静岡県小山町のサーモン陸上養殖施設(プロキシマー提供)

 静岡県は大学や企業と協力し、サーモンの大規模な陸上養殖施設で廃棄される魚の血液から、人間用の鉄サプリを作る研究を始めた。プロジェクトの中心となる県工業技術研究所の主任研究員長房秀幸さん(35)は「現在の鉄剤は豚の血液を原料とするものが多い。宗教上の理由での需要も狙えるのではないか」と意気込む。(共同通信=斉藤祥乃)

 同県では小山町に2023年、年間5300トンを出荷する大規模なサーモン養殖施設が完成。2024年にはNTTグループの会社が磐田市で新たにエビ養殖施設を建設するなど、陸上養殖が広がっている。気候に左右されず、一年を通じて出荷できると期待される一方、廃棄物の処理コストなど課題が多い。特に小山町の施設では出荷時の生け締めで発生する大量の血液の処理が、問題になってきた。

 海洋産業を支援する県関連機関に所属する村瀬輝昭さん(63)は、以前勤めていた食品製造会社で缶詰製造に携わった経験から、こうした課題を把握。養殖関係者から「海外では血液を鉄剤の原料にする動きがある」との情報を得て、長房さんに声をかけ、プロジェクトが立ち上がった。

 2026~28年度、同研究所や静岡大、京都大などが連携して研究を進める。まずサーモンの血液成分を分析。有効成分を抽出する技術やマウスなどに摂取させた際の効果などを調べた上、民間企業へ技術提供し、製品化を目指す。

 連携する機関をまとめるコーディネーターとなった村瀬さんは「陸上養殖は次世代の産業につながる事業。収益性を上げ、企業の参入を促したい」と期待を口にした。

鉄サプリの原料として研究されているサーモンの血液。右は血液を乾燥させた粉末