「太陽の色」は何色ですか? 「黄色」「赤色」ではありません…その意外な答え
もし未知の異星人から「あなたはどこから来ましたか?」と問われたら、どう答えますか?
「地球から」という回答は、宇宙規模の社交場では失笑を買ってしまうかもしれません。実は私たち地球人は、ある決定的な理由により、宇宙の平均レベルよりも科学の発達が遅れている可能性があるのです。
ファーストコンタクトの日に恥をかかないために必要なのは、地球の狭い常識ではなく、宇宙のどこへ行っても通用する「普遍的な教養」と「宇宙的思考法」です。
多種多様な異星人が行き交う宇宙ステーションで繰り広げられる、知的で刺激的な問いの数々。宇宙で真に求められる「本当の科学知識」とは一体どのようなものなのか、その知的な冒険の一端をぜひ覗いてみてください。
※本記事は、講談社『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう』(高水 裕一)の内容を抜粋・再編集したものです。
驚くべき太陽の色
では、私たちの太陽はいったい何色なのでしょうか? そんなことについて考えたこともないあなたは、自信なさそうにこう答えます。
「黄色、だと思います……」
たしかに晴れた空に輝く太陽はそう見えますので、地球人にとっての一般的なイメージはそんなところです。しかし残念ながら、この答えは間違いです。スペクトル的には、太陽の色はなんと「緑色」なのです! つまり、さまざまな波長の光のうち、緑色に見える波長の光をいちばん強く出しているということです。
このことは、光の色の足し算を考えればわかります。私たちが昼間に見上げる太陽は、たしかに黄色と言ってよいでしょう。しかし、私たちに届く黄色い光は、その前に大気に当たって散乱して、青い光が飛んでしまっています。だから空は青いのです。だとすると、もともとの光は何色でしょうか。黄色+青色=緑色となるのはわかりますよね。
ちなみに地球の植物が緑色なのは、緑色が好きだからではありません。その逆で、緑色は使えないので反射していて、われわれ人間はその波長の光に強く反応するので緑色に見えるのです。
さて、あなたは友人に間違った答えをしてしまいましたが、幸い、とくにまずいことにはならずにすみました。というのも、緑色であっても黄色であっても、星の分類では私たちの太陽はG型だからです。よかったです。さらによかったことに、答えを聞いて彼は、
「どうりで親近感が湧くわけですね」
と、うれしそうにしています。なんと彼の惑星の「太陽」も、同じG型星なのだそうです! そういえば、地球から約50光年離れたペガスス座51番星という恒星が、地球の太陽によく似たタイプであり、20世紀末にはそこで最初の太陽系外惑星が見つかって話題になったことを思い出しました。では、ひょっとしてこの人は、あの星から?
恒星の情報は宇宙のコモンセンス
ここでイメージしやすいように「太陽」の7つのタイプを言葉にしてみました。
OB型は重量型、F型は中量型といえます。
A型は宇宙で最も標準的な重さなので標準型です。
私たちの太陽を含むG型は軽量型です。
それより軽いK型は低温型、M型は極低温型と温度で表現してみました。ただしM型は特徴的で、赤色で軽いのにぶよぶよと大きいタイプが多いので巨大型ともいえます。
星になりかけのLYT型は未熟型といえます。
七福神にそれぞれキャラクターがあるように、これらの星を回る惑星に住んでいる人を七星人(あるいは七星神?)とイメージしていただくのもよいかもしれません。たとえばA型は、宇宙標準人種の「シリウス星人」、LYT型は、暗くて長寿の「根暗星人」なんて呼べるかもしれません。私たちのことは「ケンタウルス星人」と命名したくなります。
言葉が通じなくとも、7つの星を並べて描いて、重さや波長の違いなどを身振り手振りで説明すれば、きっと相手の宇宙人もあなたが何を言いたいのか、察してくれるはずです。それくらい星の分類は宇宙のどこでも通用する知識だと思います。もちろん分類のしかたなどに若干の差異はあるでしょうが、それを割り引いても、お互いの言語を教えあうよりもはるかに合理的に宇宙人と共有できるコモンセンスとなることは間違いありません。
たとえば緑色でG型の私たちの太陽なら、G型、K型、M型からなる三重連星(ケンタウルス座α)が周囲にあり、A型の星も1つある(シリウス)、という程度が、基本情報となります。相手の「太陽」の周囲にもいろいろな型の星があるはずです。それらの情報と、立体星座カタログなどを使った位置情報を交換すれば、とりあえず十分でしょう。
それができたらようやく、次のステップで「私はそのG型太陽を公転する惑星のうち、内側から3番目にある地球から来ました」という惑星談義が始まるわけです。
つまり、ああ、あのへんのG型星を回っている惑星のどれかね、ということが伝わればよく、実際に現地にロケットで乗り込むわけでもないかぎり、惑星についての情報はさしあたりは二の次ということです。最初に、まずは恒星の情報ありきと言ったのはそういうことです。
宇宙人が生まれやすい星はどのタイプか
