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少年院に入る子どもが、ふたたび増え始めている。

長らく減り続け、2022年には過去最低水準まで落ち込んだが、そこから3年連続で増加。2026年も増加傾向が続いている。

一方、収容者の減少を背景に、少年院そのものは閉鎖が続いてきた。現場からは、対応に配慮を要する少年が増え、職員の負担が大きくなっているとの声も聞かれる。

少年たちに何が起きているのか。統計データをたどり、少年矯正の現場を知る専門家に話を聞いた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●3年連続で増加、今年は半年で1038人

法務省の「少年矯正統計」によると、2025年に少年院に新たに収容された少年(新収容者等)は2044人で、前年から216人増えた。

犯罪白書によると、少年院への入院者は、2000年の6052人をピークに減少傾向が続いてきた。2019年からは最少を更新し続け、2022年には1332人まで落ち込んだ。

ところが、2023年から増加に転じ、3年連続で前年を上回った。2026年も1~6月の半年間で、新たに1038人が収容されている。

●少年院は減少、1施設あたりの収容人数は増加

少年院に入る子どもが増え始める一方で、受け入れる施設は減り続けている。

少年矯正統計によると、収容実績のある少年院は2006年の53施設から、2025年には42施設に減少。約20年間で11施設が姿を消した。

1施設あたりの1日の平均収容人数も減少傾向にあったが、2022年の28.5人を底に反転し、2025年は44.3人まで増えている。

●刑法犯少年の検挙も2022年から4年連続で増加

少年院の収容者数と似た動きを見せているのが、捜査機関に検挙された少年の数だ。

警察庁のまとめによると、「刑法犯」少年の検挙人員は、2021年に戦後最少となる1万4818人まで減ったが、その後は4年連続で増加。2025年には2万4416人となった。

罪種別にみると、窃盗犯(2025年は1万2727人)や粗暴犯(同4589人)で増加幅が大きい。風俗犯(同1354人)では、2023年7月に施行された「性的姿態撮影等処罰法」違反が718人と、過半数を占めている。

また、「特別法犯」に含まれる大麻事犯で検挙された少年は、2025年に1373人(前年比245人増)に上った。ただし、2024年12月に大麻の使用を処罰する規定が施行された影響も考えられるため、それ以前の数字と単純に比較することは難しい。

●「支援教育課程」が2割弱から4割近くに

少年院の中では何が起きているのか。

ある少年院で働く職員は、近年の変化について、こう話す。

「ここ数年、非行内容の大小に関わらず、対応に配慮が必要な発達障害系統の少年が増えている。社会情勢やSNSの発達に伴って、家庭環境や交友関係が複雑化していて、家族への指導や帰住先の調整も含めて、現場職員の負担が増大している」

少年院では、少年ごとに年齢や障害、犯罪傾向の程度などに応じて、教育の内容や期間を定める「矯正教育課程」が指定される。

このうち、知的障害発達障害、またはこれらの疑いがある少年などを対象とするのが「支援教育課程」で、N1からN5までの記号が付けられている。

少年矯正統計によると、支援教育課程に指定された新収容者は、2016年には448人で、全体の17.5%だった。それが2025年には775人、37.9%まで上昇している。

10年足らずで、割合は2倍以上になったことになる。現場職員が語る変化は、統計にも現れている。

ただし、知的障害発達障害そのものが、直接的に非行の原因になるわけではないことには注意が必要だ。

●元矯正管区長「非行の増加というより『絆』が細ってきた」

少年院に入る子どもが増加に転じたことは、何を意味するのか。

福岡少年院長や札幌矯正管区長をつとめた福山大学の中島学教授は「データなどの裏付けはなく、肌感覚ですが」と前置きしたうえで、非行そのものの増加だけでは説明できないのではないかと指摘する。

「非行そのものが増えたというより、少年を社会につなぎ止める『絆』が細ってきたことの表れと見ることが可能です。

20世紀を代表する犯罪学者のハーシーの『社会的絆理論』に照らすと、非行・犯罪に陥ることを抑止しているのは、身近な他者への愛着、将来に向けた投資、日常的な活動への巻き込み、規範の内面化という四つの結びつきであると整理されています。

令和以降、この四つの結びつきを支える関わりは、ミクロ(家庭)、メゾ(学校・地域)、マクロ(社会制度や労働市場)のいずれのレベルでも停滞・減少し、AIの発達を含めて子どもの置かれる環境はここ10年で一気に変質しています。

とりわけコロナ禍の生活環境は、部活動や学校行事、地域の居場所やアルバイトといった『巻き込み』の機会そのものを奪い、少年が誰かと関わりながら時間を費やす経験を大きく減らしました。

また、家庭内に問題・課題を有する環境は、力の弱い子どもたちに強いストレスを及ぼし、その成長発達を阻害しています。

『支援教育課程』の対象者が4割近くに達している事実も、もともと関係を築きにくい少年ほど、この空白の影響を強く受けたことを示しているのではないでしょうか。

再犯・再非行を抑止するためには、収容の受け皿だけでなく、本人と他者・社会との関係性が再構築され得る社会資源とその活用力の修得に、より比重を移していくことが必要だと考えます」

●元少年院長「コロナ禍で『逃げ場』を失った」

四国少年院長などをつとめた京都産業大学の服部達也教授も、増加の背景として「コロナ禍の影響が大きい」とみる。

「社会生活に多大なダメージを与えた『コロナ禍』が収束した後の2023年ごろから少年院収容者が増加傾向に転じていることから、これらには関連性があると考えられるのではないでしょうか。

コロナ禍で学校の休校が続く一方、営業活動や外出の自粛に伴って親と家庭内で過ごす時間が増加し、虐待など家庭内での『生きづらさ』を抱える子どもは逃げ場を失いました。

その後、彼ら彼女らの問題行動の萌芽が膨らんでいき、コロナ禍が終わってからそれが吹き出してきたのではないかと思われます」

さらに服部教授は、近年、非行との関連で注目される「子どもの逆境体験」にも言及する。

「『子どもの逆境体験』がコロナ禍によって増幅、促進されたことが、最近の少年院収容者の増加と相関があるのではないでしょうか。

さらに注視すべきは、少年院収容者に占める割合において、発達障害等の生きづらさを抱えた少年が対象となる『支援教育課程(N1~N5)』の人員が増え、直近のデータによれば、少年院収容者のスタンダードである『社会適応課程I(A1)』の少年の数を上回っている点です。

これも、コロナ禍で生活上の余裕がなくなった親から、発達障害等の生きづらさを抱えた子どもたちが適切な教育指導、支援を受けられなくなったことと関連しているのではないかと感じます」