「学園祭で使うからと騙して写真を…」元男子高校生が明かすAIディープフェイク作成の裏「マジの盗撮じゃないから悪くない」〉から続く

「1000人分の性器データ学習」など開発競争が激化するAIポルノの世界。違法動画も多い無料の海外サイト勢を前に、国内のAVメーカーはさまざまな規制や倫理とのはざまで道を探る。若者たちの性の常識を塗り替えるAIとポルノの最前線に、ノンフィクション作家・石井光太氏が迫った。

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国内外のアダルト動画配信サイト

 ここ数年、未成年の若者たちが閲覧しているアダルトコンテンツは、AIの登場によって様変わりしてきている。

 現在、アダルトコンテンツの視聴は、国内外のアダルト動画配信サイトを介して行われるのが主流だ。かつてのような作品ごとのDVD販売ではなく、サブスクリプションで様々なメーカーの作品を大量に視聴できたり、広告と引き換えに無料で見られたりする仕組みになっている。

 こうしたアダルト動画配信サイトは、大きく二つにわけることができる。

 一つが、国内最大手の「FANZA」などの日本の法律に合わせて運営されている有料配信サイトだ。ここでは主に日本のメーカーが、国内の法律や倫理規定に従って制作した作品が提供されている。

 もう一つが、海外の「Pornhub」「XVideos」といった配信サイトで、こちらは日本の法律や倫理規定から外れて制作された動画が大量にアップされている。メーカー作品の海賊版、流出した個人撮影動画、素人の個人が自主制作した無修正の動画などが、数秒の広告と引き換えに無料、ないしは有料で閲覧できる。

 今の子は何歳くらいでこうしたアダルトコンテンツを見ているのか。

 イギリスで行われた調査では、子供が最初にポルノに接する平均年齢は13歳とされている。国内の詳細な統計はないが、日本の子供もさほど変わらないだろう。

 総務省の統計によれば、日本のスマホなどのフィルタリングサービスの利用率は、小学低学年で38.7%、小学高学年で47.2%となっているが、親との共有端末やフィルターの解除によって閲覧可能な状態にある子は少なくないというのが筆者の見解だ。

若者のポルノ視聴の傾向

 アダルトビデオの大手制作メーカーの一つにソフト・オン・デマンドがある。担当者の小野昇(仮名)は、若者のポルノ視聴の傾向について次のように話す。

「今の若い人たちは、きちんとお金を払ってアダルトコンテンツを見ようという意識が薄くなっていると感じます。

 そもそもうちの会社は、個人がアダルトDVDを購入して見るカルチャーを確立して一時代を作りました。しかし、動画配信が全盛の今は、DVDを購入する人が減り、その年齢層も上がってきています。

 そうしたこともあって、若い人にとって海外の動画配信プラットフォームを利用してタダで見るのが普通になっているのです。

 海外のプラットフォームには数えきれないくらいの動画がアップされています。若い人たちはスマホさえあれば、どこからでも簡単にアクセスできるし、好みのものをいくらでも見られる。ITに慣れている人にとってはとても便利なものになっているのです」

AIがユーザーの嗜好を分析して提案

 クレジットカードによる課金など、お金を自由に使えない若者が、手軽な海外の無料動画配信サイトにアクセスするようになるのは致し方のないことだろう。

 こうした海外の動画配信サイトにはあらゆるジャンルの作品が無数に用意されている。大手サイトであれば、アップロードされている動画は1000万本以上だ。個人では一生かけても見ることのできない数だ。

 これらの膨大な動画の視聴を手助けするのが、サイトに組み込まれたAIのシステムだ。動画はすべてカテゴリやタグが付けられており、ユーザーの行動データを機械学習で分析し、お勧めの作品を示す。

 たとえば、「学校」に分類される作品を視聴すれば、そのデータを元にさらに細かく個人の性癖に合ったものが大量にレコメンドされていく。そのため、個人の性的な嗜好がどんどん狭められ、深められていくことになる。ここから引き起こされるのは、性癖のマニアック化だ。

AV新法が成立するも、海外の配信サイトは野放し

 こうした動画の中には、権利の侵害に当たるようなものも数多あるという。小野は言う。

「多くの国内メーカーは、AV新法をはじめとした法律や規制に則って合法的に作品を作り販売しています。

 しかし、海外のプラットフォームには海賊版などがアップされることも多々あり、国内メーカーや女優さんの権利が守られないことが少なくありません」

 近年、日本のAVメーカーは、これまで何かと批判の矢面に立たされてきた。

 記憶に新しいところであれば、契約内容などに人権上の不備があるなどの声が上がり、2022年にAV新法(アダルトビデオ出演被害防止・救済法)が成立した。契約者が無条件でそれを解除できたり、契約から作品の公表まで5カ月の猶予を持ったりすることになった。

