ドライブスルーの“入れ忘れ”に「家まで届けろ」はカスハラか?「客も確認すべき」で意見真っぷたつ…企業と専門家の意外な見解

写真拡大

客からの苦情や要求は、どこからが「カスハラ」になるのか。ドライブスルーでの商品の入れ忘れをめぐる身近なケースから、企業と専門家にその境界を聞いた。

【画像】「すき家は“プリン”がいちばん美味い」意外なメニューがSNSでも話題に

ドライブスルーで入れ忘れ「家まで届けてほしい」はカスハラ?

10月1日から、事業者に対しカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が義務化される。

事業者には今後、カスハラに毅然と対応して従業員を守る方針を明確にしたり、相談体制を整えたり、悪質なカスハラへの対処方針を定めたりすることなどが求められる。

そうなると気になるのが、「客からの要望や苦情」と「カスハラ」の境界線だ。

先日、SNS上では、ドライブスルーで商品を受け取ったあと、注文した商品やストロー、ガムシロップなどが入っていなかったため、店舗へ電話で対応を求めたところ、最終的に「パワーハラスメントですので電話を切らせていただきます」と告げられた、という体験談が話題となった。

投稿者は「届けてほしい」とは要求していなかったようだが、寄せられたコメントの中には、届けるべきだろうという意見もあった。確かに、間違えられたほうがわざわざお店まで取りに戻らなくてはいけないのも理不尽ではある。

仮に「店側のミスなのだから、不足しているものを家まで届けてほしい」と求めたとしたら、カスハラにあたってしまうだろうか。

SNSでも、「店側のミスなら届けてもらって当然」「なぜ客が取りに戻らなければならないのか」という意見がある一方、「そこまで要求するのはやりすぎ」「自分で取りに戻ればいい」「テイクアウトなら受け取った時点で自分でも確認するべき」といった声もあり、意見は分かれている。

では、企業側はこうしたケースをどう考えているのか。

テイクアウトやドライブスルーの利用客も多い牛丼チェーン「すき家」などを展開するゼンショーホールディングスに聞いた。

同社によると、ドライブスルーやテイクアウトで商品や付属品などの入れ忘れがあった場合、「ご対応内容はケースによって異なります」としたうえで、

「お客様から申し出をいただいた際は、状況を確認したうえで、お客様とご相談・同意のもと適切な対応を行っています」

と回答した。

返金や再来店時の提供、店舗からのお届けなどについては一定の基準を設けているというが、その詳細については回答を差し控えるという。

どこからカスハラになるのか…専門家の見解

では、「不足している商品を自宅まで届けてほしい」と求めること自体は、カスハラになるのか。

この点については、明確な回答が返ってきた。

「お客様に完全な商品をご提供することは店舗の責任であると考えています。そのため、店舗側の不備に対して不足商品のお届けをご希望されることに対しては、カスハラと判断はしません」

つまり、少なくとも「届けてほしい」と申し出ること自体を、カスハラとみなしているわけではない。

ただ、実際の店舗でいつでも希望どおりの対応ができるとは限らないだろう。

ファストフード店などでは、限られた人数で店舗を回しているケースもある。すでに店を離れた客のもとまで、不足した商品をすぐに届けるのが難しい場合もあるはずだ。また、入れ忘れがあったかどうかを、その場で店舗側が確認できないケースも考えられる。

「届けてほしい」と申し出ること自体と、その要求をどこまで、どのような形で求め続けるかは、利用者側も考える必要がありそうだ。

では、どこからがカスハラになるのだろうか。

日本クレーム対応協会の代表理事・谷厚志氏も、「自宅まで届けてほしい」と伝えること自体については、「カスタマーハラスメントには該当しません」と話す。

谷氏によれば、状況によっては客の指定場所まで不足商品を届けるマニュアルを整備している企業もあるという。

ただし、大切なのは、その“求め方”だ。

「要求する際に必要以上に威圧的、感情的な態度は控え、落ち着いて不足分を伝えることで、双方が気持ちよく解決に向かえるようになります」

店側にミスがあったとしても、それを理由に客側の言動が何でも許されるわけではない。

谷氏は、「何をやっている!」などの恫喝や、「サービスしろ!」といった過度な要求については、カスハラに該当すると指摘する。

カスハラになるかどうか、分かれるポイントとは?

「カスハラ認定ポイントは“言い方”と“要求の強度”です。商品やサービスに不備があったことを伝える際は相手を責めるのではなく、『私は今、こういう状況で困っています』と自分の困りごとを示すことが大切です」

カスハラ対策が強化されるからといって、客が店に要望を伝えること自体ができなくなるわけではない。

だが一方で、「店側が悪いのだから何を言ってもいい」というわけでもない。

10月から企業のカスハラ対策が本格化するなか、「何を求めるか」だけでなく、「どう求めるか」も意識する必要がありそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部