「チョコ」と「緑茶」どちらの方が「集中ホルモン」の分泌を促す?医師が徹底解説!
「チョコ」と「緑茶」どちらの方が集中ホルモンの分泌を促す?メディカルドック監修医が集中ホルモンの分泌を増やす食べ物などを解説します。
監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。内分泌代謝・糖尿病内科専門医。
「集中ホルモン」の正体とは?

「集中ホルモン」とは、集中力ややる気に関わる脳内の物質を、一般向けにわかりやすく呼んだ言葉で、医学的な正式名称ではありません。その正体は、脳の神経どうしが情報をやり取りするときに使う「神経伝達物質」で、代表的なものが「ドーパミン」と「ノルアドレナリン」です。ドーパミンは意欲や快感に、ノルアドレナリンは覚醒や注意力に深く関わります。なお「ホルモン」は血液に乗って全身に働く物質、「神経伝達物質」は神経の間で働く物質という違いがありますが、ノルアドレナリンのように両方の性質をもつものもあります。この記事では、これらをまとめて「集中ホルモン」と呼びながら、集中力と食べ物の関係を解説します。
集中ホルモンはどこから分泌されるの?

ドーパミンやノルアドレナリンは、主に脳の中で作られます。ノルアドレナリンを含む神経は「青斑核」という部分に多く集まっており、ここが活発になると頭が冴えて注意力が高まります。ノルアドレナリンは、脳だけでなく副腎からホルモンとしても分泌されます。これらの物質は、食べ物に含まれるアミノ酸の一種「チロシン」を材料に、体内で「チロシン→L-ドーパ→ドーパミン→ノルアドレナリン」という順に、酵素の働きによって作られます。この合成には、ビタミンB6や鉄などの栄養素も必要です。つまり、材料となるたんぱく質や、補助となる栄養が不足すると、これらの物質が作られにくくなる可能性があります。だからこそ、バランスのよい食事が集中力の土台として大切になるのです。
集中ホルモンの働き

ドーパミンやノルアドレナリンといった「集中ホルモン」は、やる気や注意力を支え、私たちが集中して物事に取り組めるよう働いています。ここでは代表的な5つの働きを紹介します。
やる気・意欲を生み出す
ドーパミンは「脳の報酬系」と呼ばれる仕組みの中心で、達成感や快感を感じさせ、やる気を引き出します。目標に向かって頑張れるのは、この働きのおかげです。
頭を覚醒させ、注意を向ける
ノルアドレナリンは脳を覚醒させ、必要な情報に注意を向ける働きがあります。新しい刺激に素早く反応し、ぼんやりした状態から集中モードへと切り替える役割を担います。程よく分泌されているときに、もっとも集中しやすくなると考えられています。
集中力・作業のパフォーマンスを支える
覚醒と注意の調整によって、作業中の集中力や、情報を一時的に覚えておく力(ワーキングメモリ)が保たれ、勉強や仕事の効率を支えます。
気分を整える
セロトニンという別の神経伝達物質が、ドーパミンやノルアドレナリンのはたらきを調整し、気分を安定させます。これら3つの物質はたがいに関係し合っており、バランスが崩れると、意欲の低下や気分の落ち込みにつながることがあります。落ち着いて集中するためには、気分が安定していることも大切です。
体を活動モードにする
ノルアドレナリンは交感神経を通じて心拍や血圧を上げ、体を活動に適した状態にします。いわば、心身を「頑張る」準備状態に整える働きです。ただし、緊張が強すぎると落ち着かなくなるため、程よいバランスを保つことが集中力には重要です。
集中ホルモンの分泌を増やす食べ物