 出演者の人権を守るという観点からすれば、新法の成立は不可欠だ。これによって出演者の人権はある程度保障されるし、あからさまに倫理を外れた内容も生まれにくくなるだろう。

 だが、国は国内のメーカーを締め付ける一方で、海外の配信サイトはブロッキングをするなどの対処はせず、野放しにしている。そのため、桁違いのタイトルを無償で提供している海外の動画配信サイトの影響力は増すばかりだ。

 筆者がこの業界に詳しい人に尋ねたところ、これらのサイトには海賊版の他にも、メーカー以外の個人、あるいはグループによって個人撮影された自主動画が大量に含まれており、中には暴力性の高いものまであるという。日本の法律の及ばぬサイトで、アルゴリズムに従って無制限に浴びるように動画を見るというのは、知らず知らずのうちにそういう犯罪に間接的にでもかかわってしまうことでもあるのだ。

 動画配信サイトでここ数年の間に起きている変化として、AIによって生成された「AIポルノ」と呼ばれる動画が増えていることが挙げられる。このジャンルでも、国内サイトと海外サイトとでは明暗がくっきりと分かれているらしい。

ソフト・オン・デマンドが目指す“AIの融合”

 小野は話す。

「2020年代になって、うちの会社でも新しい技術を使って新ジャンルを作れないかと模索しています。その時にメタバースや仮想通貨と共に出たのがAIだったんです。有名女優さんの静止画をAIで好きなシチュエーションに変えられるサービスを提供しました。2023年のことです。

 長期的には、ユーザーが自分の好みに合わせて作品を自由に生成する時代の到来も想定しており、AIという不可避な技術を正当に管理・活用しながら、“実在する女優”と“本物のエロ”にAIを融合させ、次世代市場でも独自の地位を確立したい考えです」

 現在、ソフト・オン・デマンドのAI活用は、作品全体というより、ロケ映像に映り込んだ「通行人の顔への自動モザイク」「車のナンバープレートの消去」「局部へのモザイク入れ」などが主だという。

 中国などではAIによってプロットから人物、そして背景まですべてを作るAIドラマが話題を呼んでいるが、それに比べると日本のAV業界の取り組みはそこまでに達していない。一体なぜなのか。

AIがぶつかる壁

 同社の実験的なAI企画に携わったのが、2000年代初頭に中国から日本に留学し、現在はAI関連企業の代表を務める清水健(仮名)だ。

 清水によれば、AIでアダルト動画を作ろうとすれば、オープンソースAIをベースにした専用のローカルAIを作る必要がある。

 ここで起こる一つの問題が、ローカルAIに学ばせるアダルト動画の学習素材が十分でないことだ。それゆえ、性行為に関する細かな動き、吐息、体毛、音などを自然に生成できず、実写同様のクオリティーにまでは到達できていないという。

 個人開発者の中には、AIの精度を上げるため、1000人分の女性器のデータを集めて学習させて精度を上げている者もいるそうだ。ただ、データの権利の問題もあるため、「合法的」な生成には高いハードルがある。

 また、視聴者がアダルトコンテンツに細部のリアリティを求める傾向にあることも障壁になっている。

 たとえば中国で制作される完全AIのアクションドラマでは、視聴者は武器、スピード、効果音、背景など様々なものに注意を向けて楽しむので、登場人物の動きに多少AIっぽさがあっても大して気にならない。40年前の特撮映画が今でもそこそこ見られるのも似た原理だろう。

 一方、アダルト動画では、視聴者が登場人物たちの肉体の細かな動きのみを注視するため、些細な違和感があるだけでリアリティを感じられなくなる。つまり、アダルト動画の場合は、AIに求められる再現性がより高まるのだ。

 そのため、現在、日本国内のメーカーがリリースしている「AIポルノ」の大半は、一からAIで生成した動画ではなく、実は実写の作品をベースにして、顔や身体の一部だけをディープフェイク技術によって置き換えたものだそうだ。

 とはいえ、AI作品を作るために、ベースとなる実写作品を制作するのはコストパフォーマンスが悪い。そこでほとんどのメーカーは、自社の過去作品を持ち出し、そこに出演している女優に承諾を取り、顔など一部をAIで入れ替えたものを「AI作品」としてリリースしているという。

