横浜・織田翔希も米国へ? 佐々木麟太郎に続き「米大学」を選ぶ高校球児が増えるワケ
10月22日のプロ野球ドラフト会議に向け、高校生、大学生のプロ志望届提出者の公表が始まった。高校生で最大の焦点となっているのが、夏の甲子園で大会史上最速の156キロをマークした織田翔希(横浜・投手)の進路である。【西尾典文/野球ライター】
【写真】横浜・織田翔希と、エナジックスポーツ時代のイーマン琉海(写真提供・プロアマ野球研究所)
相次ぐ米国進出
織田は早くからMLB球団の評価が高く、登板試合には日米のスカウトが数多く訪れていた。夏の甲子園準決勝で智弁和歌山に敗れた後、本人は進路について明言していない。横浜の村田浩明監督は「日本もメジャーも視野に入れながら進路を相談します」と話しており、NPB入りだけが選択肢ではない。

2年前には森井翔太郎(桐朋)がNPB12球団に、ドラフトで指名されても入団を辞退する意向を事前に伝えた。実際にNPBから指名されることはなく、翌年1月にアスレチックスとマイナー契約を結んでいる。織田が同じ道を選ぶケースも考えられる。
そして今年、米国を視野に入れているのは織田だけではない。高校生の進路に、これまでとは違う動きが広がり始めている。
アマチュアの現場で一緒になったNPB球団のスカウトはこう話す。
「これまで以上に日本の大学や社会人ではなく、米国の大学進学を目指す選手が増えています。春先に気になる選手について監督に話を聞いたところ、既に米国の大学に行く準備を進めていると言われました」
代表例は花巻東からスタンフォード大へ進んだ佐々木麟太郎である。同じ道を選ぶ選手は、その後も出てきている。
昨年春の甲子園でエナジックスポーツのリードオフマンとして活躍したイーマン琉海は、U18侍ジャパンの代表候補強化合宿にも招集され、サクラメント州立大への進学を決めた。昨年まで仙台大のエースだった佐藤幻瑛は、2025年12月にペンシルベニア州立大入りが発表されている。
実力のある選手なら奨学金も
その先にMLBドラフトという道がある。
昨年のNPBドラフトでは、佐々木がソフトバンクとDeNAから1位指名を受け、抽選でソフトバンクが交渉権を獲得。石川ケニー(ジョージア大)はオリックスから6位指名された。
2人は今年のMLBドラフトでも指名された。佐々木はマーリンズから8巡目、石川はレッズから13巡目で指名され、最終的に米国でのプロ入りを選んでいる。
今年メジャー昇格を果たした西田陸浮(ホワイトソックス)も、東北高卒業後に米国へ渡った。マウントフッド・コミュニティ・カレッジからオレゴン大へ進み、2023年のMLBドラフト11巡目でホワイトソックスから指名。今年5月にメジャーデビューを果たしている。
より早くメジャーを目指すなら、米国の大学へ進む。そんな考え方が日本の高校生にも広まりつつある。
米国の大学を選ぶ理由は、それだけではない。教え子が現在、米国の大学でプレーしている高校の監督はこう話す。
「留学するのにはお金がかかるというイメージが強いですが、実力のある選手は奨学金がもらえるケースも多いです。米国の大学生で将来性のある選手はスポンサーがつくことも少なくない。トップ層では大学生のうちから1億円以上のスポンサー収入を得ることもあるそうです。その点に魅力を感じる選手も増えてくると思いますね」
背景にある「NIL」
前述したイーマンは、エナジックスポーツを運営するエナジックとのスポンサー契約を発表している。佐藤も昨年の日米大学野球で米国代表を相手に好投し、現地での評価は高い。公表されてはいないが、今後大きなスポンサー契約を得る可能性もあるそうだ。
背景にあるのがNIL(Name, Image and Likeness)である。米国の大学スポーツでは、自身の名前や肖像などを活用した商業契約が認められている。
日本とは事情が異なる。日本学生野球憲章では、部員であることや学生野球を行うことへの対価として金品を受け取ることは原則として認められていない。
ただ、米国へ留学すれば誰でも自由にスポンサー収入を得られるわけではない。F-1ビザには就労に制限があり、契約内容や活動場所によって扱いは変わる。
甲子園から米国への流れ
メリットは金銭面に限らない。前出の指導者は続ける。
「仮に野球でメジャーやNPBのドラフトに指名されるほどのレベルに達することができなくても、ある程度のレベルの大学でプレーしていたとなれば就職の面でもかなり大きなプラスとなります。このあたりは日本の大学も同じですが、加えて語学についても強みになりますよね。野球だけではなくそういった将来のことを考えて米国の大学を選択する学生は増えていくと思います」
日本人選手を求めているのはMLB球団だけではない。日本人選手の代理人によると、夏の甲子園でのプレーを見た米国の大学から「渡米する意思はないか」と問い合わせを受けるケースが増えているという。
日本の大学、社会人、NPBだけが高校球児の進路ではなくなりつつある。野球だけでなく、学業や卒業後のキャリアまで考えれば、米国の大学が選択肢に入るのは自然な流れだ。甲子園で活躍した選手がそのまま米国へ向かう。そんなケースは今後さらに増えていくだろう。
西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
デイリー新潮編集部
