相官邸のXに投稿された動画です。動画では、博覧会の公式マスコットキャラクター・トゥンクトゥンクと高市首相が言葉を交わす様子が映されました。

 その中で、高市首相が『今日の私はどう?』と話しかけ、『素敵だね』と返されると、『よっしゃ!』とガッツポーズを決めます。さらに『お花みたいにかわいいよ』と持ち上げられると、『気分上がったわ!』と笑顔を見せる。

 もちろん博覧会の広報も盛り込まれていますが、これでは高市首相が主役のようです」

 実際、リプライ欄にも〈自分がどうなのかしか興味がないのか?〉などの批判が寄せられている。

 また、7月28日に発生した熊本地震の被災地を、首相が8月3日に訪れた際の動画が波紋を呼んだことも記憶に新しい。被災者と言葉を交わす首相の姿と、BGMとして流れるピアノの音色が重なり、エモーショナルな印象を喚起する。ヘリコプターの上から被災地を見下ろし、合掌する首相の姿も象徴的だ。

 あまりに品質の高い動画も相まって、ネット上では〈首相のプロモーションビデオのようだ〉といった批判が数多く寄せられた。BGMの必要性を問われた木原稔官房長官は、会見で「国民の皆様にわかりやすくお伝えするための手法の一つだ」と説明している。

「『わかりやすくお伝えする』ことが、首相を主人公のように演出することと同義になってしまっているならば、反発の声が噴出するのは避けられない」(前出・政治部記者)

 前年度の10倍以上もの予算を要求した内閣広報室。これからどんな"名作"、あるいは"迷作"広報を生み出すのだろうか。本記事でとりあげたすべての動画が内閣広報室予算で作られたものかどうかはわからないが、おしなべて"残念なセンス"がにじみ出ている。

 国民の貴重な税金が"強く豊かな日本"の名目のもとでムダ遣いとならないことを願うばかりだ──。