「アジソン病」になると「顔や肌の色」はどう変わるかご存知ですか?【医師監修】
アジソン病は、副腎皮質の働きが低下し、コルチゾールやアルドステロンなどのホルモンが不足する病気です。強い倦怠感や食欲不振、体重減少、低血圧などに加え、顔や手のひら、お口の中などに褐色から黒褐色の色素沈着が現れることがあります。
本記事は、アジソン病でみられる顔や皮膚の色素沈着の特徴、発症する仕組み、全身に現れる症状、治療や医療費などを解説します。
監修医師:
上田 莉子(医師)
関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医
アジソン病と顔や皮膚の色素沈着

アジソン病とはどのような病気ですか?
アジソン病は、副腎皮質の働きが慢性的に低下し、コルチゾールやアルドステロンなどのホルモンが不足する病気です。原発性慢性副腎皮質機能低下症とも呼ばれ、指定難病の一つです。主な原因には、免疫が副腎皮質を攻撃する自己免疫反応、結核などの感染症、がんの転移などがあります。ホルモンが不足すると、強い倦怠感、筋力低下、食欲不振、体重減少、低血圧、立ちくらみ、吐き気などが現れます。皮膚や粘膜の色素沈着も特徴的な症状です。
アジソン病になると顔や肌の色はどう変わりますか?
顔や肌が全体的に褐色または黒褐色に濃くなり、日焼けしたように見えることがあります。日光にあたる部分だけでなく、衣服で隠れる部分やお口の中にも色の変化が現れる点が特徴です。顔や肌が全体的に褐色または黒褐色に濃くなるほか、額や頬、首、肩などに黒っぽい斑点が現れることがあります。肌の色がもともと濃い方は変化に気付きにくいため、手のひらのしわや傷痕、歯茎など、色素沈着が目立ちやすい部位も確認します。
ただし、顔や肌が黒くなっただけでアジソン病とは判断できません。色素沈着には、日焼け、薬剤、皮膚の炎症、ほかの内臓疾患など、さまざまな原因があります。
なぜアジソン病で色素沈着が起こるのですか?
アジソン病は、副腎から分泌されるコルチゾールが不足します。すると、脳の下垂体は副腎にコルチゾールを作らせようとして、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を多く分泌します。ACTHが過剰になると、皮膚の色素であるメラニンの産生も刺激されます。その結果、皮膚やお口の中などに色素沈着が現れます。
下垂体の病気などが原因となる続発性副腎皮質機能低下症は、ACTHが増えないため、一般的にアジソン病のような色素沈着はみられません。
色素沈着が現れやすい部位はどこですか?
色素沈着は、次のような部位に現れやすい傾向があります。顔、額、首、肩
肘や膝などの関節部分
手のひらのしわ
指の関節や爪の周囲
ベルトや衣服などで圧迫・摩擦される部分
傷痕や手術痕
乳輪
唇、歯茎、舌、頬の内側などの口腔粘膜
皮膚全体が徐々に濃くなる場合もあれば、黒褐色や青黒色の斑点として現れる場合もあります。自己免疫が原因のアジソン病では、色素沈着と白斑が混在する場合もあります。
参照:
『アジソン病(指定難病83)よくある質問と回答』(難病情報センター)
『アジソン病(指定難病83)病気の解説』(難病情報センター)
アジソン病の原因と全身に現れる症状