7つのタイプのうち、宇宙で最も標準的な星は、さきほど「標準型」という言葉で分類したように、青白のA型であると思われています。質量は太陽の質量(以下、これを太陽質量といいます)の2~3倍です。代表的なものはシリウスやベガなどで、1等星の、かなり目立つものが多い印象です。その観点でいえばわれらが太陽は、標準的な星よりも暗い部類に属しているといえます。
青白のA型から黄・緑のG型までの星の死は、大型の星の場合の超新星爆発という壮絶な死に際とは異なり、比較的、静かに生涯の幕を閉じます。そして最終的には「白色矮星」という天体に変化します。白色矮星は質量が太陽程度で、半径は太陽の100分の1程度という非常に高密度になった天体です。自分の重さで原子がつぶれ、電子だけの「縮退圧」と呼ばれる特殊な圧力で身体を支えています。「死んで骨が残る」という生物の死と、どこかリンクしている気がする天体です。色も白色で、まさに「星の骨」のようです。
ところで、さきほどは各タイプの星の寿命として、オレンジ色のK型は200億~1000億、赤色のM型は1000億~10兆(!)と示しましたが、不思議に思われた方も多いのではないでしょうか。現在の宇宙の年齢は138億年といわれていますが、それよりもはるかに長いからです。星の年齢なんて、宇宙の年齢と比べるとごく短いものだろうと私たちは思ってしまいますが、じつはそうでもないということです。このM型星が燃え尽きる10兆年後が、宇宙が輝きを失うひとつの終焉といえます。宇宙の年齢もまだまだ先が長いですね。
私たちの太陽が生まれたのはおよそ46億年前で、残りの寿命はあと50億年くらいと見積もられています。トータルで約100億年は、宇宙年齢とオーダーとしてはほぼ同じです。残り半分の寿命が尽きると、太陽は最終的に赤い巨大な星に膨れあがってから、白色矮星になります。したがって地球の生命も、どんな種でもせいぜいあと30~40億年が限界というタイムリミットがあります。もちろん、そのころに人類が生存しているかは知るよしもありませんが。
星の色でタイプがわかると、宇宙人、つまり知的生命が存在する確率が高いのはどの星の惑星か、ということも推理できるようになります。生命が知的生命に進化するのに必要な時間と、その惑星の太陽の寿命を比較すればよいのです。
星は明るいほど早く燃え尽きるので短命という話をしました。実際、最も明るい青色のOB型星や、青白のA型星は、燃え尽きるまでの寿命が10億年もありません。地球は生命が誕生してからざっくり38億年といわれていますが、少なくとも最初の17億年間は、ごくごく単純な構造の原核生物しか存在していませんでした。ようやくいまから21億年前に細胞膜に包まれた真核生物が出現し、それらが現在のヒトなどの基礎となる多くの多細胞生物になったといわれています。とすると、仮にA型星の周囲に安定な惑星があり、さまざまな条件がそろって生命が生まれたとしても、多細胞生物にまで進化するには時間が全然足りないといえます。細菌の状態で、懸命に進化しようとしている途中でゲームオーバーといったところです。
そう考えるとOB型星やA型星では知的生命の出現はまず無理です。寿命が30億年のF型星でぎりぎり、というところですが、出現してすぐに星の寿命が尽きます。現実的には、明るさで上位のこの3タイプは、知的生命が出現する星の候補から外してもさしつかえないでしょう。
さらにいえば、逆に最も暗いタイプのLYT型星も、長寿という点では有力だとしても、生命をつくりだす「太陽」としては、エネルギー不足かもしれません。その周囲の惑星は、太陽と地球の距離よりはるかに太陽に近くなければ、生命をはぐくむ環境としては論外といえます。あくまで想像ですが、そういった太陽から小さいエネルギーしか受けられない環境は、極寒で、やはり単細胞生物のような単純なものしか生まれないのではないでしょうか。エネルギーが小さいと、環境変化も劇的なことが起きにくく、動物は進化しにくいでしょう。ただ、そのためにむしろ、植物の進化が進む可能性があったら面白いとは思います。
幸い「太陽」は長寿なので、惑星も長寿となり、やたら長寿の植物が進化を遂げて繁栄していたら……マーベルの映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に登場する木の宇宙人グルートが思い浮かびます。彼は仲間に何を聞かれても「ボクはグルート」としか答えられません。植物が知的進化してもせいぜいこの程度だろう、という人間の「上から目線」の設定に、私はなんだか切なくなるのですが。
こう考えてみると、宇宙人が存在しうる太陽のタイプは、G型、K型、M型のせいぜい3種、ということがいえるのかもしれません。ただし、これはあくまで「太陽」が1つと限ったときの話です。あとで述べるように連星、すなわち複数の太陽を考えると、ことはそう単純ではない気がします。
ところで、あなたの答え方がどうも自信なさそうだったので、友人は立体星座カタログと恒星スペクトル分類表を調べはじめました。そして、にっこりと笑ってこう言いました。
「ライオンのうんちは、緑色じゃないですか!」
あなたの顔は、真っ赤になってしまいました。
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