特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いとは?対象や費用を解説
特別養護老人ホームと養護老人ホームは、名前が似ているため混同されやすい施設です。しかし、入所の目的、対象者、手続き、費用の決まり方には大きな違いがあります。
特別養護老人ホームは、常時介護が必要な方の生活を支える介護保険施設です。一方、養護老人ホームは、環境上や経済的な理由により、自宅で生活を続けることが難しい方を支える措置施設です。
そのため、入所を考えるときは介護の必要度だけで判断できません。本人の生活環境、収入、家族の支援状況、市区町村の判断も関係します。早い段階で相談すると、在宅サービスとの併用も検討しやすくなります。
監修作業療法士:
稲木 康平(作業療法士)
経歴:回復期病棟で約9年ほど、患者様やご家族様のニーズに合わせたリハビリテーションを実施する。また、数多くの患者様に対して、退院後に快適な生活を過ごされるための自宅の環境調整や、介護サービスの提案、家族指導も行ってきた。
資格:作業療法士免許、医療経営士3級
特別養護老人ホーム(特養)と養護老人ホームの違いの全体像

特別養護老人ホームと養護老人ホームは、どちらも老人福祉法に位置付けられる施設です。ただし、制度上の役割は同じではありません。まずは、目的と対象者の違いを解説します。
名前は似ていても目的が異なる2つの施設
特別養護老人ホームは、介護老人福祉施設とも呼ばれます。食事、排せつ、入浴などに常時介護が必要な方が、施設で生活しながら介護を受けるための施設です。
一方、養護老人ホームは、介護の重さだけで入所を決める施設ではありません。環境上の理由や経済的な理由により、自宅で生活をすることが難しい65歳以上の方を支える施設です。
このように、特養は介護の必要度に着目します。これに対して、養護老人ホームは生活環境や経済状況に着目します。名前は似ていますが、入所を考える出発点が異なります。
根拠となる法律と制度上の位置付け
特別養護老人ホーム(特養)と養護老人ホームは、老人福祉法に定められた老人福祉施設です。さらに、特養は介護保険法にも関係します。
特養に入所すると、介護保険の施設サービスとして介護を受けます。そのため、費用は介護サービス費、居住費、食費、日常生活費などに分かれます。入所の手続きは、施設への申し込みを起点に進みます。
一方、養護老人ホームは、市区町村の措置によって入所する施設です。本人と施設が直接契約して入所する有料老人ホームとは、手続きの考え方が異なります。したがって、入所を希望するときは、市区町村への相談が出発点です。
入所対象・サービス・費用の違い
特養の対象は、原則として要介護3以上の方です。ただし、要介護1または2の方でも、自宅で生活することが難しい事情がある場合は、特例的に入所対象になることがあります。
一方、養護老人ホームの対象は、65歳以上で、環境上の理由と経済的な理由により自宅での生活が難しい方です。要介護度だけで判断されるわけではありません。
サービス内容を比べると、特養は日常生活の介護や健康管理が中心です。これに対して、養護老人ホームは住まいと生活の安定を支える役割があります。介護が必要になった場合は、本人の状態に応じて介護保険サービスの利用を検討します。
また、費用にも違いがあります。特養は介護保険の自己負担に居住費や食費が加わります。養護老人ホームは、本人や扶養義務者の収入などをもとに負担額が決まります。
特別養護老人ホームの特徴

