日テレNEWS NNN

写真拡大 (全11枚)

多くの車両が水没した千葉豪雨から約1か月。災害時の行動に詳しい、東京通信大学の松尾一郎特任教授は運転していた400人へのアンケートを実施しました。大雨から命を守るため、どんな危険に遭遇し、なぜ運転を続けたのか背景を探ります。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「千葉豪雨 ドライバー400人の行動は?」をテーマに解説します。

■移動中、どんな危険に遭遇?

鈴江奈々アナウンサー 
「松尾さんが行った、千葉豪雨の調査結果です。8月13日午後~14日朝に千葉市内で車やバイクを運転した400人にアンケートをしました。当時の移動の目的は買い物など(29%)が最も多く、通勤(21%)や家族の送迎(17%)と答えた方も多くいました」

瀧口麻衣アナウンサー
「夕ご飯や帰宅など、夕方の時間帯でしたもんね」

鈴江アナウンサー
「ドライバーの皆さんが、運転中にどのような危険に遭遇したのか。『冠水するなどの中、危険に遭遇した』と答えた方がのべで153人、約4割にあたります」

「『川から水が氾濫して押し寄せてきた』(13人)、『周りが浸水してドアが開かなかった』(15人)、『命に関わると思い、車を放置し避難した』(15人)、『エンジンが停止し車外に避難』(11人)、『浸水し全く動かなくなった』(5人)と答えた方もいました」

「これらを合わせると、50人を超える方が具体的に命に関わる状況に陥っていたことがわかりました」

松尾さん
「千葉市内の放置車両は2500台でした。今回の調査はわずか400人ですが、真剣に答えていただけました。のべ人数なので、(アンケートで明らかになった)実際の放置車両は24台です」

「24台と2500台なので、実際には100倍近くありました。水害に巻き込まれて亡くなった方は4人いたわけですから、(命の危険を感じたアンケート回答者は)厳しい状況の中で、からくも助かった人たちです。車と水害の対策は急務だと思います」

森圭介アナウンサー
「これまで大雨災害で人が亡くなるというと、土砂崩れなどを想起する方が多いと思いますが、今は雨と車というのがこれだけ危険な災害につながるんだということを改めて認識しないといけませんね」

松尾教授
「2019年の東日本台風でも、全国で100人ほどが亡くなっていますが、そのうち27人が車で亡くなりました」

鈴江アナウンサー
「今後もそういったリスクに対して備えていかなければいけません」

■危険な状況下でも運転を続けた理由

鈴江アナウンサー
「(松尾さんのアンケートでは)大雨や冠水など危険な状況下でも運転を続けた理由も聞いています。松尾さんはそのドライバー心理を、4つの分類で分析しています」

「一番多かったのが正常性バイアスで、のべ231人。『まだ通行できる』(104人)、『普段使っている道路だから大丈夫』(43人)『水没する状況になると思わなかった』(36人)などと、まだ大丈夫という心理が働いていたということです」

「続いて、『自宅へ帰る必要があった』(54人)、『家族等を迎えに行く』(19人)、『仕事上移動を中止できなかった』(11人)など、義務感によって移動を続けた方がのべ97人いました」

「『周囲の車も走行していたから』という同調バイアス(のべ46人)、さらには『引き返す場所がなかった』(22人)、『停車できる場所がなかった』(13人)など、対処法がわからなかったという方ものべ39人いました。この分析からどんなことがわかるでしょうか」

松尾さん
「あの日、私も千葉にいました。目の前で大雨が降り、雷の音がすごかったですよね。そういう中で、目の前で道路が冠水して、川のように水が押し寄せて、多くのドライバーの人たちからすれば初めての経験ですよ」

「身を守るために進まない、戻るなどの判断よりも、『え? どうするの?』『自分は大丈夫なのかな』『でも仕事は全うしなきゃいけないよね』、(心理は)そういうことなんですよね」

「しかしそれでも、勇気を持って前に進まないというルール(行動規範)が必要だと思います。重要な取り組みかなと思います」

鈴江アナウンサー
「例えば、職場や学校など、いろんなところでのルール作りでしょうか?」

松尾さん
「義務感で行動しなきゃいけないというのは、心理学では過剰適応と言います」

「雨が降る中でそこまでやらなくていい、社内ルールとして警報が出たら業務を止めましょう、安全なところに退避しましょうなど、社会のルールを作っていくんですよ。そうしないと絶対に、大雨の中で命は守れないと思っています」

斎藤佑樹キャスター
「運転する前に事前に(大雨になると)わかっていれば乗らないと意識しますが、車の中でなかなかスマホも触れないですし、どうやって情報をキャッチアップするのかがやはり大事だなと思いますね」

■気象情報に接して危機感を覚えた?

