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「安価なだけでなく速いクルマも作れます」

ミドルクラスのサルーンとして、強力な5.4L V8エンジンを他社に先駆けて搭載したAMC ランブラー・レベル。実験的に、燃料インジェクション仕様も用意された。アメリカのベンディックス社が開発した技術で、最高出力は292psまで高められていた。

【画像】現存20台の希少な先駆けマッスルカー AMC ランブラー・レベル 同時期のアメリカ車たち 全100枚

しかし信頼性に欠け、販売されたのは極少数。この技術は手放され、ドイツのボッシュ社が購入し、皮肉にも成功したDジェトロニック・システムの基盤となっている。


AMC ランブラー・レベル(1957年/北米仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

1957年2月、デイトナビーチで競われたデイトナ・スピードウイークへ向けて、AMCが準備したランブラー・レベルは、丸いエアクリーナー・ボックスが載ったキャブレター仕様。自動車ジャーナリスト20名を集めた、ドラッグレース・イベントが設けられた。

モーター・ライフ誌を代表して挑んだケン・ファーモイル氏は、0-400mを17.8秒で走破。モーター・トレンド誌のジョー・ウェリー氏は、177.0km/hの最高速度を残し、「AMCは安価なだけでなく速いクルマも作れます」と伝えている。

まだ珍しかった本格的なエアコンも

とはいえランブラー・レベルは、通常のランブラーより360ドル高い、2786ドル。クラス上のプリマス・フューリーより139ドル安い程度で、V8エンジンのシボレー・ベルエアより明らかに高かった。

そのかわり、装備は充実。塗装はシルバーで統一され、ボディサイドはゴールド・アルマイトのトリムが飾った。ラジオとヒーター、時計、フロントガラス・ウオッシャーが標準。フロントシートは、輝く糸で縫製されたビニールとナイロンが包んだ。


AMC ランブラー・レベル(1957年/北米仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

パッド入りのダッシュボードや、シートベルトはオプション。チャイルドロック機構も指定でき、345ドルを追加すれば、まだ珍しかった本格的なエアコンも実装できた。

今回ご登場願ったランブラー・レベルは、グレートブリテン島南西部、ウィルトシャー州カルネの自動車博物館へ最近まで飾られていた車両。ラインオフ後はアメリカ・カリフォルニア州で過ごし、14年前にレストアを受け、英国へ運ばれている。

開いた窓へ左腕を載せて運転したくなる

現存数は全世界でも約20台と、ランブラー・レベルは超希少。どの程度の馬力が残っているのかは不明だが、70年前のアメリカン・サルーンとは思えないほど、加速は鋭い。

実際、新車時の0-97km/h加速は7.5秒が主張された。同時期のベルエアは8.7秒、フューリーは8.0秒と届かず。クライスラー300Cでも、7.6秒だった。


AMC ランブラー・レベル(1957年/北米仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

スタイリングは、クロームメッキが当時としては抑えられ、テールフィンも控えめで、好ましく感じる人は多いのではないだろうか。スクエアなフォルムで、1950年代のアメリカでも目を引く存在だったと想像できる。サイドミラーも四角い。

フロントシートは幅の広いベンチ。ステアリングホイールは大径で、ホーンリングが内側を巡る。前面に広がるのは、パッド入りのダッシュボード。フロントガラスは湾曲し視界が広く、自然と開いた窓へ左腕を載せて運転したくなる。

強烈な怒号を放ち始まる、豪快な加速

メーターパネルには、10マイル刻みで1、2、3と目盛りが振られたスピードだけ。燃料計と水温計、油圧計などが一体になっている。その下には、エアコンの操作パネル。このクルマの場合、現代的なシステムへ換装済みだ。

エンジンを始動させると、2本出しのテールパイプから驚くほど図太いV8サウンドが放たれる。アクセルペダルを軽く傾けるだけで、ボディが身震いするのがわかる。サスペンションが、相応に柔らかいことも。


AMC ランブラー・レベル(1957年/北米仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

4速ATは、2速への変速時に僅かなショックを伴うものの、それ以外はシームレス。ひとたび右足を深く傾ければ、V8エンジンは強烈な怒号を放ち、豪快な加速が始まる。

ウィルトシャー州の田舎道は、さながらデイトナビーチのストレートへ変身。軽すぎないステアリングは滑らかでも、遊びは大きく、まっすぐ走るにも細かな補正で忙しい。

明らかにマッスルカーの先駆けにあった

カーブではボディロールが大きいとはいえ、操縦性は想像以上。挙動はニュートラルで、前後タイヤの頼もしいグリップを実感できる。同時期のジャガーMk1には届かずとも、ボディの落ち着きも悪くない。AMC自慢の、モノコック構造の効果だろう。

サーボアシストの備わる、ブレーキも強力。しばらく飛ばしていたら、フェードしかけたが。乗り心地は極めて上質で、過剰な揺れは伴わず、路面の凹凸が均される。


AMC ランブラー・レベル(1957年/北米仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

1950年代の世界には、まだマッスルカーという言葉は存在しなかった。比較的小さく軽いボディに、強力なV8エンジンを搭載したランブラー・レベルは、明らかにその先駆けにあった。ところが、AMCはこのパッケージングを発展させなかった。

販売は1年に限られ、生産数は1500台。マッスルカー・ブームが最高潮に達した約10年後、AMC AMXは登場するが、大きな話題を巻き起こすことはなかった。

協力:アトウェル・ウィルソン自動車博物館

AMC ランブラー・レベル(1957年/北米仕様)のスペック

北米価格:2786ドル(新車時)/2万7000ドル(約432万円)以下(現在)
生産数:1500台
全長:5052mm
全幅:1812mm
全高:1485mm
最高速度:185km/h
0-97km/h加速:7.5秒
燃費:6.2km/L
CO2排出量:-g/km
車両重量:1496kg
パワートレイン:V型8気筒5358cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:258ps/4700rpm
最大トルク:47.6kg-m/2600rpm
ギアボックス:4速オートマティック/後輪駆動


AMC ランブラー・レベル(1957年/北米仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)