特別養護老人ホームは、在宅生活が難しくなった要介護の方を支える施設です。長期入所を前提に、日常生活の介護や健康管理を受けられます。
要介護3以上が対象となる入所条件
特養に入所できるのは、原則として要介護3~5の認定を受けた方です。2015年4月以降、特養への入所は原則として要介護3以上に限定されました。
ただし、要介護1または2の方でも、特例入所の対象に該当する場合があります。認知症により日常生活に支障がある場合や、家族による支援が期待しにくい場合などです。
そのため、入所の必要性は要介護度だけで決まりません。介護者の状況、認知症の症状、住まいの状況、虐待の疑いなども考慮されます。
参照:『指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について』(厚生労働省)
受けられる介護サービスの内容
特養では、食事、排せつ、入浴などの日常生活の介護を受けます。また、居室での生活支援、機能訓練、健康管理、療養上の世話も行われます。
施設には介護職員や看護職員などが配置されています。医師は常勤とは限りませんが、入所者の健康管理に関わります。そのため、日々の体調変化を施設内で共有しながら生活を支えます。
ただし、医療処置が多い方は、受け入れ体制の確認が必要です。胃ろう、たん吸引、インスリン注射などへの対応は、施設によって違いがあります。見学や申し込みの段階で、本人に必要な医療的ケアを伝えましょう。
月額費用の内訳と目安
特養の月額費用は、介護サービス費の自己負担、居住費、食費、日常生活費などで構成されます。介護サービス費の自己負担割合は、所得などに応じて1割、2割、3割に分かれます。
また、居住費と食費は、所得や資産などの要件を満たすと負担限度額認定の対象になる場合があります。対象になる方は、市区町村へ申請します。
費用を確認するときは、月額の合計だけでなく、何にいくらかかるのかを分けて確認します。介護サービス費は要介護度によって変わります。居住費や食費は、居室の種類や負担限度額認定の有無によって差が出ます。
月額費用は、要介護度、居室の種類、自己負担割合、加算の有無によって変わります。個室、多床室、ユニット型個室でも金額に差が出ます。さらに、医療費、理美容代、嗜好品、私物の購入費などは別にかかる場合があります。
参照:『サービスにかかる利用料』(介護サービス情報公表システム)
養護老人ホームの特徴

養護老人ホームは、介護施設というよりも生活を支える福祉施設です。入所の判断には、家庭環境、住まい、収入、市区町村の調査が関係します。
環境上・経済的な理由で在宅生活が難しい方を対象とする施設
養護老人ホームは、65歳以上の方で、環境上の理由と経済的な理由により自宅で生活することが難しい方を対象とします。
環境上の理由には、家族や住居の状況などがあります。現在の生活環境では在宅生活が難しいと認められることが条件です。
また、経済的な理由には、世帯が生活保護を受けている場合や、市区町村民税の所得割を課されていない場合などがあります。つまり、養護老人ホームは介護の有無だけで入所可否が決まる施設ではありません。
参照:『高齢者向け住まい』(厚生労働省)
市区町村の措置で入所が決まるまでの流れ
養護老人ホームへの入所は、市区町村の措置によって決まります。そのため、本人や家族が施設を選んで直接契約する流れとは異なります。
入所を希望する場合は、まず住んでいる市区町村の窓口に相談します。その後、生活状況、収入、住まい、家族の支援状況などの調査が行われます。必要に応じて、本人への聞き取りや関係機関からの情報確認も行われます。
相談時には、現在の住まいで困っていることを具体的に伝えます。食事の確保が難しい、家族の支援を受けにくい、収入だけでは生活が成り立ちにくいなど、生活上の事情を分けて伝えると状況が伝わりやすくなります。
市区町村が入所の必要性を認めると、施設との調整が進みます。ただし、空き状況や本人の状態によっては、すぐに入所できない場合もあります。
収入に応じて決まる費用
養護老人ホームの費用は、本人の収入や扶養義務者の状況などをもとに決まります。市区町村が措置費を支弁し、本人や扶養義務者から負担能力に応じて費用を徴収する仕組みです。
そのため、年金収入、生活保護の受給状況、市区町村民税の課税状況などが確認されます。具体的な負担額は、市区町村の基準によって異なります。
同じ養護老人ホームでも、本人の収入や世帯状況によって負担額は変わります。入所後に必要な日用品費や医療費が別にかかる場合もあるため、月々の支払いを市区町村の窓口で確認します。
一方、特養は介護保険の自己負担と居住費、食費を組み合わせて考えます。この点でも、養護老人ホームとは費用の決まり方が異なります。入所を検討するときは、市区町村窓口で負担額の見込みを確認しましょう。
特養と養護老人ホーム|入所対象の違いからみた考え方

