富士山が自然遺産ではなく「文化遺産」で世界遺産登録された理由と25の構成資産

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【富士山】信仰の対象と芸術の源泉

富士山が特別な本当の理由

 富士山は標高3776mの独立した成層火山で、裾野から山頂へと続く端正な姿が特徴です。日本最高峰の美しく雄大な姿は、日本を象徴する風景のひとつとして親しまれてきました。しかし、世界遺産には「自然遺産」ではなく「文化遺産」として登録され、富士山が「信仰の対象」であると同時に「芸術の源泉」として日本文化の形成に深く関わってきた点が評価されています。

 富士山は約5600年前から3500年前にかけて、現在の円錐形を形成しました。噴火や溶岩流出を繰り返す姿に、古くから人々は畏敬の念を抱き、神が宿る山として、遠くから拝む遥拝の対象としてきました。11世紀後半になると「修験道」の聖地として登拝が広がり、富士山は「遠くから拝む山」と同時に「登って拝む山」へと位置付けを変化させていきます。

さらにその美しい姿は、文学や絵画など、さまざまな芸術作品に影響を与えてきました。江戸時代には葛飾北斎や歌川広重が富士山を描き、それらの浮世絵は海外にも広まり、西洋の芸術家たちにも影響を与えたといわれています。

 こうした「信仰」と「芸術」を支えた景観全体が評価され、世界遺産には富士山本宮浅間大社や白糸ノ滝、湖沼群、遠く離れた三保松原まで計25の構成資産が登録されています。

ここがスゴイ!認定ポイント「数々の文学や絵画に取り上げられてきた」

富士山は、和歌や物語、浮世絵など、時代ごとにさまざまな形で描かれてきました。

物語や和歌

【万葉集】

富士を詠む歌から、特別な山とみなされていたことがうかがえる。

【竹取物語】

不死の薬を燃やした山として山名の由来と結び付けて描かれている

浮世絵

【東海道五十三次】

富士山の遠景を含む、東海道の宿場を描いた歌川広重の浮世絵。

【富嶽三十六景】

葛飾北斎の浮世絵。人気の余り十図が追加され、全部で四十六図に!

山の価値が人々の眼差しにより評価されるとは実に奥深い

信仰の対象としての富士山

遥拝から登拝の対象に

 富士山は古くから神が宿る山とされ、遠くから拝む遥拝の対象でした。11世紀後半に噴火が鎮静化すると、修験道の場として登拝が広がり、江戸時代には信仰集団である富士講が庶民の間で生まれます。

富士山信仰の総本宮

 世界遺産の構成資産である富士山本宮浅間大社は、富士山の噴火を鎮める神の力があると信じられ、人々の信仰を集めてきました。富士山信仰が広がるにつれ、浅間神社は全国に広がっていきます。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』監修:宮澤 光

【監修者紹介】
宮澤 光(みやざわ・ひかる)
NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員。北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。跡見学園女子大学非常勤講師。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。