「松下洸平さんのクセのある家康が生まれた理由」「山田涼介さんに求めた秀次のプリンス感と危うさ」『豊臣兄弟!』制作統括・松川博敬が明かす、秀長・秀吉に生じる「ずれ」とは
<天下一の補佐役>豊臣秀長(仲野太賀)の視点から、戦国の世をダイナミックに描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合 毎週日曜 午後8時から ほか)。物語も後半に入り、残すところあと3分の1に。秀吉(池松壮亮)・秀長兄弟が天下一統に向けて歩みを進めるなか、最強の宿敵・徳川家康(松下洸平)という人物に迫った第34回「最強のライバル」がまもなく放送されます。そこで放送を前に、本作をより深く味わうための手がかりとして、「豊臣兄弟!」制作統括を務める松川博敬チーフプロデューサーにお話を伺いました。(構成:婦人公論.jp編集部)
【写真】山田涼介さん演じる、プリンス感漂う豊臣秀次(三好信吉)
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不遇の人・徳川家康を丁寧に描いた第34回
第34回、35回では小牧・長久手の戦いを描きますが、特に34回は徳川家康を主軸にした、かなり異色の回になっています。
小牧・長久手の戦いは、羽柴と徳川の大決戦です。松下洸平さんがこれまで演じてきたクセのある家康が、どうして「羽柴と戦って全面戦争してやる!」と熱くなるのか。そこはまず、丁寧に描く必要があると思いました。
家康はこれまで、不遇の半生を送ってきた人物です。息子も妻も殺さなければならず、それでも生き残るためにずっと我慢してきた。羽柴兄弟からのプレッシャーに対しても、「もう飲むしかない」と諦めているようなところがありました。
第34回では、そんな家康が立ち上がります。松下さんの演じるひねくれた家康も、これまでの人生を知ると、「なるほど、こういう過去があったから、こういうキャラクターになったんだ」と納得してもらえるはずです。

(『豊臣兄弟!』/(c)NHK)
そして第35回が、小牧・長久手の決戦。そこでいよいよ家康の本領が発揮されます。第34回、35回と、家康との対決をしっかり描いていきますので、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。
当たり前のキャスティングをしない
キャスティングでは一貫して、「当たり前のキャスティングをしない」ということを意識しています。ちょっと意外なところを狙って、そこで生まれる化学反応を楽しみたいと思っているんです。
千利休役の吉岡秀隆さんも、まさにそうでした。千利休はとても有名な人物なので、一般的なイメージでキャスティングすることもできます。ただ、脚本家の八津弘幸さんが描く千利休がどういう人物で、物語の中でどういう役割を担うのかが見えてこないと、なかなか決められませんでした。
実際、吉岡さんの決定はかなり遅くなりました。第33回の脚本が上がり、千利休の人物像が見えてきた段階で、「吉岡さんにお願いしたい」とチームで決めて、オファーしました。

(『豊臣兄弟!』/(c)NHK)
完成した千利休は、すごく魅力的です。立場を超えて臆することなく意見が言えて、とても柔らかく、軽やかなキャラクターになっています。
何か大事なヒントを与えたり、家康との会談の場をセッティングしたり、表立って動くというより、いろいろな人の話を聞きながら、最後にぽろっと本質的なことを言う。そんなポジションですね。関西弁にも挑戦していただいていて、吉岡さんの新たな一面が見られると思います。
山田涼介が醸し出す「プリンス感」と「危うさ」
山田涼介さん演じる豊臣秀次も、今回のキャスティングの面白さが出ている役です。秀次はプリンス感、気高さや華やかさがありながら、ちょっと危なっかしい感じがある。その鋭さと危うさもあわせもつイメージがぴったりだったことが、山田さんにお願いした理由です。
秀次は、自分が秀吉の後継者になると自覚していて、かなりプライドが高い人物です。ただ、その中で少しずつ歯車が狂っていく。さらに秀長に対するジェラシーもあります。
自分は後継者なんだから、その座を奪われるはずはないと思っている。でも、秀吉のすぐそばにいて、ずっと秀吉を支えてきた秀長には、やはり対抗心を燃やしている。兄弟の確執に秀次がちょっと暗躍するようなストーリーになっていきます。
そして秀次自身にも、この先さらにクライシスが訪れます。自分が後継者になれないかもしれないという状況になり、焦りも生まれてくる。
家康という外からのライバルとの対決のあとには、豊臣家の中に秀次という新しい「内なる敵」が出てくる。秀吉、秀長、そして秀次。この三者の関係が、後半の大きな見どころの一つになっていくと思います。
終盤は濃厚な人間ドラマに
物語の後半になると、合戦という意味での大きな見せ場は、だんだん少なくなっていきます。ただ、ここからがさらに面白くなると思っています。
合戦が減るぶん、人間同士のドラマが濃厚になっていくからです。『豊臣兄弟!』はキャラクターが面白いので、八津さんが毎回、ハズレのない脚本を上げてきてくれている。そこは本当にすごいなと思っています。
特に、秀長と秀吉の関係には、少しずつずれが出てきます。単純に秀吉が狂気や孤独に陥って暴君となり、周囲が犠牲になっていくという描き方ではありません。根っこは変わらないけれど、立場が変わったことで、さまざまなプレッシャーが生まれ、少し道に迷ってしまう。そこから、兄弟の関係にもずれが生じていきます。

松川博敬チーフプロデューサー (『豊臣兄弟!』/(c)NHK)
最終回については、まだ詰めているところですが、主人公がいない最終回というのは、やはりありえないと思っています。秀長の死後をどう描くのか、主要なキャラクターたちのその後も含めて、きちんと最後まで描きたいですね。
僕たちは、生み出したキャラクターをフェードアウトさせるのではなく、死ぬところを描くこともあれば、そうでなくても最後の見せ場を作って送り出していくことを大切にしています。
たくさんのキャラクターが生まれたからこそ、最後までしっかりと描き切りたいと思っています。
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大河ドラマ第65作「豊臣兄弟!」で描くのは、戦国時代のど真ん中。強い絆で天下統一という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡──夢と希望の下剋上サクセスストーリー!!
主人公は天下人の弟・豊臣秀長。
歴史にif(もしも)はないものの、『秀長が長生きしていれば豊臣家の天下は安泰だった』とまでいわしめた天下一の補佐役・秀長の目線で戦国時代をダイナミックに描く波乱万丈のエンターテインメント!
秀長を仲野太賀、秀吉を池松壮亮が演じ、脚本は八津弘幸、語りは安藤サクラが担当する。