色素沈着のほかにみられる症状を教えてください
アジソン病は、コルチゾールやアルドステロンなどの副腎皮質ホルモンが不足するため、色素沈着以外にも全身にさまざまな症状が現れます。主な症状は、次のとおりです。
強い倦怠感や疲れやすさ
筋力の低下
食欲不振
体重減少
低血圧
立ち上がったときのめまいや立ちくらみ
吐き気、嘔吐
腹痛、下痢
塩辛いものを欲しがる
低血糖
症状はゆっくり進むことが多く、疲労や食欲不振などの特徴だけでは、ほかの病気と区別しにくい場合があります。血液検査では、コルチゾールの低下のほか、低ナトリウム血症や高カリウム血症がみられることもあります。
感染症やけが、手術などによって身体に強い負担が加わると、急激な血圧低下、意識障害、激しい腹痛や嘔吐などを伴う副腎クリーゼを起こす可能性があります。副腎クリーゼは命に関わるため、早急な治療が必要です。
アジソン病は何が原因で起こりますか?
アジソン病は、副腎皮質が障害され、必要なホルモンを十分に作れなくなることで起こります。後天的な原因による原発性慢性副腎皮質機能低下症を指します。主な原因は、次のとおりです。
自己免疫反応による副腎皮質の破壊
結核や真菌症などの感染症
がんの副腎への転移
副腎の出血
アミロイドーシスなどによる副腎の障害
一部の薬剤による副腎皮質ホルモン合成の抑制
現在では、免疫が誤って副腎皮質を攻撃する自己免疫性副腎皮質炎が主な原因です。自己免疫性のアジソン病は、甲状腺疾患や1型糖尿病など、ほかの自己免疫性内分泌疾患を合併する場合があります。
どのような人に起こりやすいですか?
アジソン病はまれな病気ですが、年齢や性別を問わず発症する可能性があります。明確に特定の年代や性別だけに多い病気ではありません。自己免疫性甲状腺疾患や1型糖尿病など、ほかの自己免疫疾患がある方は、自己免疫性のアジソン病を合併する場合があります。また、結核などの感染症、副腎へのがん転移、副腎出血を起こす病気や治療歴がある方にも発症する可能性があります。
発症はゆっくり進むことが多く、普段は目立った症状がなくても、感染症、けが、手術などをきっかけに症状が表面化する場合があります。強い倦怠感、体重減少、低血圧、立ちくらみ、色素沈着などが重なる場合は、内分泌内科や一般内科へ相談しましょう。
参照:
『アジソン病(指定難病83)よくある質問と回答』(難病情報センター)
『アジソン病(指定難病83)病気の解説』(難病情報センター)
アジソン病の顔貌についてのよくある質問

アジソン病で生じた色素沈着は治療できますか?
アジソン病による色素沈着には、副腎皮質ホルモンの不足を補う治療を行います。ヒドロコルチゾンなどを適切に補充すると、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の過剰な分泌が抑えられ、色素沈着が徐々に薄くなることがあります。ただし、治療を始めてもすぐにもとの肌色へ戻るとは限りません。通常量のコルチゾールを補充していても、色素沈着が完全には改善しない場合があります。見た目の変化だけで薬が足りないと判断し、自己判断で服用量を増やすことは避けてください。
色素沈着が残っている場合でも、治療ではまずコルチゾールなどの不足を適切に補い、副腎クリーゼを防ぐことが優先されます。治療後も色が濃くなる、範囲が広がるなどの変化がある場合は、ホルモン補充量や別の原因などに関して主治医へ相談しましょう。
アジソン病の色素沈着の治療にかかる費用は保険が適用されますか?
アジソン病の診断に必要な検査や、副腎皮質ホルモンを補うための投薬など、病気の治療として必要と認められる医療には、原則として健康保険が適用されます。また、アジソン病は指定難病83に含まれます。診断基準と重症度などの条件を満たして認定を受けた場合は、指定難病の医療費助成制度を利用できる可能性があります。申請方法や対象範囲は、居住地を管轄する保健所や都道府県・指定都市の窓口へ確認してください。
一方、アジソン病の治療とは別に、見た目を整える目的だけで美白治療や美容施術を受ける場合は、一般的に健康保険の対象外となります。どこまで保険が適用されるかは、治療内容や医療機関の判断によって異なるため、受診前に確認すると安心です。
参照:
『アジソン病(指定難病83)よくある質問と回答』(難病情報センター)
『アジソン病(指定難病83)病気の解説』(難病情報センター)
編集部まとめ

アジソン病は、副腎皮質ホルモンの不足に伴ってACTHが過剰に分泌されるため、顔、首、肘や膝、手のひらのしわ、傷痕、乳輪、歯茎や口腔粘膜などに色素沈着が現れることがあります。
アジソン病は指定難病83に含まれており、条件を満たして認定を受けた場合は、指定難病の医療費助成制度を利用できる可能性があります。申請方法は、居住地の都道府県や保健所などの窓口へ確認してください。
参考文献
『アジソン病(指定難病83)よくある質問と回答』(難病情報センター)
『アジソン病(指定難病83)病気の解説』(難病情報センター)