鈴江アナウンサー
「刻々と変化がしていきますからね。千葉豪雨の日は、様々な災害情報が発表されました。(アンケートでは)ドライバーの皆さんがどのように情報を受け取っていて、危機感を覚えていたのかを聞いています」

「運転中、レベル4の大雨危険警報や線状降水帯の情報を受け取って危機を感じたという方が半数ほど。半数にとどまったとも言えます」

松尾さん
「行政が避難の呼びかけをするのはレベル4の避難指示で、レベル5になると河川も氾濫するなど危険だから、とりあえず垂直避難しなきゃいけないという状況です。この段階よりも、もうちょっと早い段階で危機感を持たなきゃいけないんですよ」

「(少なくない人が)情報は来たけど危機感はない、あるいは情報を見聞きしていないので、ちゃんと情報が届くような仕組みを作らないといけません。それができていない」

■道路管理者などに期待することは?

鈴江アナウンサー
「そこが大きな課題ということが見えてきました」

山﨑誠アナウンサー
「運転中に情報が更新された時に、知るすべがないということがあります。テレビはもちろん、スマートフォンも運転中は触れないので、何か方法が出てきてくれればと思います」

鈴江アナウンサー
「(アンケートでは複数回答で)今回の経験を踏まえて、ドライバーの皆さんが道路管理者や気象庁、自治体に期待することを聞きました」

「『冠水や通行止めなどリアルタイムの情報を知りたい』(97件)という答えが一番多くなりました。他には、『カーナビなどへの情報の連携』(56件)、そして『迅速で正確でわかりやすい情報発信』(40件)などが挙がりました」

松尾さん
「400人調査して300人近くの方がこういう対策が必要だと、ご自身の経験の中から提案してくれたんですよ。これは絶対伝えなきゃいけない、その思いを大事にしなきゃいけないと思っています」

鈴江アナウンサー
「ルール作りというところでは、『車利用・通勤の抑制、強い要請』(18件)という声もありました。豪雨災害に向けてどういった対策が必要か、提言をお願いします」

■命を守るために…急ぐべき対策

松尾さん
「5つの柱を挙げました。1つ目は、命につながる情報について、気象庁はプッシュ型であまねく伝える、エリアメールで伝える。防災や気象の情報は即時に的確に伝えることが急がれます」

「2つ目は、浸水・冠水リスク情報を移動者に確実に知らせる。これ以上前に行ったらどうかという道路の浸水のハザードマップはあるべきだと私は思っています。そういうこともちゃんと道路管理者は整備すべきです」

「3つ目、浸水リスクのある箇所への進入抑制策・規制策。もうこれ以上行かないでくれ(ということがわかる)バリケードを設置する、あるいは自動的にシャッターや遮断機を下ろす、あるいは信号機で赤ランプをつけるなど、いろんなことができるんですよ」

「やっているところもあります。これはアンダーパスを含めて、全ての箇所でやるべきだと思っています」

「4つ目は、(車にとっても)安全な退避場所の確保。浸水してどこが安全か、逃げ場所を含めて皆さん迷っているんですよ。身近なところに高台を設置して、そこに逃げられるような仕組みを考えていく」

「5つ目はドライバーの備えです。免許の更新の時に水害のことをちゃんと研修する、学ぶ時間が必要だと思います」

鈴江アナウンサー
「こういった様々な対策を社会全体で進めていくということが、豪雨災害から命を守る社会につながっていきますね」

松尾さん
「自然は変わっています。私たちも変わりましょう」

(2026年9月14日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)