どちらの施設を検討するかは、介護の必要度と生活上の困りごとを分けて考えると判断しやすくなります。要介護度だけでなく、住まいと経済状況も確認します。
介護の必要度による入所対象の違い
介護の必要度が高く、在宅で食事、排せつ、入浴などの介助を続けることが難しい場合は、特養が候補です。特養は、要介護3以上の方を中心に長期入所を受け入れます。
ただし、特養に申し込んでも、すぐに入所できるとは限りません。施設は、本人の要介護度だけでなく、介護者の状況や在宅生活の継続の難しさも確認します。そのため、入所を待つ期間は、在宅サービスやショートステイを組み合わせて生活を支えることがあります。
これに対して、養護老人ホームは介護の重さだけを基準にした施設ではありません。介護が必要な場合もありますが、入所判断の中心は生活環境と経済状況です。
経済状況や生活環境による入所対象の違い
収入が少ない、住まいを確保しにくい、家族からの支援が受けにくいなどの事情がある場合は、養護老人ホームが候補です。
ただし、養護老人ホームは誰でも申し込める入居施設ではありません。市区町村が環境上の理由と経済的な理由を確認し、措置の必要性を判断します。
また、介護量が多く、常時介護が必要な状態であれば、養護老人ホームだけでは対応が難しい場合があります。その場合は、特養、介護老人保健施設、在宅サービスなども含めて検討します。
入所を検討するときの相談先と手続き

施設選びでは、特養と養護老人ホームの違いを知るだけでなく、相談先を間違えないことも必要です。介護の相談と措置入所の相談では、窓口の役割が違います。
地域包括支援センターと市区町村の窓口の使い分け
介護サービスの利用や特養への入所を考えるときは、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談します。要介護認定を受けていない場合は、市区町村で申請します。
一方、養護老人ホームを考える場合は、市区町村の高齢福祉担当窓口が主な相談先です。生活環境や収入の事情を含めて相談します。
相談前には、介護保険証、負担割合証、年金額が把握できる書類、医療機関の情報などを手元にそろえておくと話が進みやすくなります。家族が相談する場合は、本人の生活状況や困りごとをメモにしておくと、窓口で伝えやすくなります。
なお、どちらに相談すべきか迷う場合は、地域包括支援センターに連絡すると、必要な窓口につなげてもらいやすくなります。介護と生活困窮の問題が重なる場合も、早めに相談しましょう。
入院中の方は、病院の医療ソーシャルワーカーにも相談できます。退院後の住まいと介護サービスを同時に考える必要があるためです。
申し込みから入所までの流れ
特養は、施設に入所申込書を提出して手続きを進めるのが一般的です。その後、施設は本人の要介護度、介護者の状況、住まいの状況などを確認し、入所の必要性を判断します。
ただし、待機期間は地域や施設によって違います。そのため、申し込み後も、在宅サービス、ショートステイ、通所介護などを使いながら生活を支えることがあります。
一方、養護老人ホームは、市区町村への相談から始まります。調査と判定を経て、措置が必要と判断された場合に入所調整が進みます。本人の希望だけで決まるわけではない点を理解しておきましょう。
まとめ

特別養護老人ホームと養護老人ホームは、名前は似ていますが、役割は違います。特養は、常時介護が必要な要介護の方を支える介護保険施設です。
一方、養護老人ホームは、環境上や経済的な理由により自宅で生活することが難しい65歳以上の方を支える措置施設です。市区町村の判断により入所が決まります。
そのため、入所先を考えるときは、介護の必要度、住まい、収入、家族の支援状況を分けて確認します。特養は施設やケアマネジャー、養護老人ホームは市区町村窓口へ相談し、利用できる制度を確認しましょう。
家族だけで判断しにくい場合は、現在の生活で困っている内容をメモにして相談先へ持参します。困りごとを具体的に伝えると、必要な支援を検討しやすくなります。
参考文献
『老人福祉法』(厚生労働省)
『指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について』(厚生労働省)
『高齢者向け住まい』(厚生労働省)
『サービスにかかる利用料』(介護サービス情報公表システム)

