BMW iX3/メルセデス・ベンツ GLC エレクトリック/ボルボEX60(2) コンフォート寄りかスポーティ寄りか 競争を前進させる新世代
3台で共通する物理スイッチの少なさ
ボルボEX60のメーター用モニターは、ドライバー正面の高い位置。身長によっては、ステアリングホイールのリムで画面は隠れるが、ダッシュボードの奥に据えられ、目線移動を抑えている。シートは調整域が広く、座り心地は出色といえる。
【画像】競争を前進させる新世代 BMW iX3 メルセデス・ベンツ GLC エレクトリック ボルボEX60 全122枚
BMW iX3は、パノラミックiドライブが新しい。フロントガラスの付け根に細いモニターが伸び、同じく少ない目線移動で情報を確認できる。ステアリングは四角く、タッチモニターは平行四辺形でも、内装自体はシンプル。素材の質感では、2台に及ばない。

手前からメルセデス・ベンツ GLC エレクトリックと、ボルボEX60 マックス・エドレストン(Max Edleston)
3台で共通するのは、物理スイッチの少なさ。これに関わる操作性は、従来から後退したと感じる人がいるかもしれない。安価な電動ハッチバック、ルノー 5 E-テックの方が、物理スイッチは多く操作しやすい。コストが理由ではないようだ。
とはいえ、いずれも主な車載機能へのアクセス性には優れ、純正のナビは有能で、タッチモニターの表示内容は調整できる。稀に項目を探すのに迷ったり、システムの反応が遅れる場面はあったが。音声アシスタントの理解度は、GLCが抜きん出ている。
時間をかけてチューニングされた回生ブレーキ
そして、スタイリングやインテリアの個性へ並ぶほど、運転体験にも明らかな違いがある。ざっくり、コンフォート寄りかスポーティ寄りかで、二分される。
回生ブレーキにパドルを採用するのは、GLC。左側を何度か引けば、ワンペダルドライブが可能になり、右側を数回引けば惰性走行が可能になる。ボルボも同等の設定幅を持つが、タッチモニターで選ぶ必要がある。

BMW iX3 50 xドライブ(英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
iX3は、タッチモニターで減速感を変更できる他、シフトセレクターの操作でワンペダルドライブも可能。惰性走行モードは備わらない。3台とも、反応は自然で扱いやすく、技術者が時間をかけてチューニングした成果が表れている。
アクセルペダルの反応が線形的なのは当然だが、ファミリーSUVでありながら、最高出力はいずれも500馬力前後と強力。最も数字が小さいiX3でも468psあり、実際に走らせてみると、残りの2台より勢いが弱い程度でしかない。
運転の楽しさはシンプルなシャシー技術のiX3
現実的に、ここまでのパワーは不要にも思えるが、iX3はグリップとトラクションに優れ、トラクション・コントロールも優秀。過剰には感じないのがミソといえ、郊外の道での追い越し時などは、鋭いダッシュ力が役に立つ。
運転の楽しさでは、凝ったステアリングやサスペンションが備わらない、iX3が圧勝だろう。カーブへ飛び込めば、ボディは適度なロールで安定し、振る舞いは自然。加速へ移ると、後輪駆動へ近い挙動で旋回していく。ステアリングの感触も、充分に濃い。

手前からBMW iX3と、メルセデス・ベンツ GLC エレクトリック マックス・エドレストン(Max Edleston)
そのかわり、乗り心地は1番硬め。全体的には落ち着いているが、硬いブッシュの影響か、細かな振動がキャビンへ伝わりがち。後方の荷室は、その振動音を反響させる。
GLCには、エアスプリングと後輪操舵が備わる、リファインメント・パッケージが組まれていた。余裕あるサスペンション・ストロークを活かし、穏やかにボディは保たれ、静寂性も一枚上手。不規則に凹凸が続く区間では、乗員が揺さぶられることもあるが。
快適性を追求するならスムーズなEX60
EX60はP10グレードで、スチールスプリングとアダプティブダンパーのセット。車内ノイズの小ささはGLCへ匹敵しつつ、乗り心地は路面を問わず一層スムーズ。快適性を追求するなら、こちらに軍配は上がる。シートの座り心地も、出色だろう。
操縦性はボルボらしく安定志向ながら、その特性は強め。トラクション・コントロールは唐突にパワーを絞り、ステアリングの感触は人工的といえる。充分にタイヤは路面を捉え、シャシーバランスの良さも滲ませるが、どこか前時代的な印象も漂う。