 小野の言葉である。

「実写に顔だけを置き換えたAVは少しずつ増えている印象です。ただ、同じ業界の人間からすれば、『あ、これはあの作品の女優さんの顔を入れ替えただけだな』とわかってしまうこともありますね。

 しかし、女優さんの顔を消して、AIで置き換えるというのは、あまりにぞんざいに扱っていますよね。うちのようなメーカーは、女優さんへの敬意をなくしたら仕事はできません」

メタバースの中に秘密の部屋があって…

 日本のメーカーの動向とは反対に、海外のアダルト配信サイトでは、AIによって生成されたアダルトコンテンツが爆発的に増えている。

 筆者の調べでは、2026年8月現在で、Pornhubでは「AI生成」のカテゴリで9万4000タイトル以上、XVideosで「AI」カテゴリは約3万2000タイトルもある。もはや一つのジャンルとして樹立されたと言っていい。

 背景には、AIポルノの制作者の違いがある。海外のAIポルノを作っているのは、AIベンチャー、数人のエンジニアグループ、あるいは個人のAIクリエイターだ。

 彼らはアダルトコンテンツを生業としているわけではなく、AI技術の実験場として認識している。それゆえ、日本のメーカーのように法律、売り上げ、出演者への忖度などを気にせず、技術の腕試しとしてAIで実験的な作品を量産している。AIポルノ単体でビジネスをするのではなく、そこで認められることによって別の仕事を受注するというスタンスなのである。

 視聴者の層もまったく違う。日本のメーカーが作ったAIポルノを見ようとすれば、視聴者はそれに数百円から数千円の料金を支払わなければならない。しかし、海外のAIポルノは無料で公開されているため、視聴者は気軽に、中には面白半分に大量の動画を見ることができる。それによってAIポルノの制作本数も桁違いに増えていくのだ。

 AIによって、今後アダルトコンテンツはどう変わっていくのだろう。業界人の注目が集まっているのはメタバース(3次元の仮想空間)だそうだ。

 メタバースには、VRとセットになった空間トラッキング、会話型エージェント、リアルタイム多言語音声、リアルタイム監視など、AI技術が深く組み込まれている。某VRにおける個人間コミュニティでは、すでに16点トラッカー等を体に装着し、アバター同士のバーチャルなセックスが可能になっているという。高い技術を持つプログラマーたちが趣味を兼ねて自主的に制作し、共有しているようだ。

 小野は話す。

メタバースの中に、ホテルみたいな密室の空間があり、限られたメンバーしか入れないようになっているんです。そうした空間で、利用規約から外れたバーチャルなセックスをする人もいるみたいです」

 そこでは、腕や口が何本も生えて様々な場所を同時に愛撫する、性器が透明化して体内のピストン運動が可視化されるといった、現実の肉体では不可能な行為もあるようだ。

 昔は、特撮を用いたアダルトビデオやアダルトアニメでしか表現しえなかった架空の性行為が、高度な技術を使って疑似体験できるようになっているのである。かつてそれらを欲した愛好家がいたように、こうした仮想体験に没頭する人たちが生まれても不思議ではないはずだ。

 AIによって、仮想空間でインタラクティブに性を消費する未来が、もうすぐそこまで来ているのである。

 ここまで見てきたように、アダルトコンテンツは、AI技術が組み合わさったことで、大量消費や、AI制作の時代を迎えつつある。

 懸念すべきは、このビジネス競争の軍配が、国内メーカーではなく、日本の法律の外で制作された粗雑な動画を集めた海外のアダルト動画配信サイトに上がりつつある点だ。

 冒頭で述べたように、日本の思春期の若者たちは、こうした動画を小中高生の年代から目にしている。無限のレコメンドによって浴びるように見ていれば、歪んだポルノの世界が彼らの「性のスタンダード」になる危険もあるだろう。さらにメタバースの世界でも、つながるコミュニティによっては逸脱した性体験を味わえる場になりうる。

 海外から押し寄せる圧倒的なポルノの洪水を前に、家庭や学校で性をどう規制し、教えるべきなのか。私たちはそのことにもっと危機感を持つべきなのかもしれない。

INFORMATION

本連載では、「若者社会におけるAIの光と影」をテーマに取材を進めています。その中で「AIによるショート動画などのAIスロップの大量生産に詳しい方」「推し活アプリやAIパートナーへの課金に悩まれている方」「AI教育・AI保育の課題に詳しい方(教育・保育者含む)」を探しています。

取材に協力していただける方は、簡単なプロフィールと提供いただける情報を明記の上、著者・石井光太氏のホームページから連絡下さい。

(石井 光太)