歯が浮く感じは歯周病のサイン?考えられる原因や治療方法、予防法を解説
食事中や会話の合間に、なんとなく歯が浮いているような違和感を覚えたことはないでしょうか。そう感じても、強い痛みがなければそのまま放置してしまう方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、この歯が浮く感じは、歯周病が進行しているサインである場合があります。放置すると症状が悪化し、歯を失うリスクにもつながりかねません。
本記事では、歯が浮くように感じる原因や、歯周病以外に考えられる要因、具体的な治療方法と予防法について詳しく解説します。心当たりのある方は、ぜひ参考にしてください。
監修歯科医師:
小田 義仁(歯科医師)
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事
歯周病とは

歯周病とは、歯と歯茎(歯肉)のすき間である歯周ポケットから侵入した細菌によって、歯肉に炎症が起こる病気です。
初期の炎症だけの状態を歯肉炎、炎症が進んで歯を支える骨(歯槽骨)まで溶かしてしまう状態を歯周炎と呼び、この両方を合わせて歯周病と呼んでいます。
歯磨きが不十分だと、歯と歯肉の境目に歯垢(プラーク)がたまっていきます。プラーク1mgのなかには1億個以上もの細菌が存在するといわれ、その細菌が出す毒素によって歯肉が腫れたり、出血しやすくなったりします。
この状態がさらに進行すると歯周ポケットが深くなり、酸素の少ない環境を好む歯周病菌がいっそう繁殖しやすくなります。
また、プラーク中の細菌は唾液中のカルシウムなどと結びついて歯石となり、歯の表面に強固に付着します。歯石は歯磨きだけでは除去できず、歯周病菌がさらに奥へと進行する足がかりになってしまいます。
厚生労働省によれば、歯周病とむし歯は歯科の2大疾患であり、成人が歯を失う原因の多くがこの2つに集約されるとされています。歯周病は初期段階では自覚症状に乏しく、気付かないうちに進行していることも珍しくない病気です。
歯周病で歯が浮くように感じる原因

歯が浮くような違和感が、実際に歯周病のサインといえるのか、またどのような仕組みで起こるのかを見ましょう。
歯が浮くように感じるのは歯周病のサイン?

結論からいうと、歯が浮くような違和感は歯周病が進行しているサインの一つと考えられています。
歯周病が進行すると、歯を支えている歯根膜や歯槽骨に炎症が広がり、歯全体がわずかに持ち上げられたような状態になります。
この状態で物を噛むと、歯が本来の位置よりも高く当たるように感じられ、歯が浮くという独特の違和感につながります。
日本臨床歯周病学会が示すセルフチェック項目のなかにも、歯が浮いたような気がするという症状が歯周病の兆候として挙げられているとあります。
歯肉の腫れや出血だけでなく、噛んだときの違和感も歯周病のサインになりえるため、軽視せず歯科医院で相談することが望ましいでしょう。
特に、朝起きたときや硬いものを噛んだときに違和感が強くなる場合は、夜間の歯ぎしりや炎症の悪化が関わっていることもあるため、症状が出るタイミングも意識して観察しておくことをおすすめします。
なぜ歯が浮く感じがするのか
歯が浮くような感覚が生じるのは、炎症によって歯根膜という組織に圧力がかかるためです。
歯根膜は歯と歯槽骨の間に存在し、噛む力を分散させるクッションのような役割を担っています。歯周病菌が出す毒素によってこの歯根膜や周囲の歯肉に炎症が起こると、組織がわずかに腫れて厚みを増します。
その結果、歯が本来の位置よりもほんの少し押し出されたような状態になり、噛んだときに違和感や圧迫感として感じられるようになります。
炎症が軽度であれば痛みを伴わないことも少なくないため、浮いている気がするけれど痛くはないという状態が続き、受診が遅れがちになる点には注意が必要です。
歯が浮く感じ以外の歯周病の症状

