「理屈はやっているほうもよくわからない」指で体を擦って刺激する激痛の治癒法「業捨」とは? 真言密教ルーツの施術

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すべては自業自得

我ながら、業深い人生である。

お肌に悪いと思っていながら、酒もタバコもやめられない。さらに最近は、モノへの執着も高まり、気に入っている食品やアイテムが品切れになるかもしれないという強迫観念から、まとめ買いをしてはムダにするという行動を繰り返してしまっている。さらには、世に認められたいという欲もあり、キャパ以上の仕事を引き受けたことで肩こりが慢性化し、免疫低下で咳が続いている。年を追うごとに高まる美や若さへの執着だって、少なからずストレスになっている。

空海が伝えた真言密教によると、「業(カルマ)」とは自らの行動・発言・考えのことを指し、それによってもたらされる結果を「業報」というらしい。ちなみに、前世の悪行の因果で現世に苦しみがもたらされるという説もあるが、お釈迦さんはそう説いてはいないとも言われる。すべては自業自得なのである。

自分の業から解き放たれたい-そんな思いに駆られていたなか、物理学者の保江邦夫氏の著書で「業捨」を知った。1980年代に谷原弘倫氏が創始した、指で体を擦って刺激する治癒法だ。

ネット検索すると、業捨の体験動画がいくつか出てきた。体験者は施術中、一様に苦悶の表情を浮かべている。しかし不思議なことに、体験者の体を擦るその指に力が込められているようではなく、軽く撫でているようにしか見えないのだ。なんでも、業深い人間ほど、激しい痛みに襲われるのだとか……。

空海さんも酒を飲むのか…

長年、私の体に深く染みついた業を引き剥がすには、この苦行が必要なのではないか。運命に導かれた気がして、私より業深そうな本連載の構成担当・O氏(46歳男性)とともに、世界唯一の継承者が施術所を開設する群馬県前橋市に向かった。

「YouTuberが大げさに言ってるだけっしょ。俺は中国で本場の刮痧も受けた。あれは牛の角で擦るから指なんかより痛いはずだけど、ぜんぜん余裕だったね」

O氏は道中、そうタカを括っていた。彼はこの時点では、数時間後にまるで春先のメス猫のような奇声を上げながら体を捩るハメになることを知る由も無い……。

前橋駅前でタクシーに乗り込み、運転手さんに住所を伝えると「ああ、あそこね」という反応が返ってきた。

「遠方から通われている方もいるみたいですよ。ちょっと前にも、四国から通っているっていうお客さんを乗せました。かなり痛いけど、すごく効くんだってね」

目的地に近づくにつれ、施術への恐怖と期待が高まった。

施術所の扉を開けて圧倒されたのは、我々を見下ろすように鎮座する木彫りの空海像だった。像の手前にふと目をやると、ウィスキーや地酒がお供えされている。空海さんも酒を飲むのか……。ここに来るまで「業を捨てなければ」と意気込んでいたのだが、少しだけ緊張がゆるんだ。

焼けるような痛みが…

「業を捨てるのは難しいことではなく、『ご自愛しましょう』ということ。これまでに悪い習慣によって溜まった業を洗い流すイメージです」

そう話すのは、業捨の継承者、神原徹成氏だ。真言密教ルーツの施術と聞いて、仙人みたいな気難しい人が出てくるのかと思いきや、気さくな先生で安心した。

「刮痧や、コインで体を擦るものなど、似たような施術は世界中にあります。血流を促すとか筋膜を剥がすとか、効能のメカニズムについてはいろいろ言われていますが、正直、理屈はやっているほうもよくわからないんですよね。効果を感じられる人に続けてもらえれば」(神原氏)

あまりの痛さに一度で懲りてしまうお客さんが多い反面、月1回程度の頻度で通うお客さんも多いという。なかには、アトピー性皮膚炎に悩む現役のお医者さんもいるそうだ。

さっそく施術室に移動し、ツルツルしたシャツに着替えて施術台に仰向けになった。右手首を横方向に繰り返しスナップさせる神原氏の指先が、腹部を撫でていく。「これならいけるかな?」と思ったのも束の間、数秒後には焼けるような痛みが襲ってきた。

皮膚を摩擦されているのとも、骨やツボを押されているのとも違う、独特の痛みだ。いうなれば熱いスプーンで、皮下にある澱みを掬い取られているような感覚だ。施術時間は30分だというが、耐えられるだろうか……。 (次回につづく)

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角由紀子(すみ・ゆきこ)/'82年生まれのオカルト系編集者。上智大中退。不思議系ウェブサイト『TOCANA』元編集長。YouTubeチャンネル『角由紀子のヤバイ帝国』は登録者数約45万人。著書『引き寄せの法則を全部やったら、効きすぎて人生バグりかけた話』(扶桑社)が大ヒット中

「週刊現代」2026年9月14日号より

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