地下1.6kmに設置されたダークマター検出器が「1つの奇妙な粒子」を検出したと報告

by Matthew Kapust/Sanford Underground Research Facility
ダークマター(暗黒物質)は宇宙の物質エネルギーの約25%、質量の約85%を占めるとされる仮説上の物質です。そんなダークマターを観測するためのダークマター検出器「LUX-ZEPLIN(LZ)」が、1つの奇妙な粒子を検出したと報告されています。
LZ_Preprint_260901_Dark_Matter_EFT_Nuclear_Recoil_Search_at_Higher_Energies.pdf
LZ Sees Surprising Result in Search for Dark Matter | Department of Energy
https://www.energy.gov/science/articles/lz-sees-surprising-result-search-dark-matter
LZ experiment sees surprising result in search for dark matter | Brown University
https://www.brown.edu/news/2026-09-01/lz-dark-matter-results
World’s biggest dark matter detector spots a single weird particle | Science | AAAS
https://www.science.org/content/article/world-s-biggest-dark-matter-detector-spots-single-weird-particle
ダークマターは天文学者のフリッツ・ツビッキー氏が1930年代に提唱した仮説上の物質です。ツビッキー氏は、多くの銀河が目に見える質量だけでは説明できないほど速く動いており、それを説明するものとしてダークマターの存在を示唆しました。1970年代には天文学者のヴェラ・ルービン氏らが、銀河の周辺部の星々が予想よりも速く回転していることを突き止め、ダークマターの存在を間接的に実証しています。
ダークマターには「質量を持つ」「物質とほとんど相互作用せず、光学的に直接観測できない」「銀河系内に普遍的に存在する」といった性質が想定されています。しかし、ダークマターを直接観測することは非常に困難であり、これまでに検出されたことはありません。
科学者らはダークマターの有力な候補として、「弱く相互作用する大質量粒子(WIMP)」という仮説上の粒子を提案しています。WIMPは陽子の約100倍の質量を持っており、重力と極めて微弱な核力のみを介して相互作用するとのこと。
WIMPは目には見えないものの地球の周辺を漂っており、時には原子核にぶつかって相互作用するはずです。LZはWIMPの検出に最適化されたダークマター検出器であり、アメリカ・サウスダコタ州のサンフォード地下研究施設の地下約1.6kmの地点で稼働しています。
以下の写真に写っている円筒形の物体が、LZの中核部分である主検出器です。LZのタンクには超高純度の液体キセノン10トンが充塡(じゅうてん)されており、タンク内におけるキセノン原子とWIMPの相互作用を、宇宙線やその他のバックグラウンドノイズから隔離された環境で検出できます。

by Matthew Kapust/Sanford Underground Research Facility
WIMPとキセノン原子の相互作用を検出するには、相互作用時に放出される電子と特殊な閃光(せんこう)を利用します。

by Greg Stewart, SLAC National Accelerator Laboratory
以下の写真に写っているのが、LZ検出器内部で発生する微弱な光を捉えるように設計されている光センサーアレイです。

by Matthew Kapust/Sanford Underground Research Facility
今回、250人の科学者や技術者からなる国際研究チームは、2023年3月~2024年4月にかけて収集された220日分のデータについて、新たな解析を行いました。これまでは、データセットの中から最も単純なWIMPの相互作用による微弱な信号を探していましたが、今回はより広範囲の相互作用について調査したとのこと。
その結果、既知のバックグラウンド信号では説明するのが困難な「単一粒子の相互作用」が確認されました。仮にこの相互作用がダークマターによって引き起こされたものであった場合、WIMPの質量は陽子の200倍以上になると推定されており、通常想定されているWIMPとは異なるものだったことが示唆されています。
なお、今回の発見は物理学における発見と見なされる統計的閾値(いきち)に達しておらず、発見が既知のノイズとして説明できる可能性が0.5%残されているとのこと。それでも、この結果は実験によってダークマターの存在が示された有力な証拠であるため、研究チームは日本で開催された国際会議の「2026 TeV Particle Astrophysics conference」で発表するとともに、オンラインで論文を公開しました。
ブラウン大学の物理学教授であり、LZの広報担当者を務めるリック・ゲイツケル氏は、「この現象がデータに現れたのは非常に興味深いことです。ダークマターが現れると考えられる領域で、競合するバックグラウンドノイズも非常に低いのです。たった1つの現象なので早合点したくはありませんし、ダークマターを見たと断言することはできません。しかし、科学界の皆さんの意見を聞きたくなる、興味深い発見があったことは確かです」と述べました。
