「全部、お前のせいだ!」48歳・実家暮らしの息子が激怒。〈年金月13万円〉76歳母、〈小遣い月5万円〉を18年間渡し続けた「哀しい末路」
親の年金に依存して暮らす中高年の子どもが、親の老後資金を枯渇させてしまう--「8050問題」が長期化するなか、親子共倒れを防ぐために必要な視点とは何か。ある親子の事例を通して、経済破綻の実情を探ります。
30歳で離職した息子への罪悪感と、18年間続いた月5万円のお小遣い
関東地方の郊外住宅街で暮らす小林節子さん(76歳・仮名)は、自宅で二人暮らしをする長男の小林直樹さん(48歳・仮名)との関係に長年悩んできました。直樹さんは30歳の時に勤めていた会社を退職して以来、18年間にわたって無職のまま実家で生活を続けています。
節子さんの現在の収入は、遺族厚生年金を合わせた月額約13万円のみ。対する直樹さんには定期的な収入がまったくありません。
直樹さんが離職したきっかけは、当時の職場における人間関係のトラブル。退職後、実家に戻ってきた直樹さんは、自室に閉じこもるようになりました。節子さんは当時を振り返り、「自分が息子の悩みに気づけなかった」「復職を焦らせて追い詰めてしまった」という強い罪悪感を抱くことになります。
節子さんは直樹さんから求められるまま、毎月5万円の小遣いを渡すようになり、それが今も続いているのは、そんな罪悪感からでした。直樹さんはこの小遣いで携帯電話料金やゲームの課金代、個人的な買い物に充てていました。年間60万円、18年間継続し、総額は1,080万円に達しています。
内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)』によると、40~69歳のひきこもり群(広義)のうち、現在「無職(仕事を探していない)」と回答した割合は59.4%。また、世帯の生計を支える主な収入源として「年金」を挙げた割合は56.8%と半数を超えており、高齢の親が受給する年金や蓄えに頼って暮らしている実態が浮き彫りとなっています。
親が罪悪感から金銭的支援を長年続けた結果、年金収入だけでは生活費や小遣いを賄えず、親の資産が切り崩されて世帯全体で追い詰められていく--現代の大きな社会問題のひとつです。
現在、節子さんは夫が遺した約1,200万円の預貯金を切り崩しながら、直樹さんへの小遣いと生活費を賄っていました。月13万円の年金収入に対し、2人分の生活費と小遣いで毎月5万円ほどの赤字が発生していたためです。長年の取り崩しにより、蓄えは確実に減少し続けていたのです。
貯蓄が底をつき訪れた破綻と「全部、お前のせいだ」という激昂
夫が亡くなってからは、預貯金を取り崩しながらやりくりしてきた節子さんですが、銀行口座残高はついに10万円を切りました。これ以上の預貯金の切り崩しは不可能な状況に陥ったのです。
限界を迎えた節子さんは、直樹さんに現在の経済状況を伝えることを決めました。
厚生労働省『被保護者調査(令和8年6月分概数)結果の概要』によると、同月の被保護実世帯数は164万2,778世帯に上り、そのうち「高齢者世帯」が90万3,532世帯と全体の55%以上を占めています。
生活保護は国民の最低限度の生活を保障するセーフティネットですが、受給に対してネガティブなイメージを覚える人も珍しくありません。本来生活保護による支援が必要であるにもかかわらず、申請をためらうケースも少なくないのが現状です。
直樹さんも生活保護にはいい印象がなかったようです。節子さんの説明を聞いて激昂しました。
「生活保護なんて恥ずかしい!」
「全部、お前のせいだ!」
「俺がこんな風になったのも、金がないのも、全部お前たちが悪いんだ!」
18年間にわたり支援を続けた節子さんに対し、返ってきたのは激しい責め立てと責任転嫁の言葉でした。
直樹さんから激しく責め立てられたものの、節子さんにはどうすることもできません。節子さんは意を決して、地域の地域包括支援センターや福祉事務所へ相談を行いました。現在は専門員の介入のもと、生活保護の手続きと直樹さんの自立支援に向けた調整が進められています。
親が罪悪感から金銭支援を続ける行為は、一見すると親心に見えますが、結果として子の自立の機会を奪い、親自身の老後生活を破綻へと追いやります。親子間の共依存の関係を断ち切るには、家庭内だけで問題を抱え込まず、早い段階で外部の専門機関や公的支援制度に相談することが不可欠です。