手前からボルボEX60と、BMW iX3、メルセデス・ベンツ GLC エレクトリック マックス・エドレストン(Max Edleston)
GLCは、普段の道でスポーティさを楽しめるiX3と、快適性重視のEX60の中間といえる。ボディの重さを感じさせるものの、ステアリングには豊富な情報も伝わってくる。
運転支援システムは、iX3とEX60が極めて有能。車線維持支援は、本当に必要な場面以外介入せず、制限速度警告は簡単にオフにでき、アダプティブ・クルコンの制御にも信頼を置ける。GLCも悪くないが、お節介に感じられる場面もゼロではない。
電動SUVの競争を確実に前進させる新世代
今回の3台は、バッテリーEV技術の最先端を突っ走るメーカーによる、最新モデル。いずれも秀でた完成度でありつつ、しっかり個性があることがうれしい。
実用性で選ぶなら、GLCかEX60だろう。車内空間にはゆとりがあり、乗り心地も安楽だ。運転支援システムの完成度も踏まえるなら、後者の方が1歩リードといえるが。

右からBMW iX3と、ボルボEX60、メルセデス・ベンツ GLC エレクトリック マックス・エドレストン(Max Edleston)
かくして、総合力で頂点に輝くのはiX3。航続距離は2台を圧倒し、急速充電速度も速く、運転の充足度は高い。快適性も、納得できる水準にある。内装の質感では届かないかもしれないが、電動SUVの競争を確実に前進させる新世代だ。
最新のDセグメント電動SUV 3台のスペックBMW iX3 50 xドライブ(英国仕様)
英国価格:6万9755ポンド(約1500万円/試乗車)
全長:4782mm
全幅:1895mm
全高:1635mm
最高速度:209km/h
0-100km/h加速:4.9秒
航続距離:791km
電費:6.4km/kWh
CO2排出量:-g/km
車両重量:2285kg
パワートレイン:非同期モーター(前)+他励同期モーター(後)
駆動用バッテリー:108.7kWh(NMC)
急速充電能力:400kW(DC)
最高出力:468ps(システム総合)
最大トルク:65.6kg-m(システム総合)
ギアボックス:1速リダクション/四輪駆動
メルセデス・ベンツ GLC 400 4マティック・エレクトリック(英国仕様)
英国価格:7万6100ポンド(約1636万円/試乗車)
全長:4845mm
全幅:1913mm
全高:1644mm
最高速度:209km/h
0-100km/h加速:4.3秒
航続距離:637km
電費:5.9km/kWh
CO2排出量:-g/km
車両重量:2645kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:94.0kWh(NMC)
急速充電能力:330kW(DC)
最高出力:490ps(システム総合)
最大トルク:81.4kg-m(システム総合)
ギアボックス:1速リダクション(前)+2速オートマティック(後)/四輪駆動
ボルボEX60 P10 AWD(英国仕様)

ボルボEX60 P10 AWD(英国仕様)
英国価格:6万7845ポンド(約1459万円/試乗車)
全長:4803mm
全幅:1908mm
全高:1635mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:4.4秒
航続距離:648km
電費:6.1km/kWh
CO2排出量:-g/km
車両重量:2275kg
パワートレイン:非同期モーター(前)+永久磁石同期モーター(後)
駆動用バッテリー:92.0kWh(NMC)
急速充電能力:370kW(DC)
最高出力:510ps(システム総合)
最大トルク:72.3kg-m(システム総合)
ギアボックス:1速リダクション/四輪駆動

