ファナックでも安川電機でもない…国策10.5兆円「フィジカルAI」で”目”や”関節”を提供する4社の名前

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日本株の投資テーマとなった国策「フィジカルAI」

フィジカルAIが、日本株の投資テーマの一つになりました。生成AIが文章や画像などデジタル空間を中心に発展してきたのに対し、フィジカルAIはAIが現実世界を認識・判断し、ロボットや機械を自律的に動かす技術です。工場や物流、建設など幅広い分野で人手不足を補い、生産性を高めることが期待されています。

フィジカルAIは政府の「日本成長戦略」における17の戦略分野のうち「AI・半導体」の主要技術として位置づけられています。政府は特にAIロボットを重視し、2040年に20兆円の市場獲得を目指すとともに、フィジカルAI関連で2040年度までに10.5兆円の官民投資を想定しています。「国策に売りなし」という格言が投資家にはよく知られています。だから日本株の投資テーマになっているのです。

フィジカルAIを人間になぞらえて分解

フィジカルAIを投資テーマとして考える際は、ロボットを人間の体に置き換えると分かりやすくなります。「頭脳」として判断をおこなう制御装置、「目」となるセンサー、「関節」や「骨格」に欠かせない精密部品を提供しているメーカーがあります。さらに、「筋肉」となるモーターや「身体」となる産業用ロボットメーカーがあります。そして、ロボットが実際に働く製造現場を支える工作機械メーカーも重要です。フィジカルAIは一社だけで完成する技術ではなく、日本企業が強みを持つ幅広い産業に恩恵が広がる可能性があります。

日本にはこれらの分野で高い技術力を持つ企業が数多く存在します。AIそのものでは米国企業が先行していても、AIを現実世界で「動かす」領域は日本が強みを発揮できる分野です。フィジカルAIについてはすでに筆者が一度記事にしております(参考記事:エヌビディアCEOが「生成AIの次」と断言…「フィジカルAI」で“逆襲”狙う日本株4銘柄)。本記事以前の記事とは別の銘柄をご紹介します。

フィジカルAIにも「見る」技術が欠かせない

「目」の役割を提供:キーエンス(東プ:6861)

フィジカルAIの「目」の役割を提供している企業です。フィジカルAIでは、AIがいくら賢くても、周囲の状況を正確に把握できなければロボットや機械を安全に動かすことができません。そこで重要になるのが、現実世界の情報を読み取るセンサーやカメラです。

キーエンスは、工場の自動化に使われる各種センサーや画像処理システム、測定器などを幅広く手掛けています。

例えば画像処理システムを使えば、カメラで製品を撮影して形状や位置を認識したり、傷や異物などの不良を発見したりできます。また、各種センサーによって物体の有無や距離、位置などを検知することも可能です。こうして得られた情報をもとにAIや制御装置が判断し、ロボットが「つかむ」「運ぶ」「組み立てる」といった動作を行います。

つまり、人間が目で周囲を確認してから手を動かすのと同じように、フィジカルAIでも「見る」技術が欠かせません。世界の工場で自動化・省人化が進み、ロボットがより高度な判断を求められるようになれば、現実世界を正確にデータ化するセンサーの重要性も高まります。その意味でキーエンスは、ロボットメーカーとは異なる角度からフィジカルAIの普及を支える有力な日本企業といえるでしょう。

1株8万円に迫る株価は個人投資家には単元株投資のハードルが高いであろうことを付け加えておきます。

企業ごとに得意分野が異なる、ロボットの「関節」

「関節」の役割を提供:ナブテスコ(東プ:6268)

フィジカルAIの「関節」の役割を提供している企業です。

同社の代表的な製品が、産業用ロボットなどに使われる精密減速機です。ロボットのモーターは高速で回転しますが、そのままでは力が弱く、腕を狙った位置で正確に止めることも難しくなります。そこで減速機を使って回転速度を落としながら力を大きくし、ロボットの腕や関節を力強く、正確に動かします。人間に例えるなら、モーターが「筋肉」、精密減速機がその力を動きに変える「関節」にあたります。ちなみに「筋肉」の役割を提供しているのは、以前の記事でご紹介したファナック(東プ:6954)や安川電機(東プ:6506)です。

ナブテスコの強みは「RV減速機」と呼ばれる精密減速機です。高い剛性と耐久性を持ち、大きな力を受け止められるため、自動車工場の溶接ロボットや重量物を扱う大型産業用ロボットなどで広く利用されています。AIによってロボットが高度な判断をできるようになっても、その判断どおりに腕を正確かつ安全に動かす機械技術は不可欠です。そのため、フィジカルAIの普及によってロボットの導入台数が増えれば、精密減速機の需要拡大も期待できます。

