ラーメン山岡家「卓上ニンニク」大量投入が物議…“無料”でも「退店命令」「損害賠償請求」が認められる“境界線”は?【弁護士解説】
先日、ラーメン店で撮影されたある動画がSNSで拡散され、賛否さまざまな意見が飛び交った。
問題となったのは、人気チェーン店「ラーメン山岡家」で撮影された動画。卓上に置かれている無料のすりおろしニンニクを、ラーメンに大量に投入する様子が映っていた。
この動画をめぐっては、「お店に迷惑をかけている」「食べ物を粗末にしている」などの批判的な声が上がった。また、生のニンニクを大量に摂取することで腹痛・胃痛や下痢などの体調不良になる危険性を指摘するコメントもあった。
一方で、「食べ切るのであれば問題ない」「無料なのだから好きなだけ入れていい」という声もみられた。
同様の動画は、2024年にも話題となっている。当時、山岡家を経営する丸千代山岡家(本社:北海道札幌市)の担当者はメディアの取材に対し「(ニンニクは)あくまでも美味しく食べられる常識の範囲内で使っていただきたい」と回答していた。
ニンニクなどの卓上調味料はラーメン店の定番である。だが、民法に詳しい雨宮知希弁護士は「無料だからといって、無制限に使ってよいというわけではありません」と指摘する。
調味料の使用ルールは店側が決められるそもそも、ラーメン店やレストランなどで客が飲食するとき、客と店との間には「飲食物を提供する契約」が成立する。
そして卓上に置かれた無料の調味料は、提供した料理を美味しく食べてもらうために、契約に付随して提供されるサービスと位置づけられる。
「卓上調味料は、あくまで『自分が注文した料理の味付けに使う』という趣旨で提供されています。
そのため、社会通念上、常識の範囲で合理的な量を使うことが、店と客との間の暗黙の前提になっていると考えられます。とりわけ、他の客も使う共用のものであればなおさらです」(雨宮弁護士)
そもそも店側は、店舗という場所を管理する権利を持つ(施設管理権)。さらに、契約自由の原則(民法521条)に基づき、店側は卓上調味料などのサービスの利用方法に条件を付けたり、迷惑な使い方を断ったりすることもできる。
したがって、料理の味付けという範囲を超えて、容器が空になるまで調味料を入れるなど常識を外れた使い方をする客に対しては、店側が「常識の範囲で使ってほしい」と指示することが可能だ。さらに、指示に従わなかった客に退店を求めることも、原則として認められている。
ただし、調味料の使用制限などについてあらかじめ明確なルールを定め、そのルールを店内に掲示しておく方が、法的にみて望ましいという。
「店側は『料理に合う量でお使いください』『常識の範囲でご利用ください』『大量の使用や持ち帰りはご遠慮ください』など、調味料の使用ルールを具体的に掲示しておくべきです。
ルールを明示しておくことで、それが契約の内容となり、過度な使用を断ったり退店を求めたりする際の根拠が明確になります」(雨宮弁護士)
また、SNSでも指摘されたように、ニンニクなどは大量に摂取すると胃腸の不調など体調を崩すおそれがある。そのため、トラブルを予防するために、「食べ過ぎにご注意ください」といった注意書きをしておくことが望ましい。
「客が自ら常識を外れた量を摂取して体調を崩したという場合、基本的には自己責任であり、通常のケースであれば店が法的責任を負うことは考えにくいでしょう。
それでも注意喚起をしておくことで、仮に法的な争いになった場合に、店側に有利にはたらきます」(雨宮弁護士)
損害賠償は請求できるかもし客が店の指示を無視して調味料を使い続け、容器を空にした場合には、店側が使われた調味料の実費相当の損害賠償を求める余地がある。もっとも、その金額はごくわずかだと考えられる。
一方で、指示を無視した客の迷惑行為が原因で「他の客に提供できなくなった」「補充や清掃の手間が生じた」など、営業に具体的な支障が生じる事態も起こり得る。この場合に発生した損害については、不法行為(民法709条)に基づく賠償を請求できるケースもある。
もっとも、この場合にも、損害の具体的な内容・金額と客の迷惑行為との因果関係を立証できるかがハードルになるという。
「もし、SNSに投稿された迷惑動画が店の信用や売上に具体的な損害を与えた場合には、より大きな賠償が問題となる可能性もあります。
実際に近年では、いわゆる『客テロ』(※)に対して、飲食店が損害賠償請求などの法的措置に踏み切るケースが見られます」(雨宮弁護士)
※「寿司テロ」など、飲食店で客が迷惑行為をする様子を撮影して、SNSなどに投稿すること
業務妨害罪などが成立する可能性も客による迷惑行為が、刑法に違反する犯罪となる可能性もある。
たとえば、退店を求められても店に居座り続ける行為は不退去罪(刑法130条)が問題となり得る。
また、大声を出す・暴れる・什器を占拠するなどの行為によって店の営業を妨げた場合には威力業務妨害罪(234条)が、迷惑動画などで店の業務・信用を害した場合には偽計業務妨害罪(233条後段)や信用毀損罪(233条前段)が成立するケースがある。
さらに、大量の調味料を使い物にならなくするような行為をした場合には、器物損壊罪(261条)が問題となり得るという。
これらのうち、威力業務妨害罪・偽計業務妨害罪・信用毀損罪の法定刑はいずれも3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金だ。また、器物損壊罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料、不退去罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金である。
「もっとも、単に無料のニンニクをたくさん入れて自分で食べた、という行為それ自体が、直ちに犯罪になるわけではありません。
刑事責任が現実に問題となるのは、指示を無視した居座りや営業妨害、虚偽の投稿による信用毀損など、態様が悪質なケースです」(雨宮弁護士)
店側の立場としては、迷惑行為があった場合にどのような対応をするか(退店を求める、警察・弁護士に相談する、損害があれば賠償を求めるなど)、また店内での撮影・SNS投稿の取り扱いなどについては、あらかじめ方針を決め、必要に応じて掲示しておくことが望ましいといえる。
事前に方針を決めておくことで、仮に「客テロ」が発生した場合にも、現場の従業員が対応に迷うことなく、適切な対応を取りやすくなるからだ。