集中に関わる脳内物質は、食べ物だけで直接どんどん増やせるわけではありませんが、その材料や、脳の働きを支える栄養をとることは大切です。ここでは、関連が指摘されている食品を紹介します。
大豆・卵・乳製品など(たんぱく質)
ドーパミンやノルアドレナリンの材料となるチロシンは、大豆製品、卵、乳製品、肉、魚などのたんぱく質に含まれます。これらの材料が不足すると、脳内物質も作られにくくなります。ただし「食べればすぐ集中力が上がる」わけではなく、あくまで材料の供給源として、毎日の食事で不足しないようにとることが大切です。
緑茶(カフェインとテアニン)
緑茶には、覚醒を促すカフェインと、うまみ成分であるアミノ酸「L-テアニン」が含まれます。この2つを一緒にとると、注意力や集中の感覚が高まりやすいとする研究が複数あります。L-テアニンには、カフェインによる過度な興奮をやわらげる働きも期待されています。ただし研究の結果は「有望だが決定的とまでは言えない」とされており、過度な期待は禁物です。
チョコレート・カカオ(カフェイン・フラバノール)
カカオには、カフェインや、それに似た成分のテオブロミン、ポリフェノールの一種「カカオフラバノール」が含まれます。フラバノールが脳の血流を高め、思考の速さや記憶を支える可能性が、主に高齢者を対象とした研究で報告されています。
青魚(DHA・EPA)
青魚に多いDHAやEPA(オメガ3系脂肪酸)は脳の構成成分ですが、サプリメントで集中力や認知機能が高まるという明確な証拠は、今のところ乏しいのが実情です。魚を含むバランスのよい食事の一部として位置づけましょう。
バナナ・ナッツなど(ビタミンB6・鉄)
神経伝達物質を作るには、材料のチロシンに加えて、ビタミンB6や鉄などが必要です。これらを含むバナナ、ナッツ、卵、赤身の肉などは、合成を支える栄養の補給源になります。
「チョコ」と「緑茶」どちらの方が集中ホルモンの分泌を促す?

「どちらが明確に優れている」と断定できる比較研究はなく、含まれる成分と目的によって向き・不向きが分かれます。
緑茶は「カフェイン+L-テアニン」の組み合わせで、短時間の覚醒や注意力の維持に向いており、L-テアニンにはカフェインの過度な興奮をやわらげる働きも期待されます。
一方チョコ(カカオ)は「カフェイン+カカオフラバノール」で、血流を通じて脳の働きを支える可能性が示されています。手早く頭をシャキッとさせたいなら緑茶、間食を兼ねてほっとしながら取り入れたいなら高カカオのチョコ、といった使い分けが現実的です。ただしどちらもカフェインを含むため、とりすぎには注意しましょう。いずれも効果は限定的で、睡眠や食事など生活全体の土台があってこそ、という点を忘れないことが大切です。
集中ホルモンの分泌を増やす食べ物を食べ過ぎると現れる症状

集中に良いとされる食べ物も、とり過ぎればかえって体調をくずすことがあります。「良いものだからたくさん食べれば良い」わけではない点に注意が必要です。
カフェインのとりすぎによる不調
コーヒーや緑茶、チョコなどに含まれるカフェインをとりすぎると、動悸、めまい、手の震え、不安、吐き気、そして不眠などが現れることがあります。集中しようとして飲みすぎると、かえって落ち着かなくなることもあります。
糖分のとりすぎによる血糖の乱れ
甘いチョコやお菓子を食べすぎると、血糖値が急に上がって急に下がり、かえって眠気やだるさを招くことがあります。また、肥満や虫歯の原因にもなります。
特定の食品への偏り
「集中に良い」とされる食品ばかりに偏ると、栄養バランスが崩れ、かえって体調を崩すことがあります。ある食品に含まれる成分が良いとされても、そればかりを大量にとるのは逆効果です。さまざまな食品を組み合わせ、何事も適量にするのが基本です。
集中ホルモンの分泌や生成を助ける食べ物を摂取する際の注意点