歯周病が進行すると、歯が浮く感覚以外にもさまざまな症状が現れます。代表的な3つの症状を確認しましょう。
歯茎の腫れや出血
歯周病の初期に多く見られるのが、歯肉の腫れと出血です。健康な歯肉は薄いピンク色で引き締まっていますが、炎症が起こると赤みを帯びて丸みを帯び、歯磨きの際に出血しやすくなります。
厚生労働省の調査でも、全年齢層の約4割に歯肉出血が認められているとされ、決して珍しい症状ではありません。
歯磨きのときに歯ブラシに血がつく、うがいの水に血が混じるといった変化が見られたら、歯肉に炎症が起きているサインとして早めに歯科を受診することが望ましいでしょう。
腫れや出血は痛みを伴わないことが少なくないため、たいしたことはないと自己判断してしまいがちですが、進行を防ぐには早い段階でのケアが何より重要です。
歯茎が下がる
歯周病が中等度以上に進行すると、歯槽骨が溶けていくのに伴って歯肉も下がり、歯が長くなったように見えることがあります。
歯肉が下がると、これまで歯肉に覆われていた歯根の部分が露出し、冷たいものや歯磨きの刺激でしみやすくなります。
また、歯と歯の間にすき間が生じて食べ物が詰まりやすくなるのも特徴です。歯肉の退縮は一度進行すると自然に元へ戻ることはほとんどないため、これ以上の悪化を防ぐには早期の治療とセルフケアの見直しが欠かせません。
露出した歯根の部分はエナメル質に比べてやわらかく、むし歯にもなりやすいため、露出が見られる場合はフッ素塗布などの予防処置もあわせて相談するとよいでしょう。
歯がぐらつく
歯を支える歯槽骨が溶けて減っていくと、歯を固定する力が弱まり、次第に歯がぐらつくようになります。
初期のうちは自覚しにくいものの、中等度から重度に進行すると噛んだときに明らかな動揺を感じるようになり、硬いものを噛みづらくなる場合もあります。
歯のぐらつきを放置すると、最終的には歯を支えきれなくなって自然に抜け落ちてしまうこともあります。
ぐらつきを感じた時点で、すでに歯周病がかなり進行している可能性があるため、できるだけ早く歯科医院を受診することが重要です。
放置する期間が長くなるほど、歯を残せる可能性は下がってしまうため、少しでも動揺を感じたら様子を見ずに相談することをおすすめします。
歯が浮いたように感じる歯周病以外の原因

歯が浮くような感覚は、歯周病以外の原因で生じることもあります。代表的な3つの原因を見ましょう。
根尖性歯周炎
歯が浮いたような感覚は、歯周病以外に根尖性歯周炎が原因で生じることもあります。
根尖性歯周炎とは、むし歯が進行して歯の神経(歯髄)が細菌に感染し、歯根の先端にある組織にまで炎症が広がった状態を指します。
済生会の解説によると、根尖性歯周炎になると歯が浮いたような感じがし、これは歯根の周囲組織に炎症が起きていることを示しているとされています。
食べ物を噛んだときや歯を叩いたときに響くような痛みを伴うことが多く、進行すると拍動するような強い痛みや歯肉の腫れ、発熱を伴う場合もあります。
歯周病による違和感と似ているため自己判断は難しく、歯科でのエックス線検査などによる鑑別が必要です。
歯ぎしりや食いしばり
歯ぎしりや食いしばりは、専門的にはブラキシズムと呼ばれ、睡眠中に無意識に起こる場合と、日中の緊張時に起こる場合があります。
日本歯科医師会の解説では、ブラキシズムは上下の歯が機能的な運動以外で接触している状態と説明されています。
就寝中の歯ぎしりや、日中に無意識に歯を強く噛みしめる癖があると、歯や歯根膜に持続的な負担がかかり、炎症がなくても歯が浮いたように感じられることがあります。
強い力が繰り返し加わることで歯そのものにひびが入ったり、歯周組織に負担がかかって歯周病を悪化させたりする要因にもなるため、心当たりがある場合は歯科医院でマウスピースの使用などを相談するとよいでしょう。
自分では気付きにくい癖であるため、朝起きたときに顎がだるい、家族から歯ぎしりの音を指摘されたといった場合も、一度チェックしてもらうことをおすすめします。
疲労やストレス
過度な疲労やストレスも、歯が浮くような違和感を引き起こす一因になり得ます。
ストレスがかかると無意識に歯を食いしばる時間が長くなりやすく、歯根膜に負担が蓄積して違和感につながることがあります。
また、日本臨床歯周病学会はストレスを歯周病を進行させる因子の一つとして挙げており、ストレスや歯ぎしり、くいしばりは歯周病のリスクファクターになるとされています。
ストレスによる自律神経の乱れは唾液の分泌量にも影響し、口腔内の自浄作用が低下することで間接的に歯周病のリスクを高める可能性も指摘されています。
心身の疲労が続いているときほど、お口の中の変化にも注意を向けたいものです。
歯周病の治療方法