同じ精密減速機メーカーとして知られるのがハーモニック・ドライブ・システムズ(東プ:6324)。こちらも以前の記事でご紹介しています。両社の違いは得意とする領域にあります。ナブテスコのRV減速機は高い剛性と大きな負荷に耐えることを得意とし、主に中・大型産業用ロボットの肩や腕などに採用されています。一方、ハーモニック・ドライブ・システムズの「波動歯車装置」は、小型・軽量で高精度という特徴を持ち、比較的小さなロボットやロボットの手首部分、半導体製造装置などにも使われています。

つまり、ナブテスコは「力強い関節」、ハーモニック・ドライブ・システムズは「小型で精密な関節」に強い企業と考えると分かりやすいでしょう。一見役割は同じでも、得意分野が違うことでニーズが違います。

幅広い領域に「骨格」を提供

「骨格」の役割を提供:THK(東プ:6481)

フィジカルAIの「骨格」の役割を提供している企業です。同社を代表する製品が「LMガイド」と呼ばれる直線運動用の機械部品です。機械の中で部品をまっすぐ、滑らかに、しかも高い精度で動かすために使われており、工作機械や産業用ロボット、半導体製造装置など幅広い機械に採用されています。

人間が筋肉だけでは正確に体を動かせず、骨や関節によって動きを支えているように、ロボットや自動化設備にもモーターの力を正確な動きへ変える機械部品が必要です。LMガイドは、レールの上をブロックが滑らかに移動する仕組みで、摩擦を小さくしながら重量物を支え、高精度な直線運動を可能にします。いわば機械の動きを支える「骨格」や「レール」のような存在です。

フィジカルAIでは、AIがカメラやセンサーから得た情報をもとに判断し、ロボットや機械を現実世界で動かします。しかし、AIがどれほど高度になっても、指示された位置まで機械を正確かつ滑らかに動かせなければ意味がありません。そこでTHKが長年培ってきた直動技術が重要になります。

また、THKはLMガイドだけでなく、ボールねじやアクチュエータなど、機械の動きを支える幅広い製品を展開しています。さらにロボット関連分野にも取り組んでおり、単なる機械部品メーカーから、自動化・ロボット化を支える企業へ事業領域を広げています。

フィジカルAIの「働く場所」といえば…

「職場」を提供:DMG森精機(東プ:6141)

工作機械メーカーの世界大手であり、フィジカルAIを人間に例えるなら「働く場所」を提供する企業と考えることができます。前身は1948年に奈良県で設立された森精機製作所です。当初は繊維機械を製造していましたが、1958年に工作機械の製造を開始。その後、NC旋盤やマシニングセンタなどへ事業を広げ、海外展開も進めました。2009年にはドイツの大手工作機械メーカー、ギルデマイスター(現DMG MORI AG)との資本・業務提携を開始し、現在では日本とドイツを基盤に世界で事業を展開する工作機械メーカーとなっています。

同社が手掛ける工作機械は、自動車や航空機、半導体製造装置などに使われる金属部品を、削る、穴を開ける、研磨するといった方法で高精度に加工する設備です。近年は5軸加工機や複合加工機に加え、ロボットによる材料の搬送や加工品の取り出し、測定などを組み合わせ、工場の自動化を進めています。

フィジカルAIを人間に例えると、AIが「頭脳」、センサーが「目」、モーターが「筋肉」、減速機が「関節」、直動部品が「骨格」にあたります。しかし、それらがそろっても、実際に仕事をする設備や生産現場がなければ価値を生み出せません。DMG森精機の工作機械は、AIやロボットが実際に加工という仕事を行う「職場」に相当します。

今後、AIが加工状況を判断し、ロボットが材料を運び、工作機械が自律的に加工条件を調整するといったスマートファクトリーが広がれば、工作機械そのものもさらに賢くなっていきます。フィジカルAI普及の恩恵を受ける企業だと考えます。

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さかえだいくこ(おせちーず)

大学常勤講師/日本FP協会認定CFP®/日本証券アナリスト協会認定証券アナリスト

21歳で証券会社に口座を開設して以来、証券アナリストだった時代を除きずっと個人投資家。投資家歴は30年超。現在50代で北東北在住。

大学卒業後、システムエンジニア15年、証券アナリスト7年半、地方公務員5年半を経験し、49歳でフルタイムワークからいったん卒業。しかし50歳目前で、某企業の研究員として週休3日の会社員に復帰。その後、地元の大学で非常勤講師としてキャリア教育にも従事し、53歳で常勤講師となる。合間に投資の講師や投資ライター業も営む。SMBC日興証券「日興フロッギー」にてコラム連載中。

MBA保持者でTOEICは950点。地方移住とがんを克服した経験もある。『2倍株・3倍株がぽこぽこ生まれる のんびり日本株投資』(すばる舎)が初の著書。

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