集中に役立つ食べ物を取り入れるときは、いくつか気をつけたい点があります。上手に活用するためのポイントを整理します。
カフェインは適量を守り、就寝前は控える
カフェインは、健康な大人で1日400mg程度(コーヒーなら約3~5杯)までが目安とされます。夕方以降や就寝前の摂取は睡眠を妨げ、翌日の集中力を下げるため控えましょう。
糖分に頼りすぎない
一時的な糖分補給は役立つこともありますが、頼りすぎは血糖の乱高下を招きます。ごはんやパンなど、ゆっくり吸収される炭水化物で、安定してエネルギーを補うのがおすすめです。
妊婦や子どもはとくに注意し、食事全体を整える
妊娠中の方は1日200mg程度までなど、カフェインの影響を受けやすい人は量にとくに注意が必要です。特定の食品に頼らず、たんぱく質・ビタミン・鉄などを含むバランスのよい食事を土台にすることが、集中力を支える近道です。
「集中ホルモンと食べ物」についてよくある質問

ここまで集中ホルモンと食べ物について紹介しました。ここでは「集中ホルモンと食べ物」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
頭がぼーっとする時は何を食べたらいいですか?
久高将太(医師)
脳の主なエネルギー源はブドウ糖で、これが不足すると集中力や記憶力が落ち、ぼんやりしやすくなります。まずは、適量のごはんやパンなどの炭水化物を含むバランスの良い朝食をとり、水分も補いましょう。必要に応じて、適量のカフェインも一時的な覚醒に役立ちます。
ただし「ぼーっとする」背景には、睡眠不足や脱水、食事の抜きすぎがあることが多いため、食べ物だけに頼らず、睡眠や生活リズムを見直すことも大切です。
集中力が足りない時は何が不足していることが多いですか?
久高将太(医師)
食べ物より先に、まず不足しがちなのは「睡眠」「朝食(エネルギー)」「水分」です。栄養面では、神経伝達物質の材料となるたんぱく質や、その合成を助けるビタミンB6、酸素を運ぶ鉄などが関わります。とくに鉄が不足して貧血になると、疲れやすさやだるさから集中しにくくなることがあります。心当たりがあれば、まず睡眠と食事の基本を整えることから始めましょう。
まとめ集中力を支える一番の土台は、睡眠・食事・水分
「集中ホルモン」とは、ドーパミンやノルアドレナリンといった集中力に関わる脳内物質を指す通俗的な呼び名で、正式な医学用語ではありません。これらの材料となるたんぱく質や、合成を支えるビタミンB6・鉄などをバランスよくとることは大切ですが、特定の食べ物を食べれば集中力が確実に上がる、という単純な話ではありません。
緑茶やカカオ(チョコ)は集中に役立つ可能性が研究されていますが、効果は限定的で、どちらもカフェインを含むため、とりすぎには注意が必要です。集中力を支える一番の土台となるのは、十分な睡眠、朝食を含むバランスのとれた食事、そしてこまめな水分補給です。
食べ物を上手に取り入れつつ、まずは生活習慣を整えることを心がけましょう。集中できない状態が長く続いたり、日常生活に支障が出たりする場合は、貧血や睡眠障害などが隠れていることもあるため、医療機関に相談してください。
「集中ホルモン」と関連する病気
「集中ホルモン」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
精神科の病気
不眠症睡眠障害うつ病注意欠如・多動症(ADHD)
内科の病気
甲状腺機能低下症鉄欠乏性貧血ドーパミンやノルアドレナリンなどの分泌やバランスの乱れは、睡眠障害や発達特性、内科的な代謝異常と深く関わっています。
「集中ホルモン」と関連する症状
「集中ホルモン」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
集中力の低下
日中の眠気
倦怠感疲れやすさ
頭がぼーっとするイライラ
ただの寝不足や疲労と見過ごされがちですが、頭のモヤモヤやイライラが続く場合はホルモンバランスの乱れが疑われます。
参考文献
ドパミン|厚生労働省e-ヘルスネット
ノルアドレナリン/ノルエピネフリン|厚生労働省e-ヘルスネット
オメガ3系脂肪酸|厚生労働省eJIM
カフェインの過剰摂取について|農林水産省
朝ごはんを食べないと?|農林水産省
鉄|厚生労働省e-ヘルスネット