歯周病の治療は進行度によって内容が異なります。ここでは初期と中等度以上に分けて解説します。
初期の歯周病に対する治療
歯肉炎や軽度の歯周炎の段階では、原因である歯垢や歯石を取り除くための歯周基本治療が中心です。
歯科医師や歯科衛生士による正しい歯磨き指導のもと、自宅でのプラークコントロールを徹底しつつ、歯科医院ではスケーリングと呼ばれる方法で歯石を除去していきます。
歯肉炎や軽度の歯周病であれば、この歯周基本治療だけで改善するケースも少なくないとされています。あわせて、歯の根の表面を滑らかにするルートプレーニングを行い、細菌が再び付着しにくい状態を整えることも重要な工程です。
中等度以上の歯周病に対する治療
歯周ポケットが深くなり、歯周基本治療だけでは汚れを除去しきれない場合には、外科的な処置が検討されます。
歯肉を切開して深い部分の歯石や汚染された組織を取り除く歯周外科治療のほか、失われた歯槽骨を再生させることを目的とした歯周組織再生療法が行われることもあります。
あわせて、ぐらついている歯には噛み合わせの調整や、隣の歯との固定といった処置が行われる場合もあります。
治療後は歯周ポケットの深さなどを再検査し、改善が確認できれば再発を防ぐためのメンテナンスへと移行していく流れが一般的です。
外科治療が必要と判断される場合でも、事前に十分な説明を受け、納得したうえで治療方針を決めていくことが望ましいでしょう。
歯周病の予防方法

歯周病を防ぐには、日々のセルフケアと歯科医院でのケアの両方が大切です。それぞれのポイントを見ましょう。
正しい方法で歯磨きをする

歯周病予防の基本は、原因となる歯垢を毎日きちんと取り除くことにあります。
歯ブラシの毛先を歯と歯肉の境目にしっかりと当て、力を入れすぎずに小刻みに動かすことが、汚れをしっかり落とすポイントです。
強い力で磨くと毛先が広がってしまい、かえって汚れが落ちにくくなるうえ、歯や歯肉を傷つける原因にもなります。
歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れを落としきれないため、デンタルフロスや歯間ブラシを併用することも効果的です。
自己流の歯磨きでは磨き残しが生じやすいため、歯科医院で自分に合った磨き方の指導を受けるのもよい方法でしょう。
定期的に歯科検診を受ける
歯周病は初期段階では自覚症状がほとんど出ないため、痛みや腫れを感じてから受診したのでは、すでに進行しているケースも少なくありません。
歯石は毎日の歯磨きだけでは取り除けないことから、歯科医院で定期的にクリーニングを受け、歯垢や歯石を専門的に除去してもらうことが欠かせません。
治療が終わった後も、3~6ヶ月ごとを目安にメンテナンスを継続することで、歯周病の再発を防ぎやすくなります。
歯周病は静かに進行する病気ともいわれるため、自覚症状の有無に関わらず、定期的な受診を習慣にしておくことが将来的な歯の健康を守ることにつながります。
忙しい日々のなかでは歯科通いが後回しになりがちですが、半年に一度など自分なりのペースを決めておくと、無理なく継続しやすくなるでしょう。
まとめ

歯が浮くような違和感は、歯周病が進行しているサインとして現れることもあれば、根尖性歯周炎や歯ぎしり、ストレスなど、歯周病以外の要因から生じることもあります。
原因が何であれ、違和感を放置すれば症状が悪化し、歯を失うリスクが高まる点は変わりません。
歯肉の腫れや出血、歯のぐらつきといったほかの症状が伴っていないかもあわせて確認し、少しでも異変を感じたら早めに歯科医院を受診しましょう。
歯周病によるものか、それ以外の原因によるものかは自己判断が難しいため、歯科医院でエックス線検査などを受け、原因を正しく見極めてもらうことも欠かせません。
普段から正しい歯磨きと定期的な歯科検診を続けることが、歯周病の予防につながり、健康な歯を長く保つ土台になります。
軽度なうちに治療を始められれば、歯周基本治療だけで改善が見込めるケースも多く、身体への負担も少なく済むといえるでしょう。
歯が浮くという何気ない違和感も見逃さず、身体からの小さなサインとして受け止めることが、将来の歯の健康を左右するといっても過言ではありません。
気になる症状があれば、ひとりで抱え込まず、早めに歯科医院へ相談してみてください。
参考文献
歯周病に関する資料|日本臨床歯周病学会会誌
歯周病が全身に及ぼす影響|日本臨床歯周病学会
歯周病とは|e-ヘルスネット
歯周病とは?|日本臨床歯周病学会
歯周病に関する情報|e-ヘルスネット
根尖性歯周炎とは|済生会
ブラキシズム|日本歯科医師会 テーマパーク8020
歯周病の治療方法|日本臨床歯周病学会
歯周病の予防と治療|e-ヘルスネット
歯のメインテナンス|日本臨床歯周病学会

